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地獄兄弟は今日も平和

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別館は、女性向けです。閲覧は自己責任でお願い致します。

プロフィール

マーリン

Author:マーリン
Web:イングリッシュパーラー

乙女ゲーム制作、一次小説、二次小説など、カオスにいろいろやってます。

2018/9

少し涼しくなったので、また最近Blenderでモデリング始めました。
1年前に使ったとはいえ、操作とかほとんど忘れてて参った

形になったら、ブログにアップしようかなと思います。

2018/8(※追記 コメントお礼)

ただもうひたすらに暑くて、何もできずにへたばってます


※追記 コメントお礼です

フリーゲーム公開しました

小説書くつもりが、フリーゲーム制作の方になってしまって、またも小説停滞中です

フリーゲームは、なんとか年内に公開できました。
リメイクですが、かなり前作と変わってるはず。

埠頭のシーンは、どうしても入れたかったので、ちょこっと『カブト』本編の最終回を思い出していただけたら、本望です。いや、ほんと。

逃げ道~原罪~

よろしければ、『ふりーむ』様よりダウンロードしてやってください。
フリーゲーム『逃げる以外に道はない~原罪~』

学園迷走サバイバル(10)

 二人の男は、おそらくレベルAのハンター。やっとのことで外へ出られたと思ったのに、ここで捕まったら元の木阿弥だ。

「しつこい奴らだ」

 ふらつく足取りで、矢車さんはハンターたちに対峙する。
 矢車さんの銃は、拉致された時点で取り上げられた。武器なしで太刀打ちできる相手じゃないと、矢車さんが一番分かってるはずなのに。

「丸腰で、レベルA二人を相手にする気ですか」

 やたら丁寧な口調の男が、狙撃銃を矢車さんに向けた。俺については、ものの数に入っていないらしい。

「自殺行為だな、命を粗末にするのはよくない」

 剣を持った男が、面白くなさそうにふんと鼻を鳴らす。

「あいにく、死ぬ気はない」

 言葉と同時に、かざした矢車さんの左手にザビーゼクターが現れた。
 ゼクターは手甲のように矢車さんの手首を包み、鋭利な針を持つ武器へと形状を変化させた。

 怪我を負っているとは思えない瞬発力で、矢車さんは銃使いの男の懐に飛び込んだ。
 空気を薙ぐ音と甲高い金属音。ゼクターのニードルを、男が銃身を使ってガードする。二人の素早い動きを、俺は目で追うのがやっとだった。

「風間! 何を遊んでる」

 参戦した剣使いが、矢車さんのニードルを勢いよく弾いた。息もつけない攻防に横槍を入れられるなんて、この男も相当な腕だ。

「俺は早く報酬をもらって引き上げたいんだ。さっさと終わらせるぞ」
「まったく、あなたはいつもそれですね」

 剣使いの言葉に、風間と呼ばれた男が肩を竦める。そのやり取りを見ながら、矢車さんは再びじりと距離を詰めた。

「やはり、金で雇われたハンターか。雇い主は誰だ」
「秘密厳守は鉄則でしょう」
「言い値を出すなら、教えてやろう」

 鉄板な答えを返す風間と違い、剣使いのほうは真顔で取引を提案してくる。

「剣、いい加減にしてください!」

 風間に叱責され、剣という男は仕方なさそうに得物を構え直した。

 この妙な二人組をどうにかしなければ、逃げられない。何か武器になるものでもあれば、と周囲を見回した時、建物の残骸を踏み砕き近づく別の二人が目に映った。

「そこまでにしておけ」
「矢車さん、影山さん!」

 冷え冷えとした声にかぶせ、暑苦しくも熱血に名を呼ばれた。

 反ZECTのリーダーが、手にした銃を風間に向け、その背後で加賀美も銃を構えていた。
 どうして天道までいるのか腑に落ちないものの、ひとまず敵ではなさそうだ。
 
「こちらはレベルAが三人。お前たちに分はないな」

 天道がそう嘯いた。
 実力はともかく、反ZECTである天道はレベルEなのだが、その事実は俺の胸にしまっておく。

「……よく、ここまで辿り着けましたね。見張りはいませんでしたか」
「外で寝てる」

 殺してはいない、という天道の答え。
 風間はほう、と感心し、金にうるさそうな剣は、眉をひそめて刃を鞘に収めた。

「報酬は微妙な線だな。……風間、俺は下りる」
「そうですね。俺も、危ない橋は渡りたくないですし」

 あっさり戦線離脱を表明するハンター二人に、俺は拍子抜けしてしまう。
 ともあれ、戦わなくて済んだのは幸いで、闇の中へ消えていく風間らを追うこともなく、黙ってその背を見送った。

 風間たちが見えなくなると、矢車さんは力尽きたように地面に膝をついた。色を失い、憔悴した端正な顔。既に腕から離れたザビーゼクターが、心配げに上空を舞っている。

「矢車さん……!」
「心配ない」

 急いで傍に寄り、矢車さんの体を支えた。なのに肩を貸そうとする俺の手を払い、一人で立ち上がろうとする。

「行きましょう。エリアXを出たら、タクシーを呼べます」

 否応なく加賀美が矢車さんの片方の腕を担ぎ上げたので、すかさず反対側の腕を俺が受け持つ。両方から捕らえられては、今度は矢車さんも拒まない。

 天道と矢車さんは、あえて目を合わせなかった。
 瓦礫の隅でうずくまる何人かの人影は、天道らが倒したハンターだろう。俺たちは無言のまま歩き、石を踏む音と、荒い息使いだけが周囲に響いた。

「ZECTの恐ろしさが分かったろう」

 一瞬、天道が俺に耳打ちし、すぐ離れた。おそらく今の言葉は矢車さんには聞こえてない。

(ZECTの恐ろしさ……)

 エリアXでのことを思い返しつつ、俺は心の内で呟いてみる。ZECTが矢車さんを見殺しにしようとしたこと、地下迷宮に得体のしれない何かが潜んでいること。つらつら考えれば、確かに恐ろしい。

 それでも、矢車さんはZECTに身を置いている。だったら、俺もそうするまでだ。

学園迷走サバイバル(9)

 俺が落ちた場所は、迷路にも似たひどく入り組んだ地下通路だった。土壁全体が発光する苔で覆われていて、真っ暗闇でないのが救いだ。
 ハンターたちは矢車さんをこの地下迷宮に幽閉し、そのまま放置したらしい。迷路を抜け出ることは困難。外へ出られなければ、ここでのたれ死ぬしかない。

「連中も、この通路には降りて来ない。ミノタウロスの迷宮だからな」

 土壁に片手を付きながら、矢車さんが立ち上がった。
 聞き慣れない単語に、俺は首をひねる。

 ギリシャ神話に、ミノタウロスという怪物を閉じ込めるために作られた迷宮の話がある。つまりは、この地下通路もそういうものだと、矢車さんは言いたいんだろう。

「あ! そうだ、さっき上で、ザビーゼクターを見かけたんだ」
「ああ。ザビーが、お前のことを教えてくれた」

 矢車さんの言葉を受けて、ザビーゼクターが頭上から舞い降りてきた。
 崩れた土砂で、俺が落ちた穴は完全に埋まってしまっていたが、ゼクターはどこへでも移動できる。

 矢車さんの掌に一度止まったゼクターは、すぐにまた洞窟の天井まで上昇した。道を示すように飛ぶゼクターの後について、俺たちは歩いていく。

「忠実な部下だね、ザビーは」
「誰かと違って、聞き分けがいい」
「……誰かって、誰さ」
「さあ、誰かな」

 軽口を叩く矢車さん。でも、怪我が痛むのか、時折辛そうに顔を歪める。

 これまで、矢車さんに傷を負わせるほど腕の立つ相手はいなかった。天道たちの反ZECT派とは別の、第三勢力の過激派。現体制の変革を求めるテロまがいの組織が、しばしばプロの狩人を金で雇う。

「ハンターの中に、レベルAが二人いる。他は雑兵の集まりだ」
「レベルA……」

 つい復唱して眉根を寄せた。レベルEに落ちる瀬戸際の俺には、遥か遠い次元だ。

「痛む、よね。少し休もうか?」
「いい。もたもたして、『連中』に出くわしたくない」
「ハンターたち?」
「いや、別」

 額に脂汗を浮かべながらも、矢車さんは先を急ごうとする。

 土壁に囲まれた単調な通路をもう小一時間は進んだだろう。出口はまだ見えず、ザビーゼクターは止まらず飛び続ける。
 この迷宮を作ったのは、ハンターたちじゃない。それなら、誰が何の目的で作ったのか。その答えを、矢車さんは知ってるような気がした。

 迷路というのは、人間の感覚を狂わせる。
 前方の十字路を緑色の影がスッと横切ったのを目にした時、俺は錯覚だと思った。人間と同じか、それよりも少し大きな生き物で。人とは姿形はまったく異なるもの。

「どうした」
「今……、何かヘンなものを見た、ような」

 説明したくても、一瞬でその異形は視界から消えていた。

「なんか、緑色のブヨブヨした奴。見間違いかな」
「……そういうことにしとけ」

 矢車さんは訝しむわけでもなく、ただ苦笑を浮かべる。
 もしかしたら、あれがミノタウロスかもしれない、と俺はぼんやりした心持ちで思った。

 やがて、空気の流れが変わり、出口が近いことが肌で感じ取れた。

「やった! 出られそうだよ、矢車さん!」
「ああ……」

 外ももう薄暗くなっていたけれど、星と月が柔らかに廃墟を照らしている。ゼクターの案内のおかげで、なんとか地下迷宮から脱出できた。
 息詰まるような地下を後にし、俺は思い切り肺に新鮮な大気を吸い込む。

 横を見れば、明かりがない中でも矢車さんの顔色がよくないことが分かった。一刻も早く、病院へ連れて行かないと。
 だけど、現実はそうそう甘くない。

「ご苦労さま。残念ですが、ここでおしまいです」

 瓦礫の陰から、若い男が二人、俺たちの前に現れた。
 銃を構え、にこやかに告げる男と、その横に、西洋風の剣を手にしたもう一人。纏う雰囲気から、こいつらが雑魚ではないと俺にも直感できた。
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