地獄兄弟は今日も平和

「仮面ライダーカブト」自己満足スピンオフ(笑)! 矢車・影山の地獄兄弟二次小説

悪魔は夜歩く [23]

悪魔は夜歩く
 第23話



ミシマさんがこんなところにいるのはビックリしたけど、多分何かの目的があるに違いない。
そのためにママを利用してるんだろうな、というのが分かってしまう俺は、とっても複雑な気分。
ママに本当の事を言えば、ミシマさんの仕返しが怖いし。

でも、思いがけず兄貴の名字が分かったのはラッキーだった。
これで、兄貴の部屋がマンションの何号室か探しやすい。

カウンター席に付いた俺は、ママと久しぶりに楽しく話ができた。
隣に座る兄貴は、なんとなくピリピリした雰囲気で、ちゃっかり近くに陣取ったミシマさんに時折鋭い視線を投げている。

「瞬ちゃんはミルクよね」
ママがいつもの飲み物を用意してくれようとすると。

「酒ぐらい飲めなくてどうする。これは、私のおごりだ」
そう言って、ミシマさんが俺の前に置いたのは、血のような真っ赤な色のカクテル。

「え、でも・・・」
「俺が」
オロオロする俺に代わって、グラスを引き寄せたのは兄貴。
兄貴は一口二口飲んで、グラスをテーブルに置いた。

「君にやるとは言ってないが」
「影山には無理ですよ。明日の勤務に差し障ります」
代金は払いますから、と兄貴はミシマさんに挑発的な目を向ける。

「エル・ディアブロ・・・『悪魔』。テキーラですね」
「そうだ」

2人の会話の意味はよく分からないものの、とりあえず激しい火花がビシバシ散っているのは感じられた。
あのミシマさん相手に渡り合うなんて、さすが兄貴だ。

そんなやり取りを横目に、ママがほぅと溜息をつく。
「・・・なんだか妬けるわ。三島ちゃん、彼の事随分気に入ってるようね」
「そうなの?」
「そうよ! 私には分かるの」
悔しいわぁ、なんて言って、ハンカチをギリギリ噛み締めるママを見ながら、そうかなぁ、と俺は首をひねりたくなる。

ミシマさんがSなのはいつもの事として、兄貴は無駄に挑戦的で。
ミシマさんが俺の元上司でヴァンパイアだという事は兄貴に話してあるが、実際会うのは今日が初めてのはず。

兄貴はタンブラーグラスを傾けると、いっきに残りの赤い液体を飲み干した。
「そろそろ行くぞ、影山」
「えっ、もう?」
まだ来てから1時間そこそこしか経っていないのに。

「明日も遅刻じゃ、まずいだろ」
兄貴に指摘され、うっ、と言葉に詰まる。
遅刻の前科がある俺は、何も言い返せない。

まあ、俺もミシマさんの前じゃハジける事もできないから、ここらで切り上げてもいいんだけど。
「また来るからねっ」
彼氏がいない時に、とママに小さく耳打ちして。

支払いを済ませる兄貴の背後から、ミシマさんが声を掛ける。
「飲んだのに、車か」
「・・・あいにく、俺は酔わないので」

ミシマさんをドア越しに一瞥して、兄貴はすたすたと出て行ってしまう。
「兄貴・・・!」
慌てて追いかける俺。

なんだか兄貴の様子がおかしくて。
ミシマさんも結局俺には何も言わなかったし、一体何がしたかったんだろう。
もしかして飲酒運転を警察に通報するために、わざと兄貴に酒を飲ませたとか。

(やりかねないよな、あの人なら・・・)
結構セコいんだから。

運転席に座った兄貴が、額を押さえて俯くので、俺はますます心配になった。
「大丈夫、兄貴?」
「影山・・・」

ハンドルに頭を乗せたまま、兄貴が呟くように聞いてくる。
「人間のライフエナジーを吸い取った時は、どんな気分だ?」
「どんな・・・って」

いきなり意外な事を尋ねられて、俺は驚いた。
「今晩どう?」と聞かれたのと同じくらい、俺にとっては衝撃的。
待ってよ、まだ心の準備ができてない。

「すごく気分が高ぶる、っていうか・・・」
最近はずっとご無沙汰だったから、その感覚を思い出しながら俺は答えた。
そうだ。
言ってみれば、それはマヤクみたいなもの。
「血が騒ぐ、って感じかな」

魔物の血、が。

「・・・もし、人間がそれを摂取したら、どうなる?」

顔を上げた兄貴は、酔わないと断言してたけど、酔ってるんじゃないかと思うぐらい、火照って玉の汗を浮かべていた。


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悪魔は夜歩く [22]

悪魔は夜歩く
 第22話



バーのママには、俺が矢車だということを影山に伝えないよう、口封じ、もとい口止めはしておいた。
もし影山に知らせたら、この店は立ち退き・撤収。
政府高官とつながっているZECTの権力を盾にして、「この店を、つぶしたくないでしょ?」と、地上げ屋まがいの脅しをかけて。

最近のヒーローは、ダークな一面があっても許される。
「正義のためにはすべてを犠牲にしてもいい」、と歌う奴もいるぐらいだし。

俺を見てどういう態度を示すか、その確認のために、影山をダシにしてバーに足を運んだのだが。

(ミシマ・・・!)

バーのママが新しい恋人として紹介した男は、紛れもなく、あのヴァンパイア。
悪趣味だと、どちらに対しても思ったものの、今それは最重要事項ではない。

影山も驚いたらしく、ポカンと元上司の顔を見つめている。

「驚いたわ。瞬ちゃんて、三島ちゃんの部下だったんですって?」
「あ・・・そう、だけど」
ウフフと微笑しながら腕にすがろうとするママを絶妙のタイミングで避けると、ミシマは俺の方を向いた。

「キミは、どちら様かな」

空々しい台詞。
俺が誰かなんて、この男が一番知っているはずなのに。

「俺は、影山の上司です」
こちらも素知らぬフリを決め込む。
ママに俺の正体をばらされるんじゃないかという危惧は、どうやら無用だった。
彼女(彼?)はミシマに同調し、俺の事など全く知らない、という表情をしているから。

「私は、三島正人。キミは?」
「俺は・・・」

わざわざフルネームを名乗るこの男の狡猾さが憎らしい。
この場で、名字ではなく名前だけ名乗るのは、社会人のルールとして激しく不自然だ。
おかげで、こちらも名字を言わざるを得なくなった。

影山は、なぜかワクワクと期待に満ちた眼差しを俺に向けている。

(困った・・・)
名字なんて考えていなかったし、突然の事に、いい名前が浮かんでこない。

フランク・ノーマンという名前から、フランク=正直=マサナオ、ノーマン(ノルマン人)=北方の人=ホクトと連想し、北人正直というネーミングを即興で思いついた某英国人のようにはいかない。

「俺は・・・岬ジロー」
同じマンションに住む隣人の女性の名字を、俺は仕方なく拝借した。

「兄貴の名字・・・ミサキっていうんだ。初めて知った」
感慨深げに呟く影山。
俺だって、初めて知った。

「ミサキジローか・・・。うん、いい名前だねっ」
「・・・お前、本気でそう思うのか」
手放しで褒め上げる影山に、すぐさまその名を忘れてくれ、と願わずにはいられなかった。
有名なサッカーマンガの登場人物と一字違いになったのは、何の偶然だろう。

「では、よろしく。岬ジローくん」
「岬、でいいですよ」
「キミとは初めて会った気がしないな、岬ジローくん」
「・・・・・・」

何度もしつこく連呼するミシマに、この男の本質が覗く。

(完璧なSだ・・・)


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悪魔は夜歩く [21]

悪魔は夜歩く
 第21話



ZECTの人たちは皆いい人たちだったけど、俺の事は腫れ物を扱うみたいで、なんとなくよそよそしい。
兄貴や田所さんや加賀美は、とても親切でいろいろ教えてくれた。

ZECTは人間社会の治安を守るための組織だ、と兄貴。
兄貴からは、銃の撃ち方や、隊の規律、戦闘時の行動を。

そして実践で指導してくれたのは、田所さんだった。
田所さんがいかに優秀かは、多分実際に見た者でないと分からない。

昼食時の社食の恐ろしいほどの混雑の中、空いている席を見つける的確な状況判断と、素早く席を取る早業は、きっと日本で一番だ。

加賀美は、新米同士の親近感なのか、友達のように接してくれる。
「俺、21なんですよ。影山さんは?」
「105」
同じくらいの歳だと思ったのだろう加賀美は、俺がそう答えた瞬間固まってしまった。

ZECTにいるらしい、怪物ランドの王子だという矢車の事は、あれ以来兄貴も田所さんも詳しく話してくれなかった。
加賀美なら何か知っているかも、と聞いてみると。

「いや、俺若いから知らないんです。全然リアルタイムじゃなくって」

加賀美の主張の意味がいまいち不明だが、要は「自分は関係ない」と言いたいんだろう。

人間としての生活。
忙しくて、追われるような毎日。
ミシマさんから逃げるために、自分から飛び込んだ世界だけど。

(俺、何してるのかな・・・)

ZECTからマンションまでは充分歩いて帰れる距離なのに、たいてい毎日兄貴の車に乗せてもらっている。
車の窓から、俺はぼんやりと夜の闇に浮かぶ月を眺めた。

「・・・疲れたか?」
狭い道をすり抜けながら、兄貴は隣に座る俺を気遣う。
もちろん、よそ見はせず、前を向いたまま安全運転で。

「うん、ちょっと」
兄貴には隠しても仕方ない。俺のわずかな変調さえ見抜くんだから。

「・・・よし」
黙って何かを考えた後、急にハンドルをきって車の方向を変える兄貴。
「ど、どうしたのさっ」
「気分転換が必要だろ」

どこへ行くのかと目を白黒させていると、着いたところは、あの懐かしい場所。
兄貴と出会った、バーだ。

「あらぁ、瞬ちゃん! 久しぶりね。元気だった?」
「ママこそ!」
バーのママ、ジュネさん(注:本名サブさん)の温かい胸に、俺はガバッと飛び込んだ。
子供をあやす母親みたいに、ジュネさんは俺の頭を撫でてくれる。
さすがに胸はパットだし、抱き締めてくれる腕はゴツかったけれど、やわらかいホットミルクの香りがして。

後ろで兄貴が微妙な表情で見ているのも構わずに、俺はその時すっかり安心してた。
しばらくして、ジュネさんが誰かに手招きするまでは。

「瞬ちゃんにね、紹介したい人がいるの。ママの、今の彼氏」
頬を染めて、そんな風にジュネさんは告げる。
「コイビト? そっか、よかったねっ」

カレカノだとか、フリンだとか、アイジンとかマオトコとか。
このバーで俺も結構勉強したから、人間の恋愛事情も今ではだいぶ理解できる。
『好きな人がいれば人生ハッピー! 両想いになれば超ハッピー!!』と、今年2月14日頃、デパートの販促ポスターで目にした言葉を思い出す。

だからジュネさんにそういう人ができたのなら、俺も嬉しい。

嬉しい、はずなのに。
ジュネさんの傍に近づいてきた男を見て、俺はさながらマダム・タッソーの恐怖ロウ人形のように青ざめた。

信じられない気持ちがいっぱいで、言葉が出ない。
いつものように黒いスーツを着ていても、黒い翼は隠しているその男。
俺の、元上司。

「そろそろ来る頃だと思っていたぞ」
眼鏡を指で押し上げると、ミシマさんは無表情で俺に言った。


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※話がどんどんカオス・・・(--;

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悪魔は夜歩く [20]

悪魔は夜歩く
 第20話



(・・・遅い)
入隊早々遅刻とはいい度胸だと思いながら、俺は腕時計を確認して舌打ちする。
ラジオ体操も、朝礼も、社訓復唱も終わったのに、影山はまだ出勤して来ない。

(まさか、ミシマが・・・)
昨夜ミシマが影山の部屋に舞い戻り、すべてを影山にバラした、ということはないだろうか。
あまつさえ、ターキッシュ・ディライトを与えてやって、ソリに乗せ、白夜の国に連れ去ったなんてことは。

「矢車。お前のヴァンパイアは遅刻か」
「らしいですね」
一応影山のOJTを任されている田所さんが、所在を尋ねてくる。

『お前のヴァンパイア』ではなく、『お前の任務を遂行するために有益なヴァンパイア』と言ってくれないと、あらぬ誤解を招きそうだが、あまりにも長く説明的な台詞なので、今回はあえて指摘するまい。

「すまん。ラジオ体操のスタンプを全部押すと粗品がもらえる事を、昨日あいつに言い忘れてしまってな」
田所さんの首からは、ハガキより少し小さいカードが紐でぶら下がっている。
見れば、田所さんのスタンプは今月一日も欠かさず押されていた。

「・・・スタンプカードまで作ったんですか。俺も知りませんでしたよ、そんな事」
「何だと!? それは、すまない事をした。今日までの分は内密で押しておいてやるからな」
「いえ、別にそれはどうでも」

ZECTの夏ダレ防止策に、始業前のラジオ体操を提案したのは田所さんだ。
粗品贈呈も隊員の士気を高めるため、と田所さんは言う。

「粗品って、何なんです?」
ZECTの経費で落ちているのは間違いないだろうが。
ロクでもないことに、よくZECTが予算を割いたものだと俺は感心した。

「ジュース1本、もしくはノート1冊だ」
「・・・インセンティブにはなりませんね」

いつもなら馬鹿馬鹿しいやり取りも、気を紛らわすには都合が良い。
30分ほど遅れて、パタパタと駆け込んできた影山の姿を認め、俺はほっと息をついた。

「遅いぞ、影山!」
「す、すみませんっ」

ひとまず安心はしたが、甘い顔を見せるわけにはいかない。
上司として毅然とした態度で接する俺の横から、田所さんが口を挟む。
「ほれ、影山。今日の分はオマケだ」
「わー、いいんですか?」
スタンプカードにハンコを押す田所さんに、影山は大喜び。

「影山、ちょっと来てくれ」
粗品の話を田所さんが語り出す一瞬前、俺は影山を呼び寄せた。
2本100円のオレンジジュースと3冊100円の大学ノートを手にした田所さんは、話が終わるまで待つ気満々のモードに入っている。

あれが、ご褒美らしい。
まさしく、粗品。

田所さんを思考から追い払うと、俺は小声で影山に聞いた。
「影山・・・昨夜俺が帰った後、変わったことはなかったか」
「え? いえ、何も」
きょとんと影山は俺を見て。

「カラスがゴミを散らかしたぐらいですよ。ゴミの片付けしてたおかげで、遅れちゃいました」
すみませんでした、ともう一度ペコリと頭を下げた。

(カラス・・・?)
それが、誰の事を示しているかはすぐに分かったけれど。

「どうして、カラスだと思った?」
「羽音がうるさかったし。それに俺の部屋からカラスが出て行くのを見たって、隣の人が・・・」
「・・・隣、ね」

素直に話す影山の話に耳を傾け、俺は記憶に残るいけ好かない男の顔を思い浮かべていた。
あのマンションには、ZECT隊員以外の一般人もいる。

確か、影山の隣の部屋の住人は、『あの男』の妹。
一緒に住んでいるわけではないので、めったに接触はないだろうと鷹をくくっていたかもしれない。

「・・・最悪だ」
ラジオ体操の粗品を見つめつつ、俺はここにはいない人物を思って呟いた。


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悪魔は夜歩く [19]

悪魔は夜歩く
 第19話



昨夜兄貴が帰った少し後、やたら外で鳥の羽音がするなと思っていたら、今朝ゴミ置き場のゴミがめちゃくちゃに散らばってた。
きっと、ゴルゴムの・・・いや、カラスの仕業だ。

ゴミの日は月・木と兄貴に聞いてたから、ゴミを出したのは断じて俺じゃない。
なのに、マンションの隣の部屋の男が、出勤しようとした俺を呼び止めて片付けを手伝え、と言う。

「なんで、俺がっ。それに今から俺、仕事なんだよ」
相手は20代前半くらいの男。妙に偉そうな態度で指図するので、俺もついムッとなって。

すると、男は天を指差して言った。
「お前の部屋から出て行ったカラスがやったことだ。お前が責任を取るのが、筋だろう」

(・・・俺の部屋から出て行った?)
男の言葉に、俺は首をかしげる。
マンションで、ペットは飼えないと兄貴は言ってた。カラスなんて飼う予定もないし。

「おばあちゃんが言っていた。男なら責任を取れ、認知しろ、と」
「分かった、すまない」
反射的に謝ってしまい、ゴミを片付け始めた俺。

よくよく考えれば、俺がそんなことをする義理はないんだけど、「責任」だの「認知」だの言われると、なぜか男の立場は弱くなってしまう。
おかまバーのジュネさんが見せてくれた女性週刊誌に、そう書いてあったのを、俺は「なるほど」と思い出していた。

「お前、ZECTの新入りか?」
「ああ」
男に聞かれ、俺はゴミを分別しながら頷いて見せる。
あれ。発砲スチロールのトレイって不燃ゴミじゃなくて資源ゴミじゃなかったっけ。

「なら、お前もヴァンパイアハンターというわけだ」
「え?」

ちょっと、缶・ビンも不燃ゴミ扱いで出すのって、ありかよ。
って、そうじゃなくて。

ヴァンパイアハンター・・・?
俺は記憶の糸をたぐった。

「空き缶は、不燃じゃないな。ついでに言うと、アルミ缶も違う」
手が止まってしまった俺に、その男はそう教えてくれる。
「あ、やっぱり」

俺はいそいそと缶類を別の場所に移した。
胸のつかえが取れた気分だ。

待てよ、他の事を考えてたような気もするけど。

「・・・何の話、してたんだっけ?」
自分じゃどうしても思い出せないので、仕方なく男に聞いてみた。
男は一瞬唖然とした表情で、それからフッと笑ったようだ。

「ゴミの分別の仕方だ」

再びゴミ分別についてのレクチャーを受けつつ、俺はちらりと腕時計に目を落とした。
これはもう、遅刻確実。

兄貴にどう言い訳しようか、そればかりが今の俺の頭の中を支配していた。


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