地獄兄弟は今日も平和

「仮面ライダーカブト」自己満足スピンオフ(笑)! 矢車・影山の地獄兄弟二次小説

ダブル★アクション2 [32]

ダブル★アクション2
 vol.32 いつでもいっしょ



なんで三島さ・・・いや、グラ・・・グリ・・・ワームがここにいるんだ。
拘置所にいるんじゃなかったのか。
まったく最近の警察は当てにならない、とブツブツ文句を言いかけた俺の耳に、矢車さんの穏やかな声が響いた。

『・・・大丈夫だ。手当てが早かったからな、命に別状はない』

そこで、はっと我に返った。
そうだ、俺、腹を切られて血がドバーッと・・・。

『あれ・・・?』
自分の体を見回して、俺は首をひねる。
どうも実体じゃないみたいだ。意識体、というか。俺も矢車さんも、なんだか体が半透明なんだけど。

『お前の体は今、病院のベッドの上だ』
いつにもまして優しい声音で矢車さんが言う。

三島さんのワームも、あの後すぐにカブトとガタックに倒されたそうだ。なんせ、ZECT内での凶行だったし。
けど、俺を狙うのは筋違いだろ。決めのライダーキックにも混ぜてもらえなかったのにさ。

ワームが拘置所を脱走する際、警備員も何人かやられたらしい。
また例によって、何の関係もない善良で平凡な一般市民が巻き添えに。
特撮のモブキャラって、本当に不幸だよな。

『・・・ところで影山、さっき話していたこと覚えてるか?』
『さっき?』

ふいに問う矢車さん。
あの即席の係長室で、俺たち何か大事なことを話してたような。

今日の夕食の話だったら、俺の第一希望は麻婆豆腐ってことで。

『そうじゃない。俺が元の世界に戻る方法だ』
静かな、でも誤魔化しを許さない、強い口調。
『俺が別世界に飛べるのは、宿主の意識がない時だ。たとえば、今のように』

聞きたくない。知りたくない。
だけど・・・。

俺は覚悟を決めた。
『・・・じゃあ、今なら元の世界に帰れるってこと?』
『お前の意識が戻る前に、行かなきゃならない。・・・だから、ここでお別れだ』

"お別れ"   

無情な単語が、俺の心に重くのしかかる。

俺の体は、どんどん薄く透けてきていて。
そろそろ実体の方が目覚めようとしてるのかもしれない。

『・・・矢車さんの元の世界に "俺" は、いる?』
『ああ、俺の大事な部下だ』
『そっか』

こぼれそうになる涙を止めて、頭上を仰いだ。
矢車さんは戻らなきゃいけない。きっと、その世界の "俺" が矢車さんの帰りを待ってる。

『・・・さよなら、矢車さん。今まで、楽しかった』
『こちらこそ』
なんとか笑顔を作る俺に、矢車さんも少しおどけた調子で返す。

俺の世界では、矢車さんは2年前にこの世を去っていた。
本当なら、俺たちは知り合うことはなかった。

・・・それでも、俺は矢車さんに出会うことができたんだ。

『これからも一緒だよね、俺たち』
『・・・ああ』
矢車さんがふわっと微笑んだ。


それが、俺が矢車さんと交わした最後の言葉だった。


   *   *


「つぅ・・・っ!」
目覚めた俺は、起き上がろうとした途端、激痛を感じて呻いた。

「まだ寝てなさい。傷が開くわ」
そんな俺を、岬さんが冷静にベッドに押さえつける。

変わらない日常。

「俺、どのくらい寝てました?」
「半日ってとこね。傷はそんなに深くなかったのに、意識が戻らないから心配したわよ。だいたい、なんでザビーに変身しなかったの? 変身できなくても、誰か人を呼ぶくらいできたでしょうに」

延々と続きそうな岬さんの小言を、俺はボーッと聞いていた。

「・・・あ、ご、ごめんなさい。言い過ぎたかしら」
「え・・・?」

急に岬さんの態度が柔らかくなったから、どうしたのかと思ったら。
何気なく自分の顔に手をやって、気づいた。

   涙。

俺、泣いてる・・・?

「ち、違います! これは、その・・・嬉し泣き、で」

咄嗟にそう言ったものの、それもちょっと苦しい言い訳だったかもしれない。
だけど、半分は本当。

「嬉しいんです、俺・・・」

だって、出会えるはずのない人と出会えた奇跡。

別れが悲しいんじゃない。
出会えたことが、この上もなく、嬉しいから。

「元の世界に、ちゃんと戻れたのかな・・・」
また別のパラレルワールドに迷い込んでなきゃいいけど。

そう思って、俺はこの世界にはいない人の無事を祈った。

どこにいても。
どんなときも。

俺の心の中に、矢車さんはいる。


これからも、ずっと。


 END



※ようやく完結です。ギャグは書いてて楽しかった(^^)
ちょっと切なめの終わり方になっちゃいましたが、いかがだったでしょう。
長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。

ダブル★アクション2 [31]

ダブル★アクション2
 vol.31 パーフェクト・ワールド



三島さんに加担していた幹部数人への懲戒処分を含め、ZECTのトップ加賀美陸は組織を粛清した。
やる時はやるもんだ、あのオヤジも。

いっきに幹部のポストが幾つか空き、俺は「係長」という役職を得た。
ZECTに係長があったとは、知らなかった。

仕事内容を聞いたら、シャドウの統率・管理と書類整理、その他諸々、と言われた。
それ、以前と変わったとこ、あるんだろうか。
でも役職手当が月5000円付くそうだから、これはこれでよし。

『とりあえず、お前の望みも叶ったな』
「うん! 矢車さんのおかげだよ」
あてがわれた係長の椅子は、なかなか心地いい。
いや、ほんとにフカフカの椅子で。

『・・・俺も安心して、元の世界に戻れる』
「え・・・戻るって・・・?」

矢車さんの突然の「帰る」宣言。
思ってもいなかったことに、俺は頭が真っ白になってしまった。

・・・違う。本当は、初めから分かってた。
ただ、それを考えたくなかっただけだ。

「で、でも、どうやって帰るの? 帰れないんじゃなかったの?」
『・・・思い出したんだ。俺がなぜ、ここへ飛ばされのか』

少し声を落として、矢車さんは話し出した。きっと、あまりいいことじゃないんだろう。

『俺は、ワームとの戦闘で大怪我を負って病院に運ばれた。俺の体は、まだ眠ったまま病院にあるはずだ』
「え、矢車さんの世界にもワームっていたんだ」

そっくり似てるけど、少しだけ違う世界。
たとえば、この世界の矢車さんはもう存在しないけど、別の世界では、矢車さんはちゃんと生きてる。

・・・よかった。矢車さんは本当は女でした、とかいうオチじゃなくて。
ほら、パラレルワールドって色々あるから。

『話の腰を折るな』
「ご、ごめん、それで?」
『多分・・・俺は意識を失った。その時に、別世界に飛んだんだろう』
「それで、ここへ来て俺の体に入ったの?」
『・・・いや、その前にまた別の世界にいた』

なんだか、話がややこしくなってきた。

どうやら矢車さんは、パラレルワールドを渡り歩いていたらしい。
本来の矢車さんの性格はパーフェクトハーモニーなんだけど、別世界では、策士だったりやさぐれてたり。
それぞれの世界の矢車さんと体を共有してたせいで、今でも時々人格が変わるそうだ。

でも、人格変異が治らないまま元の世界に戻ったら、困るんじゃないだろうか。
間違いなく、変人だよ。

動揺しているせいか、そんな取りとめもないことを思い巡らせながら、俺はふと気づいた。

「・・・じゃあ、今矢車さんの体は意識不明の植物人間ってこと? もし、矢車さんがこのまま戻らなかったら・・・」
『・・・そのうち、死ぬだろうな』
他人事のように矢車さんは言う。
『俺の体が死んだら、俺の意識も消えてなくなる』

「だ、だめだよ! そんなの・・・」
矢車さんが俺の傍からいなくなるのは、嫌だ。
だけど、矢車さんが死ぬのは、もっと嫌だ。

「早く帰らなきゃ! 俺、何でもするよ。言ってよ、どうすればいいの?」
『それは・・・』

その時、とんでもない客が俺の真新しい係長室に入ってきた。
乱暴にドアを開けるもんだから、蝶番がバキリと取れてしまった。
いかにも急ごしらえで作りました、って感じが丸分かりの部屋で、まあ無理はないけど。

「あーあ、ドアが・・・」
無残に傾いた扉に、思わず気を取られた隙に。

『バカ、影山! 避けろ!』

その訪問者は、俺の腹に左腕を一閃させた。

グリラスワーム・・・!

鋭い痛みが走った。
けどそれは、ほんの一瞬のこと。
意思とは関係なく流れ出す血を見ているうちに、俺の意識は暗闇の中に引きずり込まれるように落ちていった。

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※今回で終わるはずだったのに、まとめられなかった・・・。また影山、やられてます。なんだかなー(--;

テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

ダブル★アクション2 [30]

ダブル★アクション2
 vol.30 田所さんからの伝言



トリプル・・・じゃなくて、ダブルライダーキックを食らった三島さんは、一命を取りとめ、後は法の裁決に委ねる結果となった。
天道も加賀美も手加減をしたらしい。
俺はとどめを刺す気、満々だったのに。

「助かったとは言えないな。軍事裁判にかけられて、まず極刑だ」
「そんな・・・!」
天道の台詞に加賀美が悲痛な顔を向ける。

いや、だから。
ここは日本で。軍事裁判なんて、ないない。

俺たちが一同に会してそんなやり取りをしていたところに、岬さんが「大変よ!」と言いながら飛び込んできた。
手に書類を抱えていたから、こんな時にまた仕事か、とうんざりしたんだけど。

「これを見て」
と彼女が広げた書類は、田所さんからの手紙だった。

まず目に飛び込んできたのが、『しばらく旅に出ます。探さないでください』という見出し文字。
レポート用紙にざっと10枚。
几帳面な字で、ぎっしり書き連ねてある。

残念ながら、これを読む気力は俺には残ってない。

「で、なんて書いてあったんです?」
うまいこと聞いてくれた加賀美に、心の中で感謝。

岬さんが、レポ紙に書かれた内容を要約してくれた。

それによると   
田所さんはやはり、人間をワーム化するというZECTの陰謀を知っていたらしい。計画の首謀者は、三島さん(ここ、赤ペンで下線が引いてある)。

三島さんは自らワームになり、ZECTの一部を牛耳っていたという。
エリアXで秘密裡に計画が進められていたが、それを当時ZECTのエリートだった矢車さんに知られてしまい。
矢車さんに問い詰められた三島さんは、口封じのために矢車さんを消した   

「矢車・・・?」
初めて聞く名前に、加賀美が首をかしげる。
「あなたは知らないかもね。彼は将来を有望視されてたZECT隊員だったのよ。でも2年前、突然失踪してしまって・・・」
岬さんの説明に、俺もようやく合点がいった。

2年前、新入りだった俺は、まだ矢車さんのことを知らなかったんだ。

天道や加賀美にしてみれば、矢車さんは「見知らぬ人」で済む。
でも俺にとっては、文字通り「他人じゃない」わけで。

俺は、矢車さんの意識を探ってみた。
田所さんの置き手紙を、矢車さんはどう受け止めたんだろう。

『・・・心配してくれてるのか?』
不意打ちで、そう尋ねられたもんだから。
「べっ、別に、そういうわけじゃ・・・」
どもって否定する俺に、説得力はない。
くっくっと笑ってる矢車さんに、俺はほっと安心した。

「田所さん、きっと罪の意識を感じて・・・」
うつむいて、手紙をギュッと握り締める加賀美。その加賀美の肩に、天道がぽんと手を置く。
「そのうち戻ってくるさ。信じて待っててやれ」
「天道・・・」

美しい友情シーンが繰り広げられている横で、俺はといえば、「三島さんと田所さんが抜けたZECTで、上層部に大抜擢のチャンス!」などと思っていたなんて、口が裂けても言えない。

「ま、一件落着だよね。よかったね、矢車さん」
こそっと小声で言う俺に、矢車さんは少し間を置いて答えた。

『・・・そうだな。ハッピーエンド、だ』

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ダブル★アクション2 [29]

ダブル★アクション2
 vol.29 そして、クライマックス



「三島さん・・・。もう諦めて、法の裁きを受けてください」
沈痛な面持ちで宣告する加賀美の背後には、田所さん以下、ゼクトルーパーたちの姿があった。
いつの間にか、首尾よく包囲されている。

「お前には黙秘権がある。供述は、法廷でお前に不利な証拠として用いられる事がある。お前は弁護士の立会いを求める権利がある・・・」

天道が淡々と権利を通告するけど。
どう見ても、番組違うだろ。そもそもそれ、アメリカの法律だし。

さすがの三島さんも、この状況に悔しげに表情を歪めた。

「私をなめるなぁぁ!!」
珍しく大声を張り上げた三島さんは、ルーパーたちがどよめく中、異形の姿に変わった。
見覚えのあるワームだ。
グリとグラ・・・じゃなくて、グラリス・・・グリラス・・・どっちだったっけ。

「あとは、お前の番だ。しっかりやれよ」
『えっ?』

いきなり体の支配権を放棄し、矢車さんは俺の意識の奥に引っ込んでしまった。

「ちょ、ちょっと、待ってよ!」
『ラストバトルだ。花を持たせてやる』
慌てる俺に、矢車さんは言う。

・・・そうか。
絶対優勢のこの状況。いいところを見せるチャンスかも。
苦節○年。これで、ようやく俺も出世街道に。

天道と加賀美は、既にカブトとガタックに変身している。
俺も負けじと、ザビーブレスを腕に付けた。飛んでくるザビーゼクターを素早く装着。
久々に燃えるシチュエーションだ。

さあ、やるぞ! と気合を入れたら、
「トリプルライダーキックで決めるぞ」
と、カブトが余計な一言を。

いつぞやのトリプルキックは、確かにカッコよかったよ。
でも、俺、今ザビーなんだよ。
ってことは、俺の決め技、キックじゃないんだよ。

言いづらそうにそう告げると、カブトはぼそっと呟いた。
「使えん奴だ・・・」

「大丈夫です。俺とカブトでケリをつけますから」
ガタックのフォローが、さらに俺に追い討ちをかける。
つまり、俺はそこで見ていろ、と。

『・・・不協和音だったな』
苦々しげな矢車さんの声が響く。

カブトとガタックが華麗にライダーキックを決めるのを、俺はポツンと見ているだけだった。


これって、イジメ・・・?

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ダブル★アクション2 [28]

ダブル★アクション2
 vol.28 対決の刻(とき)



カツカツと靴音を響かせて、「俺」はZECTの廊下を歩く。
髪の色は少し茶髪だけど、きっちりスーツ姿でネクタイを締めて。クールビズも、ZECTには関係ない。

昨夜まともに寝てない俺は、とてもじゃないが今朝は起きる気力がなかった。ただでさえ低血圧で朝に弱いし。

今日一日、俺の代わりに仕事をするという条件付きで、俺は体の自由を矢車さんに明け渡した。

この暑さの中、ザビーになんか変身したら熱中症の危険大。
俺だったら絶対パスしてるけど、矢車さんはシャドウを率いてワームを撃退してしまった。
矢車さんが入ってる時は、いつもこうだ。

「隊長! 俺、がんばって隊長みたいになります!」
なんて、暑苦しくも熱血している隊員B(注:隊員Aは数ヶ月前、一身上の都合で退職)。
「ああ、がんばれ」
と、矢車さんは爽やか系の笑顔で悩殺。


そんな風にして任務が終わった後、「俺」は三島さんのいる執務室に向かった。
ノックをして「失礼します」と礼儀正しく挨拶した時は、確かにパフェモニ矢車さんだったのに。

後ろ手にドアを閉めたと思ったら、矢車さんはシュルッとネクタイを取っ払った。上まで留めたワイシャツのボタンも2、3個はずす。

三島さんが何か言うより早く、矢車さんが口火を切った。
「面倒なのは嫌いなんだ。ここらで、はっきりさせてくれないか。・・・"矢車" を殺したのは、あんただろう」

『ちょっと、単刀直入過ぎるよ!』
叫ぶ俺の心の声は、矢車さんには届いてない。
今日は、俺の声も「オフ」もしくは「ミュート」の状態なわけで。

マズイことになりませんように、と俺はひたすら祈るしかなかった。

「間宮麗奈からすべて聞いた。あんたの正体も・・・」

また矢車さんてば、テキトーな話を。
厳密には、彼女から聞いたわけじゃない。

取調べ中の麗奈が逃げたという報告は、俺たちも受けている。
でも、それに関して上からは何の指示もなかった。つまりは、見逃した、ってことだ。

麗奈を襲ったZECTの新入りは、本日付けで辞令を出したらしい。
お互い昨夜の事は口外しないと約束して、彼を釈放した。けど、やっぱり報復を恐れたんだろう。
いや、決して、俺や風間が脅したとかじゃなく。

じれったそうに、矢車さんはさらに問い詰める。
「なぜ、矢車を殺した? 口封じのためか」
「・・・だとしたら、どうする」
三島さんの方は平静そのもの。

「・・・遺体はどうした。エリアXにはなかった」
「すでに処分済みだ」

遺体って・・・。何、このシリアス展開。
さらっと交わされたこの会話は、犯行を自供したものなんだろうか。
しまった。証拠品として、テープに録音しておくべきだった。


「・・・終わりですね、三島さん! 証拠は収めました」
突然、バタンと大きな音を立ててドアが開かれた。

外に立っていたのは、小型のテープレコーダーを手にした加賀美。その横には、天道もいる。

どうやら、矢車さんが加賀美たちに手を回していたらしい。
俺が寝ていた午前中のうちに話をつけていたんだろう。

『なんで、俺に言ってくれなかったんだよ・・・』

事態はどんどんクライマックスに近づいてるけど。

『・・・俺、矢車さんに信用されてないのかな』
ひとり、なぜか別次元の物思いにふける俺だった。

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