地獄兄弟は今日も平和

「仮面ライダーカブト」自己満足スピンオフ(笑)! 矢車・影山の地獄兄弟二次小説

白夜行 [最終夜]

沈まない太陽は ここにもあるのかもしれない


白夜行〜想と瞬
 [最終夜]



ZECTによるネイティブ掃討も、ひと区切り付いたようだった。
加賀美陸は警視総監として、その息子加賀美新は警察官として再出発をした。
天道は相変わらず。
そして、俺たちは    

ワーム化した人間たちは、日常生活に戻ったものの定期的に治療を受けることを余儀なくされた。
もともとネイティブだった者たちと違い、いつ自我を失って暴走するか分からない。完全にワーム化を抑止する手段は、いまだ見つかっていなかった。

相棒の体もZECTの治療を必要とした。
白夜の世界への旅立ちが無期延期になり、俺たちは以前と変わらない日々を過ごしている。
季節が移り変わっていくのを、俺はぼんやりと感じた。
地獄に堕ちてからは、四季の変化など気に留めたこともなかったのだが。

「あ、兄貴の頭に桜ついてる」
土手に寝転がった俺たちの側には大きな桜の木。
相棒は俺の髪に舞い落ちた桜の花びらを手に取った。
「・・・今頃は、日本を離れてるはずだったのにね」

ぽつりと相棒が呟く。
何を言いたいかは分かっている。
「兄貴、ごめん。俺のせいで・・・」
「やっぱり、春は、桜だ」
相棒に言葉を続けさせない。聞く必要はなかった。
「白夜の国には咲かない。俺は桜を見たかっただけだ」

転がったまま、眩しいほどの青空を瞳に移す。
俺たちの上にも、陽の光は分け隔てなく降り注いでいる。

相棒も起こしていた体を、俺の隣にごろんと横たえた。
「・・・もし、俺がまたワームになったらさ。今度こそ、兄貴の手で俺を倒してよね」
「当たり前だ」
否定の返事を期待していたらしい相棒は、俺が即答すると、少しむくれた顔をした。

手の中に、俺は既に光を掴んでいるのだろうか。

「だがお前だけに地獄を見せは、しない」
あの時、意識のなかった相棒に言った言葉を俺は繰り返す。
「相棒、俺たちは永遠に一緒だ・・・」

たとえ、どこにいようと、どんな結末が待っていようとも。

俺たちは共に、白夜の中を歩いていこう。


 END




※ようやくラストです。
お付き合いありがとうございましたm(__)m

捏造だし、なんか矢車さんの性格変だし・・・ちょっとマズかったかなぁ、と書き終えてから反省してます。
二人の関係をどうやって描写するか、それがいつも悩みどころです。ギャグは何も考えなくていいんだけど(笑)。

矢車ザビー復活で、キックホッパーとの戦法の違いに戸惑う矢車さんとか、もっと掘り下げたかったんだけど今回は入れられませんでした・・・。
ちゃんとしたザビーじゃなくてスミマセン(汗)。

テーマ:特撮ヒーロー - ジャンル:テレビ・ラジオ

白夜行 [第九夜]

白夜行〜想と瞬
 [第九夜]



加賀美陸の対処は早かった。
呆れるくらいあっさりと影山のリジェクション治療の指示を出し、俺をZECTから解放した。
「残念だよ。隊員たちも君の復帰を望んでいるのに」
そんな引止めの言葉など今の俺には何の魅力もない。
「ガラじゃないんでね・・・」
それは、俺の本心だった。

他人の命を背負うのは重過ぎる。
相棒ひとりさえ、まともに助けられなかったというのに。

「・・・立てるか」
「肩、貸してくれる?」

相棒は覚束ない足取りでベッドから起き上がった。
ふとベッド脇に置かれたザビーブレスに目を留める。返しそびれ、ここまで持ってきてしまったものだ。

「兄貴。ザビーになったんだ」
「・・・ホッパーゼクターを奪われたから、仕方なく、な」
見つかるところにブレスを置きっ放しにしてしまった自分の迂闊さを呪う。

俺にとって、ザビーは裏切りの象徴でしかなかった。
田所さんからザビーに戻るよう誘いを受けた時も、俺はザビーブレスを収めたジェラルミンケースを蹴り上げた。
戻るつもりはさらさらなかった。

様々に変化してきた俺と影山の関係を、最悪の形で具現するのがザビーだ。
ザビーを避けることで、無意識に影山との確執に蓋をしたのかもしれない。

相棒も、じっとザビーブレスを見つめている。
ザビーへの執着、俺への引け目。
一体どんな思いでザビーを受け止めるのか。

だが俺の予想と違う明るい声で、相棒は言った。
「・・・兄貴のザビー、俺も見てみたかったな」
吹っきるような笑顔で。

「戦い方を忘れちまってる。無様なもんだったぜ」
俺も軽く返す。こだわりを捨てて。

一歩一歩、俺と相棒は医療施設の長い廊下を外へ向かって歩いた。
まだひとりで歩くことのできない相棒と共に、その歩みは遅かったが、それでも確実に前に進む。

「ね、ザビーゼクター、もらっていこうよ。白夜の国にさ」
好きにしろ、という俺の言葉に相棒は嬉しそうな顔をした。
「やたっ! 俺もザビーになれるし、兄貴と着回しできるね」
「・・・服じゃないだろ」

他愛ない会話。
いつまで続くか分からないひとかけらの日常を、俺たちはやっと取り戻した。

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白夜行 [第八夜]

白夜行〜想と瞬
 [第八夜]



荒々しくドアを開けて、俺は加賀美陸の座るデスクに無造作にホッパーゼクターを放った。
ライダーベルトも同じように投げ置く。
ガシャンという金属音が耳障りなほど大きく響いた。

「影山を返してもらおう」

「・・・言っている意味が、分からないのだが」
陸は飄々と脚を組んだまま、椅子をくるりと回転させてこちらを向いた。俺の睨みにも、動じる様子はまったくない。

「俺をいいように使うために、影山を犠牲にしたのか? あんたになら、あいつを治すことができたはずだ」
感情を押し殺してそれだけ問う。
陸は一瞬目を丸くしたが、やれやれ、と肩をすくめた。

「犠牲になど、しておらんよ。時期が来たら、言われなくとも君の元に返すつもりだった」
それは、俺の推測に対する充分な肯定だった。
全身に湧き上がる怒りを俺は必死で抑える。

   影山が目覚めないのは、リジェクションのせいだ。

ネイティブに変わりつつあった相棒は、ホッパーに変身したことでリジェクションを起こしたのだろう。

装着者の拒絶反応は、ZECTによって治療法が確立している。
だが、影山にその治療は行われなかった。恐らく、俺をZECTに縛り付けておくために   

「私は、"報酬"だと言ったはずだ。君の相棒を治療する。その代わりに、君に働いてもらう。これぞ、ギブ・アンド・テイク」

悪びれない陸を前にし、俺は両の掌を力任せにデスクに叩きつけた。
身を乗り出ようにして、低く告げる。
「・・・なら、俺はもう充分働いた」
報酬を、と俺が言葉を続ける前に、陸は机上の電話に手を伸ばした。

「ゲーム・オーバー」
受話器に向かって、それだけ言った。


   *         *


「・・・よぉ」
口をついて出たのは、いつもと変わらない言葉。
「・・・兄・・・貴・・・?」

相棒は目をしばたたかせながら、掠れた声を出す。
「あれ、俺・・・寝過ごした・・・かな」
寝ぼけているのか、ぼけているのか。
長いこと眠っていた頭と体は、まだ現実を認識できないらしい。

「ああ。寝過ぎだ」
軽口を叩いて、俺は相棒の頭を引き寄せた。
自分の肩口に押し付けて、俺もうつむき加減に顔を伏せる。

今の俺の顔を、相棒に見られないように。
嬉しいような、泣きたいような。
きっと今の俺は、情けない顔をしているだろうから。

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白夜行 [第七夜]

白夜行〜想と瞬
 [第七夜]



資格者を待ちわびていたかのように、ザビーゼクターが上空に現われた。
この前は、俺から拒絶した。だが今度はそうも言っていられない。
苦々しく思いながらも伸ばした手の中に、ザビーゼクターはふわりと収まった。

「・・・変身」
ザビーのライダースーツが体を覆っていくのを感じる。

即座にキャストオフした俺の変身を見て取ると、ワームたちはキックホッパーを守るかのように立ちふさがった。
「さすがシャドウ・・・。いいハーモニーだ」
全体が個を守り、個が全体を守る。
俺が提唱していたパーフェクトハーモニーを連中は実践しているようだ。
だが、使い方を間違えている。

「ライダースティング!」
一気に片を付けるべく、俺は腕の武器で元部下たちを続けざま直線状に薙いだ。もちろん急所ははずして。
ザビーの特性上、今までの足技主体の攻撃からボクシングスタイルに切り替えなければならない。
戦いの勘は実戦で取り戻していくしかなかった。

10体余りのワームを地に伏せ、キックホッパーに対峙する。
「さぁ、勝負といこうか」
腕を構え、俺は攻撃に備えた。
が、奴の様子が変だ。
ふいに苦しむように胸を掻きむしったと思うと、ガクリと膝を折った。

「おい!?」
俺が近寄っても、キックホッパーは微動だにしない。
自然にホッパーゼクターはベルトから離れ、変身は解除された。装着者の意識がなくなったのだろう。
あとに残ったのは、うつぶせに倒れた男の姿。
ワーム化もしていない。

見回すと、他のワームたちは人間に戻ることなくルーパーに捕獲されている。
俺は変身を解くと、倒れている元部下の首に手を当てた。
   生きている。気を失っているだけだ。

名残惜しそうに周りを跳ぶザビーゼクターに、俺は短く命じる。
「行け」
手早くザビーブレスをはずし、ブレスを持っていたルーパーに詰め寄った。
どこか影山を思い出させるその部下に。

「どういうことだ? なぜこれをお前が持っている?」
ブレスを突き返そうとする俺をやんわりと拒み、そいつは照れくさそうに笑った。
「実はザビー候補だったんですよ、俺。・・・でも、ああなったら怖いですからね」
言いながら、視線を地に伏したままの男に向ける。憐れみの色を込めて。

その時、俺ははたと気がついた。
(リジェクション、か・・・!)
ザビーの資格者になる前に聞かされたことがある。
ゼクターは人を選ぶ。
もし資格者と成り得ない者がザクターを装着すれば、体内で拒絶反応が起こるのだ、と。

だが、ネイティブはゼクターを自由に操れるはず。
「ネイティブにリジェクションは出ないだろう」
「他のライダーなら、そうですね」

妙にはぐらかすような言い方をする。
何かの重要なヒントを与えられた気がして、俺はその言葉に結びつきそうな記憶を辿った。

   そうだ。
ホッパーは他のライダーとは違う。対"ネイティブ"用にZECTで極秘に開発されたライダーシステムだ。
ならば、ネイティブに拒絶反応を起こさせるものがホッパーにはあるのかもしれない。

「矢車さんに隠し通せるわけないですよね。トップにどう言い訳すりゃいいんだか・・・」
頭を抱えるその部下を見て、俺はすべてのからくりを理解した。
"トップ"とは、加賀美陸に違いない。

「・・・まんまとはめられたわけだ」
なぜ、もっと早くに気付けなかったのか。俺は自分自身に毒づく。

   悪い・・・。
そしてひと月もの間、何もしてやれなかった相棒に俺は心の中で詫びた。

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白夜行 [第六夜]

白夜行〜想と瞬
 [第六夜]



Cブロックで俺たちを待ち受けていたのは、見覚えのあるシャドウ隊員たちだった。
「これはこれは、矢車隊長じゃないですか」
まだ人間の姿をとどめた元部下は冗談めかして敬礼する。その背後には、一般人が数人捕らわれている。
人質、のつもりか。

「なぜ、こんなことをする?」
ホッパーゼクターを左手に持ちながら、俺は聞いた。
「争いのない世界を作りたい・・・それだけですよ」
「人間をワームに変えることで、か」
馬鹿げている。
俺の皮肉めいた笑みを認めると、連中はむっとしたように言い返した。

「今の人間の世界が"悪"なんです。三島さんは、人間に光の道を示してくれたんだ!」
すっかり洗脳されてしまったらしい元部下の様子に、俺は諦めの溜息をついた。
救うことはできそうにない。

「・・・矢車隊長。俺たちにそのゼクター、渡してくれませんかね?」
ベルトに向かう俺の左手が止まる。
「なんだと?」
「ライダーは、俺たちが光を掴むのに邪魔、なんです」
首をくいと上げて合図すると、そいつの横に控えたシャドウの何人かが人質のところに向かった。
手には銃を持って。

「隊長! そんな要求聞く必要ありません」
俺の背後からも、俺を隊長と呼ぶ声。
ZECT側のルーパーたちの視線が俺に集中する。ベルトをはずしホッパーゼクターを放り投げる俺に、驚愕の叫びが上がった。
「隊長!?」

「そんなに欲しいならくれてやる」
ベルトも地に放る。
信じられないといった面持ちの部下たちを、俺は手で制した。

ベルトとゼクターを手にしたシャドウたちは、次々とワームへと変貌していく。
俺は冷静にその様を見つめた。
シャドウは13人。全員が今やワーム、だ。

ルーパーたちに人質を保護するよう指示し、俺はワームの中に切り込んだ。
たて続けに蹴りを放つ。鍛えた脚力は、生身のままでもワームにダメージを与えられる。
倒す必要はない。ただ、捕らえさえすれば   

「隊・・・長っ!」
苦しげな呻きが聞こえ、俺は自分の詰めの甘さを思い知った。
敵の中の一体は、ワームの姿ではなかった。
「・・・嫌味かよ」
俺は舌打ちした。
キックホッパーが、俺の部下の首を絞め上げている。

ネイティブはライダーに変身できる。
初めから、奴らの狙いはホッパーゼクターだったのだ。

「そいつを放せ!」
俺はキックホッパーに渾身の蹴りを放った。
まるで自分自身を攻撃しているような奇妙な錯覚。

ワームであるキックホッパーは、両腕をクロスさせて俺の蹴りを受け止めると、間髪入れずジャンプした。
(マズい・・・!)
勘で分かる。
アンカージャッキを入れたキックが来る。

咄嗟にかわしたわずか数センチ横でヒュッと緑色の風がうなった。
派手な破壊音を立てて、地が陥没する。
生身で食らったら、ひとたまりもないだろう。
風圧で切ったのか、額から血が流れ落ちる。俺はそれを拭うこともせず、考えを巡らせた。
(どうする・・・?)

「隊長! これを・・・早く!」
やっと解放された喉でゲホゲホと咳き込みながらも、その部下は俺に"それ"を投げて寄越した。

「・・・これは・・・」
受け取って、一瞬息を飲む。
"あの時"以来、俺の元を離れたその黄金色は、変わることなく誇らしげに輝きを放っている。

   ザビーブレス。
この場を生き延びるために託された唯一の武器を、俺は迷うことなく腕にはめた。

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