地獄兄弟は今日も平和

「仮面ライダーカブト」自己満足スピンオフ(笑)! 矢車・影山の地獄兄弟二次小説

refraction [終章]

「完全な死」は 完全な終焉じゃ、ない


refraction -リフラクション-
 [終章]



ルーパーたちが駆けつけるまで、影山はぼんやりとそこにいた。
両手は矢車の肩をつかんだまま。
救護班から離れるように言われ、ゆるゆると手を下ろす。
その手に、べっとりと赤いものが付いていた。

(・・・血・・・だ)
自分は怪我を負っていない。
この血は、矢車のものだ。

今あるものが現実として捉えられなかった。
ただ矢車の最期の言葉だけが、頭の中で繰り返される。

『ZECTを、信じるな』

大事なもの全てが、崩壊してしまう気がした。
(・・・違う!)
側に転がっていたマシンガンブレードを、影山は手に取った。
初めて手にしたその武器は、ずっしりと重い。
持ち主であろうゼクトルーパーは救護班に搬送されるところだった。

「・・・守らないと」
人類の希望である、天空の梯子計画を。
矢車の言葉は信じない。信じたら、矢車の死も認めなくてはならないから。
だから   
「俺、行きます・・・矢車さん」

表面通りではない、いびつなZECTの本質。見え隠れするそれに、影山は自ら目を塞いだ。
矢車が守ってきた存在。ならば、たとえどうであっても自分も従うだけだ。

    *    *

   だろうか・・・。

多数の犠牲者を出した戦いの中で、影山は今まで表に現われなかった戦闘能力を開花させていた。

二重の裏切り者として、修羅の抹殺にも影山は手を貸した。
血にまみれた女の姿に、何も感慨はない。
矢車が倒れたときも、この女はこうして見捨てたのだ。

空から、白いものがフワフワと落ちてくる。
影山はそれを取ろうと手を伸ばして、途中で止めた。
なんとなく、今の自分が触ってはいけないようで。

「・・・君は優秀だな」
いつの間にか、背後にZECTの幹部のひとりである三島が立っていた。
「これからもZECTのために働いてくれるだろう?」
「もちろんです」

影山は三島に笑みを返した。
それは矢車に向けた時のように、純粋な想いからではなかったけれど。

もう、海を見たいとも思わない。

矢車が見せてくれたあの幻の海が、影山にとって本当の海だったから。


 END




※ごめんなさい〜。救いのないラストです(--ゞ
時間の流れ的におかしいところもありますが、お許しください。
影山がようやく悪に目覚めてくれて、TV版とつながったv
よかったよかった(違う!)

テーマ:特撮ヒーロー - ジャンル:テレビ・ラジオ

refraction [5]

refraction -リフラクション-
 [5]



ネオゼクトとの攻防は、今なお続いている。
だが、天空の梯子計画は中止することなく予定通り進められていた。
あれほど待ち望んでいた計画。しかしそれを見届ける余裕が、影山にはなかった。
目の前で繰り広げられる織田と矢車の戦いを追うのに精一杯だ。

互いにヘラクス、ザビーに変身した二人はライダー同士の熾烈な戦闘に入った。
影山のいる場所から少し離れたところで、ネオゼクトの北斗修羅が戦いの行方を見守っている。感情の篭らない表情で。
彼女は、どちらの味方なのか。


敵組織のライダーを相手にしながらも、矢車にはまだ余裕があった。
織田は修羅の裏切りに少なからず衝撃を受けている。
ドレイクが倒されたことを告げたのも、織田の動揺を誘うためだった。
心の揺らぎは、そのまま戦闘に反映される。

残党を狩っている部下たちから、そろそろ報告が入る頃だろう。
そう思い、矢車は周囲に目を走らせた。

自分と織田の戦いを遠巻きに眺める修羅の姿が見える。
そして、その後方には    

(・・・影山!?)
思いもかけなかった部下の姿を認め、矢車の動きは一瞬止まる。
その隙を見逃すヘラクスではなかった。

配管を砕き蒸気で目眩ましをかけると、クナイガンのアックス(斧)でザビーに深い一撃を与えた。
渾身の力で振り下ろされたアックスに、ザビーの強化スーツも意味を成さない。
全身に走る痺れのような感覚に、矢車は堪らず膝をついた。
変身を保てず、ザビーゼクターが離れて行く。


(・・・ま・・・さか・・・矢車さんが・・・)
咄嗟には、自分の目にした状況が信じられなかった。
膝を折り、前屈みにうつむく上司。

ヘラクスと修羅の姿が見えなくなるや、影山は矢車のもとに駆け寄った。
「矢車さん! しっかりしてください!!」
動かない矢車に、もしや、と不安になる。
だが、そんなことあるはずがない。
矢車が敗れるはずは、ない。

肩を揺り動かして必死に呼びかけると、矢車はうっすらと目を開けた。
「矢車さん!」
「影・・・山・・・、避難・・・しろ・・・。ここは・・・危険・・・」
途切れ途切れに矢車は言葉を継ぐ。
その青ざめた顔に、影山は身震いする。

(矢車さんが、死ぬわけない・・・!)

もう、声を出すのも辛そうだった。
そんな上司を見ているのは、いたたまれない。
「今救護班を呼んできます。待っててください!」
「逃げ・・・ろ、影山・・・」
最期の力とばかりに、矢車は影山の腕を掴む手に力を込めた。
「・・・ZECTを・・・信じる・・・な」

「・・・矢車、さん・・・?」
掠れ気味の声で、影山は上司の名を呼ぶ。

しかし、矢車は何も答えてくれない。
影山の腕を掴んでいた手が、ぱたりと力なく落ちた。

→NEXT

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refraction [4]

refraction -リフラクション-
 [4]



天空の梯子計画が実行に移される、まさにその日。
突然、非常事態を告げる警報がZECT内に響き渡った。

書庫で書類整理をしていた影山も、耳を突くけたたましい音に驚いて廊下に飛び出した。
バタバタという大勢の足音と喧騒。
呆然とする影山を押しのけるようにして、隊員たちが慌てふためいて走っていく。
その中に見知った同僚の姿があった。
「おい、何が起こったんだ!?」
「ネオゼクトだ! お前も早く避難しろ、影山!」
呼び止めようとしたが、同僚は足を止めることなく叫ぶ。
そのすぐ後をルーパーのひとりが援護するように続いた。
「非戦闘員は地下に急げ! 早く!」

(ウソだろ・・・!)
影山は唇をかんだ。
ネオゼクトの強襲   よりによって、こんな日に。
今日は、地球に海を取り戻す大事な日になるのに。

いや、この日を狙って、なのだろうか。
ネオゼクトのリーダーの一人は内通者のはずだ。
ならば、何らかの裏があるのかもしれない。

(矢車さん・・・)
真っ先に思い浮かんだのは、上司の安否だった。
ザビーとなった矢車が負けることなどあるはずはない。
だがなぜか、妙な胸騒ぎがする。

ルーパーの制止の声も耳に入らない。
地下へと向かう人の流れに逆行して、影山は駆け出していた。

    *      *

激しい銃撃戦の間をかいくぐって、影山は矢車の姿を探した。
敵味方入り乱れ、あちこちで倒れている隊員たち。
血なまぐさい光景に胸が悪くなりそうだった。
武器を持たず丸腰で来てしまったことを後悔する。
ネオゼクトはもちろん、ZECT側に見つかってもマズイことになるだろう。

ようやく、隊を率いて立つ上司を見つけた時、影山は物陰に身を隠したままほっと安堵した。
(よかった・・・。無事だった)

しかし、目の前で展開された銃撃に思わず息を飲む。
ひとりに向けて一斉に発砲するゼクトルーパーたち。
それを矢車は微笑すら浮かべて見つめている。

甘く優しい、いつもの笑顔。
けれど、とてつもなく冷酷で・・・。

「馬鹿だね、ZECTに歯向かうなんて」
白い手袋をキュッとはめ直し、矢車はルーパーたちに右手を上げて合図する。
「別のネズミが動いている、行くぞ!」

出て行くこともできず、影山は事の成り行きを見守っていた。
撃たれた男にちらっと目をやるが、もう動く気配はない。
(死んだ・・・のかな)
のろのろと足を動かし、それでも影山は矢車の後を追った。

良くないことが、起こりそうな気がした。

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refraction [3]

refraction -リフラクション-
 [3]



自分の知っている矢車とは違う矢車を見せつけられた気がした。
強くて頼りになって、いつも『完全作戦』を遂行する上司。
目的のためには、手段は選んでいられないのかもしれない。
でも、と影山は思う。
(矢車さんが汚いマネをするのは、嫌だ・・・)

いつまでも動かない影山を見かね、矢車は椅子から立ち上がった。
「影山、ちょっと付き合ってくれ」
「・・・えっ?」
デスクの上の書類もそのままに、矢車は影山を連れて執務室を出た。

ZECT内には様々なトレーニングルームが設けられている。
射撃、体術、戦闘シュミレーション等の実技はもちろん、イメージトレーニングや催眠学習といったものまである。
二人がやって来たのも、そんな施設のひとつだった。

体育館ほどの広さだが、がらんとして何の設備もない。
待ってろ、と言い置いて、矢車は隣の機械室のような部屋に入っていってしまった。

ひとり残された影山は、訳も分からず不安げに周囲を見回す。
影山のZECTでの仕事はもっぱら書類整理だ。
まだ実戦に赴いたことはなく、戦闘訓練も数えるほどしか受けていない。

「・・・あのー、矢車さん・・・?」
待つのに耐え切れなくなり、おそるおそる口を開いた時。

突如として、目の前に海が現われた   

「・・・うわっ!?」
大きな波に飲み込まれ、影山は慌てて水面に顔を出そうとする。
だが、息は苦しくない。
足元はフワフワとして浮遊感はあるが、本当に水中にいるわけではなさそうだ。
服も濡れてはいない。

「や、矢車さん? これって・・・」
助けを請うように尋ねると、機械室から出てきた上司は優しげに笑った。
「ホログラフィだ。重力や圧力も水中に近づけてある」
「・・・はぁ」

どうやら、水中や宇宙空間での戦闘の模擬訓練に使われるシステムらしい。
だが、どうして今自分がそれをする必要があるのか。

「海に行きたいと言っていただろ。今はこれぐらいしかできないが・・・」
矢車は片手を打ち寄せる波に伸ばした。実際に存在しない波は、触れることもできず手の中をすり抜けていく。
「計画が成功すれば、本物を見せてやれる」

(俺に、これを見せるために・・・?)
矢車の意図を、影山はようやく理解した。
海が好きだと、取り戻したいと告げた自分。
それを、矢車は心に留めていてくれたのだ。

凝り固まりかけたどろどろした気持ちが、ゆっくり溶けていく気がする。

海を、取り戻したい。そして、青い海を矢車と見たいと思った。
それには、天空の梯子計画を実現させなければならない。

矢車は腕を組んだまま壁際に背を預けている。
「俺、もう戻ります。ありがとうございました!」
ぺこりと頭をさげて、影山は駆け出した。

部下の後姿が遠ざかってから、矢車はシステムのスイッチを切った。
唐突に海は消え、現実が戻る。

ふぅっと息をつき、矢車は左手で両眼を覆った。
無邪気な笑顔を見せる部下に、ちくりと胸が痛む。
影山が思っているほどに、ZECTが善ではないと知っていたから。

「・・・黄金のライダーに手を回しておくか」

矢車は冷静に呟いた。策士の顔で。
そろそろ、次の任務に移る頃合いだろう。

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※なんか、矢車さん→腹黒さ3割増し、影山→純粋さ3割増し、くらいになってるような・・・(汗)。なんでだろう(--ゞ

refraction [2]

refraction -リフラクション-
 [2]



血で血を洗うネオゼクトとの抗争は、激化の一途を辿っていた。
本来のワームという敵だけでなく、ネオゼクトとの戦闘によっても、日々多くの隊員たちが傷付き、殉職していく。

ネオゼクトに関する資料を整理しながら、影山はやりきれない気持ちになっていた。
なぜ、彼らはZECTを倒そうとするのだろう。

指名手配の犯人よろしく撮られた反逆組織のリーダーたちの顔写真を並べ、書類の上にホチキスで留めていく。
「・・・あれ?」
ふいに、影山は写真に視線を落とした。
そのうちのひとりの顔はどこかで見たような気がする。

コンコンと遠慮がちにノックをすると、中から「どうぞ」という返事。
矢車の声だと分かっていたが、一応気を遣って影山はドアを開けた。
「・・・失礼します」
共用の執務室とはいえ、面倒な書類関係の処理はほとんど矢車の仕事になっていた。よって、この部屋にいるのはたいてい矢車だけの時が多い。

「影山か、どうした?」
ペンを走らせる手を止めて、顔を上げる上司。
予想通り矢車ひとりであることを確認すると、影山は駆け出すように詰め寄った。
「矢車さん! これ、どういうことです!? どうしてこの前、この人と一緒だったんですか!?」

部下の剣幕に驚いたものの、矢車は影山の手に握られた写真を見て、ああ、と納得する。

北斗修羅。
女ながら、ネオゼクトのリーダー格のひとりだ。

数日前の夜、矢車がこの女といるところを影山は見ていた。
「任務でね、修羅と会っていた」
トップシークレットだから漏れたらクビだぞ、と矢車は冗談めかして釘を刺す。
なのにあっさりと認めたのは、言い訳をしても無駄だと思ったのか、影山を信用しているからなのか。

「ネオゼクトを潰すには、内部からの方がいい。そのための手回しだ」
つまりは、修羅を引き込んで内通者にした、ということだろう。
「でも、どうやって・・・」
「女をおとすのは、簡単だ」
さらりと言われ、影山の頬にカァ・・・と朱がさした。

「そ、そんなの、いくら任務だって・・・フ、フケツだと思います。お、俺、そういうのって・・・」
自分でも何を言っているのか分からない。
影山がパニックに陥っていると、矢車は思わずといったふうに吹き出した。
「ぷっ。バーカ、お前が想像しているような意味じゃない」
おかしそうにくっくっと笑う上司に、影山はさらに顔を赤くする。

ひとしきり笑った後、矢車は大きく息をついた。
できればこんな裏の事情など影山に関わらせたくはなかった。だが、ここまで知られた以上、話さないわけにはいかない。

「・・・女は理想に弱い。理想論を掲げれば、簡単に言いくるめられる。特に、野心を持っている女は」
ZECTの正当性、目的達成後の見返りなどを言葉巧みに語り、矢車は修羅を懐柔したのだ。
何食わぬ顔でネオゼクトに戻る彼女を、立派な"裏切り者"に仕立て上げて。

ZECTという組織の頭脳でもある矢車は、こういった駆け引きに長けていた。
しかし、純粋にZECTを信じ自分を慕ってくれる影山には隠しておきたい一面だった。

矢車は影山の反応を待った。
何を考えているのか。黙ったままうつむいている部下からは、その表情が窺えない。

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