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【  2012年02月  】 

始まりのアリス(7)

始まりのアリス

2012.02.29 (Wed)

 4.トランプの城 やっとのことで森を抜けると、荘厳な城が視界に入った。城まで導いたチェシャ猫は、またもどこかへ消えてしまっている。「……十七時か」 矢車は手首を回し、腕時計を確かめた。 まだ日は高いものの、すでに夕刻。現実の世界では、丸一日近く眠っていることになる。 城門の前に立つトランプの門番は、少しの疑いも持たず二人を中へ通した。招待状さえ所持していれば、招待客の名前や顔はどうでもいいらしい。 ...全文を読む

始まりのアリス(6)

始まりのアリス

2012.02.28 (Tue)

  青虫と出会って以来、矢車は頻繁に時間を気にし始めた。足早に進む後姿を、影山が半ば駆け足で追いかける。 食事はおろか休憩すら満足に取っていないのだから、現実ならとっくにバテているだろう。「これからどうするのさ、兄貴」「エンディングへ行く。白ウサギもそこにいるはずだ」 目的地は、『アリス』の最後の舞台となるトランプの城。どうやら矢車には思うところがあるらしい。何も話してくれないものの、城へ着けば分か...全文を読む

始まりのアリス(5)

始まりのアリス

2012.02.27 (Mon)

 3.Who are you? 森の中を進んで行くと、視界が開け、キノコの群生地帯に行き当たった。高く昇った太陽も雲間から現れ、服を乾かすには、おあつらえむきだ。 濡れた靴とズボンををいそいそとキノコの上に並べる影山を眺め、矢車は腕時計に目をやる。 昨夜一時近くにベッドに入り、現在は昼の十一時。かなり時間が経ったのに空腹を感じないのは、本体が眠っているせいだろうか。 影山は着衣を干し終え、鮮やかな色彩のキノコを...全文を読む

始まりのアリス(4)

始まりのアリス

2012.02.26 (Sun)

  こんなことなら水着でも着ていればよかったと、影山はのろのろと足を動かす。 太腿まで水に浸かりながら長時間歩くのは、結構苦痛だ。中までぐっしょり濡れて重くなった靴は、歩みをますます遅くさせる。「お前、ネズミより遅いぞ」「へ、ネズミ?」 見れば、二人から少し離れた水面を一匹の小さなネズミが優雅に泳いでいる。 ネズミは水の上に開いた壁の横穴を見つけ、素早く這い上がり奥へ入って行った。「これ、外に通じて...全文を読む

始まりのアリス(3)

始まりのアリス

2012.02.25 (Sat)

 2.together with「な、なんで兄貴がいるのさ!」「なんで、お前がいるんだ!」 目の前にいる互いを指差し、影山と矢車は同時に言葉を発した。「俺は普通に寝たよ。今だってちゃんとベッドの中で」「こっちだって、そうだ」「……だから、なんで兄貴がいるんだよっ!」「俺が知るか」 またも紛れ込んでしまった夢の世界。驚いたのは、矢車にしても同じだった。「お前の夢に、引っ張リ込まれたのか」「兄貴が勝手に俺の夢の中、入っ...全文を読む

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