ダブル★アクション

ダブル★アクション(4)

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「なんだ、そのダサいのは!?」

 変身後の俺を目にして、剣=サソードが驚いたように言う。
 俺もサソードを初めて見た時そう思ったんだが、そのサソードに言われるようではおしまいだ。

 あいにく、変身した俺はアトラクションショーの着ぐるみみたいに視界が悪くて、自分の姿が把握できなかった。鏡でもなければ、面はもちろん分からない。
 俺はザビーではなく、訳の分からないバッタのゼクターで何らかの変身をしたというのは理解した。

「……今、誰か俺を笑ったか?」

 不用意な剣の一言が、矢車さんの逆鱗に触れたらしい。ワームをそっちのけで、「俺」=バッタ型のライダーは、サソードに向かっていく。

『矢車さん、ダメだって!  敵はワームだよ!』

 剣は雇い主であり、スポンサーだ。必死に止める俺の声も、しかし矢車さんには届いていない。

「面白い。相手になってやる」

 剣もヤイバーを構えた。
 いきなり戦い出したライダー二人に、残ったワームはここぞとばかりに逃げを打つ。

「まったく……、どうしようもない奴らだ」

 呆れたように呟くと、ひとりワームを追う天道=カブト。さすが、本編の主人公だけある。

『矢車さんってば! いい加減に……』

 言いかけて、俺はギョッとした。「俺」は足のアンカージャッキを作動して、キックを放とうとしている。もしやこれは、必殺技の体勢じゃなかろうか。いくらなんでも、剣相手にそこまでするのはマズイ。

『ちょ……、ストップストップ!』

 なんとか体の自由を取り戻そうとしたが、完全に矢車さんに支配されてしまっている。俺の制止の願いも空しく、バッタライダーはサソードに必殺キックを決めた。

 砂塵を巻きあげて地に倒れ伏すサソードに、俺の頭はパニック状態。
 俺が剣を倒したと知れたら、あのじいやはきっと怒髪天に違いない。今まで支払ったバイト代を返せなんて迫られたり、治療費を請求されたら、どうしよう。

 それ以前に、ZECTにばれたら、まず確実にクビだ。

「……やるな。だが、まだまだ」

 驚いたことにサソードは立ち上がった。おぼっちゃまのくせに、意外と根性がある。
 剣エライ、 と俺はこの時ばかりはエールを送った。

 けれど、サソードの様子が妙だった。苦しそうな呻き声を上げて、いったん変身を解除したかと思うと、なんとその直後、剣はライダーからサソリのワームに変わってしまっていた。
 こういうものを、超展開というのだろう。

「お前……ワームだったのか」

 矢車さん=バッタライダーも呆然としている。
 重大かつ深刻な、思いがけない剣の正体。それをこんなバカげた状況で明るみに出していいのかと、俺はめまいを覚えた。
 せめてもの救いは、天道がこの場にいなかったことかもしれない。

 バッタライダーもサソリワームも、両者互いに睨み合い、息詰まる攻防が続いている。
 今の矢車さんは、イっちゃってるアブナイ人だ。一体、この人はいくつ別の人格を持っているのだろう。

「誰が、イっちゃってるアブナイ人だ」

 俺の心の声が聞こえたのか、矢車さんは不機嫌そうな声を出す。

『ここは引こうよ! 剣と戦うのはマズイよ』
「なぜだ?」
『なぜ、って……』

 矢車さんの説得を試みる俺は、剣がバイトの雇用主だからという本音は言えない。ここは、いかにもヒーローらしいもっともな理由をつける必要がある。

『……剣はライダーなんだ! ライダーが欠けたら、マスクド・ライダーシステムに支障をきたす。ZECTにとっても人類にとっても、大きな痛手だ』
「別に、ZECTがどうなろうが俺の知ったことじゃないがな」

 投げやり口調の矢車さんだったが、この台詞は効いたらしい。よくこんな口からでまかせを思いついたものだと、俺は自分を褒めてやりたかった。

「ちっ、今回だけはお前の顔を立ててやる」

 そう言い残して、ふっと矢車さんの気配がなくなる。俺の意識の奥に入ったようだ。
 体が俺自身に明け渡されると同時に、ベルトからゼクターが離れた。ピョンピョンと跳びはねて、巣(?)に戻っていくバッタのゼクター。一件落着、と思いきや、背後から鬼気迫る殺気が漂う。
 剣はまだワームのままだった。しかも、どうやら剣自身の自我はないときてる。

「あのー……剣くん。ここは穏便に……」

 ああ。なんで、俺だけがこんな目に――。





 命が助かっただけ、マシだったのかもしれない。
 筋肉痛に加え、ワームの剣にボコボコにされた体は、もう指一本動かすことさえできなかった。倒れた俺の頭上を、ブンブン蜂が飛び回っている。

「……お前、逃げたろ」

 じろりと睨みつけてやると、蜂、もといザビーゼクターは、「違う、違う」と動きで必死に訴えた。バッタのゼクターに邪魔をされ、来れなかったのだ、と。

「いっつも調子いいんだよな、お前……」

 こんな風にゼクターと会話しながら、すべり台にもたれかかっている俺は、傍から見たら、きっとかなり怪しい。
 しばらくそうしていたが、誰も助けに来てくれる様子がないと悟り、痛む体を起こした。

「ねえ、バイク出してくれない? 矢車さん」
『甘えるな』

 にべもない一言に、まだ、やさぐれた矢車さんのままだと知る。スーツ姿の矢車さんは優しそうだったのに。
 体を代わって、痛みを分かち合ってくれる優しい心遣いなど、到底望めそうにない。

(結局、何しに来たんだ、俺……)

 タダ働きの上にこんなボロボロになるなんて、割が合わなすぎる。

「どうせ、俺なんて・・・」

 やさぐれ矢車さんに影響されたダウナー思考で、俺は泣く泣く家路についた。
 そもそも免許を持っていない俺は、無免許運転に加え、単車を児童公園内に放置したとして、その後罰金を請求されるというとどめをさされたことを、付け加えておく。



※影山がヒドい扱いに・・・。スミマセン、この話はもうノリだけで書いてます(^^ゞ
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