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ダブル★アクション

ダブル★アクション(5)

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 俺の怪我は思ったより深刻で。冗談みたいだが、そのまま入院ということになった。
 たまりまくった有給をここぞとばかりに消化できるので、それはそれで良かったかもしれない。

 剣が話さずにいてくれた、というより、ワーム化した剣は何も覚えていなかったようで、俺のバイトの件はZECTにバレずに済んだ。それどころか、欠勤してなおワームと戦うほど正義感に篤いと思われ、知らないうちに俺の株は急上昇。まさに、『棚からぼたもち』というやつ。

『言ったろ。お前の願いを叶えてやるって』

 病室のベッドで気分よくくつろいでいるところへ、俺の内から声が掛けられた。
 穏やかなこの雰囲気は、おそらくパーフェクトハーモニーの矢車さんだろう。

 矢車さんは、いくつものパラレルワールドを渡り歩いたせいで、それぞれの世界の人格を微妙に引きずっているらしい。
 分かった限りで、人格は三人分。
 ひとりは、スーツ姿で人当たりが良いパーフェクトハーモニー。もうひとりは、マントを羽織った腹黒い策士。最後は、おかしなバッタゼクターを使うやさぐれ。

 本来の矢車さんがどの性格なのか、困ったことに本人も覚えがないという。
 元の世界に戻ったとき、マズイことになるんじゃないかと心配になるけど、それよりもまず俺は俺自身の心配をしなくちゃならない。

「いつまで俺の中にいる気だよ。早く自分の世界に帰れば?」
『それができるなら、とっくにそうしてる』
「だからって、なんで俺のとこへ」
『俺はお前の強い願いに引き込まれて、ここへ呼び寄せられたんだ』

 要するに、戻りたくても戻れない、戻り方不明の現状。
 まるで、俺が諸悪の根源みたいな言い方をされ、思わずムッと眉を寄せる。

「俺は関係ないからね! 第一、俺の願いなんて、これと言って……」
『ないことはない、だろ?』

 矢車さんは優しげに問う。ずっとこの人格でいてくれるとありがたいのだが。

「望みっていうほどのものじゃないよ。あえて言えば、出世して給料アップして、その資金を元に株でも買って儲けて、ビジネスを興して海外進出して、ビバリーヒルズに豪邸を建てて、左うちわな生活を送ることぐらいだし」

 つましい願望を俺がいっきにぶちまけると、その後に微妙な沈黙が流れた。
 きっと、あまりにもささいな俺の望みに呆れているに違いない。

(大きな夢ってのを、俺も持ってみたいよ)

 つまらない自分の人生に嫌気がさしてしまう。
 そこへ、また果物の盛り籠、ではなく、見舞い客が訪れた。

「影山さん、具合どうですか?」

 ひょいとドアから顔をのぞかせたのは、同僚の加賀美。さすが、親が警視総監だけあって、マスクメロンが入ったLサイズの盛り籠は太っ腹だ。一緒にやって来た天道は、やはり手ぶらだった。

「たいしたことない。すぐ復帰できるさ」

 マスクメロンを凝視しつつ、俺はうさんくさい笑みを浮かべる。
 あと一週間は有給を使い倒す予定ではあるものの、そこまで加賀美に言う必要はない。

「お前、なぜそんなに大怪我をしているんだ。あの後、ワームはいなくなったはずだ。そこまでサソードとやり合ったのか?」

 俺の様子を一瞥して、天道がまた余計なことを蒸し返す。
 さすがに、剣がワームだったなどと打ち明けることはできないのに。

「え!? 天道、お前もその場にいたのか?」

 頼むから、食いついてこないでくれ、加賀美。

「いや、その。あれから野球の硬球が飛んで来るわ、ハンマー投げのハンマーに当たるわ、あげくに自転車に轢かれるわ、と散々な目に遭って……」

 どこかのヒーロー番組の主役みたいな運の悪さを切々と語る俺。我ながら苦しい言い訳だと思いながらも、単純、いや純粋な加賀美は信じてくれたようだ。

「そりゃ大変でしたね。しっかり治してくださいよ、戻ってくるの待ってますから!」

 なんていい奴だろうか。ありがとう、マスクメロン。
 天道はそれ以上追及してこなかったが、去り際に俺に振り向いて一言残していく。

「おばあちゃんは言っていた。『禁断の果実は禁断ゆえに甘い』のだと」

 どうとでも解釈できるというか、どう解釈していいか分からない謎の天道語録をひとつ増やして、天道は去っていった。
 待ってくれよ天道、などと言いながら、加賀美も病室を出て行く。
 俺はほっと息をついて、再びベッドにゴロリと横になった。

 すると今度は、窓の方からコツコツという音。見ると、ザビーゼクターが「入れてくれ」と外から窓ガラスを叩いている。
 その隣で、落ちないように必死に窓枠にしがみついている緑色の物体に、俺は目を見張った。

「バッタゼクター!?」

 ザビーと並んで病室の中を窺っているのは、紛れもなく、やさぐれ矢車さんのところに跳んできたあのゼクター。

『ホッパーゼクターだ』
「へ?」

 唐突に訂正を入れる矢車さんに、俺はマヌケな声を上げた。
 やさぐれ矢車さんはザビーゼクターを嫌いなようで、あのバッタのゼクター、もといホッパーゼクターを使って、キックホッパーとやらに変身する。まあ、体は俺だけど。

 それにしても、いい感じにダラダラしていた俺の平和な日常は、一体どこへ消えてしまったのだろう。

 人格変異するヘンな人に取り憑かれたせいで、たまっていた有給は使え、マスクメロンは胃に収まった。悪いことばかりではないにしても、にわかに慌しくなった状況に、俺の体も心も追い付いていかない。

(もう、どうとでもなれだ)

 とりあえず今はゆっくりさせてくれと願いつつ、俺はふて寝を決め込んで毛布にくるまった。

 
 END


※とりあえず第一部(?)完です。
しょーもない話に、お付き合いありがとうございました(^^ゞ
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~ Comment ~

>きっぽう様 

「ダブルアクション」、少しでも気に入っていただけたようで感謝感激です。
ギャグは書いてて楽しいんだけど、スベるとキツイので(^^; 第二部も、笑っていただけるようがんばります。 
中身については「だが、期待するな・・・」かも(苦笑)。
コメント、ありがとうございました。

>めぐみ様 

わ~、影山にお願いしてもらえるなんて(^o^)/
影山にお願いされたら、矢車さんでなくても断れませんね(笑)。
第二部は、構想を練っているところです(いえ、そんなたいしたもんじゃないですが・・・)。
コメント、ありがとうございました。


 

第一部完、おつかれさまですm(__)m
ダブルアクションは始まった当初からその設定の素敵さ、ギャグ満載さに読みながらテンションを高くしていました。nextの文字をみるたび、えー!次どうなるのさ!!早く読みたい!と心の中で叫んでいました。
第二部がある……と期待してもよろしいのでしょうか。もしそうなら楽しみにしていますv
だが期待はするな……と、どなたかの声が聞こえてきそうですが(ぇ)

 

『第2部が読みたいです!』by影山。自分も楽しみにしてます。プリーズ!
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