ザビー・アディクト

ザビー・アディクト(1)

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 初めてそれを目にした時、俺は妙な胸騒ぎを覚えた。
 美しいが、どこか禍々しい――そんな感じがした。
 けれど、相棒はその黄金色の輝きに、ひと目で魅入られたようだった。

「キレイだな……」

 ぽつりと漏らしたあの頃から、俺たちがこうなることは決まっていたのかもしれない。





 カブトに次ぐ第二のライダーの最有力候補に挙がっていたのは、俺と日下部の二人。
 俺たちの実力は拮抗していたし、シャドウを率いるにふさわしい統率力も申し分ないと言われていた。
 だが、俺たちはどちらも第二のライダー『ザビー』を敬遠していた。おそらく、本能的に。

 ライダーになる人物を決めるのは、ZECTの幹部ではない。ゼクターが、資格者を選ぶ。俺たちに選択権はなかった。

 ザビーゼクターに選ばれるのは、どちらか。
 ZECT、特にシャドウ隊員たちの話題といえば、それだ。中には俺たちを賭けのネタにする連中まで出てくる始末。

「俺は、ちゃんと矢車さんに賭けましたからね」

 当時部下だった影山は、そんな事を言って俺を苦笑させていた。

「お前まで参加してるのか」
「だって、結果なんて分かってるじゃないですか」

 信頼を込めて見つめてくる目に、俺はますます苦笑する羽目になる。

 俺と日下部はザビーを巡るライバルとして火花を散らしているかのように周りは捉えていたが、実際は違う。
 俺たちは、良き友人だった。

 ZECTに反抗的な日下部を、お歴々がよく思っていないのは、誰もが知っていた。
 そのために、ザビーの資格者にはなり得ない、というのが大方の意見らしい。

「少しは控えろよ。それじゃあ、ZECTに居づらくなるだけだろ」

 ZECTの不正や矛盾を指摘する日下部に、俺はよく忠告した。
 そのたびに、日下部は言うのだ。

「矢車。俺は、自分が正しいと思ったことをやりたいんだ」

 それは、真っ直ぐ過ぎる信念。

「熱血? 体育会系? 流行らないぞ、今は」
「ほっとけ」

 冗談めかして俺がパンチを入れると、日下部は明るく笑って拳を受け止めた。
 それが、最後となった俺たちの日常の会話。

 皆の予想を裏切り、ザビーゼクターは日下部を資格者に選んだ。
 日下部の言動におかしなところが現われ始めたのは、その時期からだった。

 傍目にも分かる程にやつれた顔。精神的に病んでいる人間の表情だ。
 理由を聞いても、日下部は何も答えない。
 今思えば、あれは俺に宛てた日下部の精一杯のメッセージだったのだろう。

 その日の日下部は、特に異常で。普段らしからぬ暴力的な言葉や態度を取る日下部の肩を、俺は強く掴んだ。

「どうしたんだ? 最近、お前変だぞ。何があった?」

 誤魔化しを許さずに問い詰める。
 最初はかたくなに口を閉ざしていた日下部だったが、俺が根気強く尋ねると、やがて不安げに目を泳がせ始めた。何かに怯えているかのように。
 そして、ようやく重い口を開いた。

「矢車、ザビーに気をつけろ……」
「え?」

 残念ながら、その時の俺は、日下部の言葉を理解する充分な判断材料を持ち合わせてはいなかった。



※「カブト」DVDの内山さんのインタビューを見て書きたくなりました(笑)。
ザビーのリクエストも頂いてるので、今回はザビーの不思議話で。『想が瞬を~』と一部リンクしてます。
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