ダブル★アクション

新ダブル★アクション(4)

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vol.5 怒りの大根


 一方、変身を解いた「俺」は、左手を顎の下に持っていき、何か考える仕草をしている。

「あの女、やはりおかしい」
『そりゃあ……確かにヘンだよ』

 矢車さんの指摘に俺は大きく頷く。
 「間違って覚えられている番組名」上位3位にランクイン確実という昭和の番組タイトルを正確に知ってるなんて、明らかに普通じゃない。
 20代前半に見えたけれど、実際はかなり歳だったり、隠れオタクだったりするのかもしれない。

「ワームかもしれないぞ……」
『え!?』

 思いのほか深刻なことを言われて焦る俺。

「……その姿はなんだ。新しいライダーなのか!? それに、麗奈さんに闇が見えるとはどういうことだ!」

 もはや丁寧語もすっ飛ばし、風間が詰め寄ってくる。ぐいと襟元を引っ張られた俺は息が詰まっても、矢車さんはそんな表情、微塵も見せない。
 無言で風間の手を払いのけると、「俺」はギャラリーたちのどよめきの中を歩き去った。

 後ろで、スーパーの店長が風間に怒鳴り声を上げている。
 店内を破壊した補償の問題は、風間に押し付ける形になったようだ。元凶のワームは、とっくに姿をくらましてるし。

 許してくれ。あとで、ZECTに、匿名で請求書を送っといてやるから。

 吹きすさぶ風を受けて、俺のマントがはためく。
 矢車さんは、鬱陶しげにマントとスーツの上着を脱ぎ捨て、さらに「洋服の●山」で買ったワイシャツの右袖を、肩口からビリッと破り取ってしまった。

『な、なんて事するんだよ!』
「邪魔だからな」

 泣きそうな気持ちで、俺はむき出しになった右腕を呆然と見た。矢車さんに悪びれる様子はない。
 2枚しかない洗い替えのワイシャツはまだ洗濯機の中だから、明日までに縫い直さなければならない。今夜は、夜なべになるだろう。

 結局、夕食の材料も買えず仕舞い。悲惨な俺の日常は、やっぱり今日も顕在だった。
 名付けるなら、『摩天楼ゼクトはバラ色に』なんて感じの、俺のポップなサクセスストーリーになるはずじゃなかったのか。
 なぜ、こうなった。

 まるで、この状況は、平成版『おしん』。
 加えて、家にある食材が大根1本となれば、当然今夜のメニューはこれに決定。

「大根飯か、たまにはいいかもな」

 うそぶく矢車さんを、俺は今日ほど恨んだことはなかったよ。



vol.6 影山瞬の憂ウツ


 例のスーパーでの一件で、謎のホッパーゼクターの存在が、ZECT幹部たちの耳に入ったらしい。

 あの緑色のライダーは何だ、と尋問されたが、俺は「まったく記憶にありません」と、不正を追及された政治家のように苦しい言い訳を押し通した。「すべて秘書がやったことです」と言えば、もっと完璧だったかもしれない。

 知らぬ存ぜぬでこのまま済むとは思えないけど、俺の身に起こってることは説明しようがない。

 さらに、三島さんの態度が変わったような気がする。
 ネチネチと嫌味を言わなくなり、なんとなく俺と距離を置いているようだ。俺にとってはありがたいことだけど。

 シャドウ隊員たちも、俺の人格が入れ変わることを気味悪がって近寄って来ない。以前と変わらず接してくれるのは、田所班ぐらいなものだった。

「影山さん、カエルのライダーになったっていうじゃないですか。ほんとに覚えてないんですか?」

 加賀美の何気ない一言に、俺の中の矢車さんがピクリと反応する。

「カエルって……。誰がそんなこと言ったんだよ」
「え? 天道が」

 しれっと答える加賀美。
 確かに、ゼクターは緑色だしピョンピョン跳んでくるのだが。妙に納得してしまう俺とは反対に、矢車さんの怒りがフツフツと沸いてくるのが分かった。

「なんか、すげーダサいライダーだ、って天道が言ってました。まさか、そんなのがZECTの新ライダーなわけないですよね」

 ハハハ、と爽やかに加賀美は笑う。

『……どけ、影山』

 どす黒いオ-ラをまとって、矢車さんの声が頭に響く。
 悪気はないんだから、と俺はヒヤヒヤしがら矢車さんを押し留めた。

「お前はいいよなぁ、加賀美。戦いの神ガタック、なんて名前がもらえて……。どうせ俺なんて、ただのキックホッパーだよ」
『なにバラしてんだよ、矢車さん!』

 その俺の台詞が、いつの間にか二重カッコになっていた。

「なんか声、変ですよ、影山さん?」
「へ、ああ。ちょっと風邪引いて……」

 大丈夫ですか、と加賀美は俺の顔を覗き込んでくる。すかさず俺は矢車さんに取って代わり、ゴホゴホと咳をしてみせる。

「ちゃんと栄養取ってないからですよ。……そうだ、これ!」
 そう言って加賀美が差し出したのは、『ステーキのど●』のタダ券。

「ぜひ、行って来てください。たまにはおいしい物食べなきゃ」

 にっこりと笑う加賀美が、その時俺には天使に見えた。生簀の料理を食べた時のような(TV29話参照)、天使の輪と羽を付けて。

「食事の時間には、天使が降りてくる」

 いきなり加賀美の背後から、皮肉っぽい声がした。天道だ。
 どこにでも現われるのが特撮主人公の鉄則とはいえ、間の悪いときに出てきてくれる。

「……で、キックホッパーというのは何だ?」

 ストレートに聞いてくる天道に、俺は頭を抱えた。
 どうせコメディだからと油断もしていられない。
 俺はどうやってこの場を切り抜けたらいいんだろう、教えて!goo。
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~ Comment ~

>かわむライダー様 

いつもありがとうございます。
最近書いててもギャグのノリが悪くて、プチスランプなんですが(^^ゞ
少しでも面白いと思っていただけたら、報われますv

こんばんは 

なんだかツボにハマります(o^-')b

マメにみてますがやっぱり面白いですo(^o^)o
  • #56 かわむライダー 
  • URL 
  • 2007.05/22 01:23 
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