ダブル★アクション

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vol.9 かにすき大好き


 剣からの電話を取り次いだのが田所さん、というのが、俺にとっては不運だった。
 剣が困ってるようだから早く行ってやれ、と田所さんは俺を促す。まさか俺がZECTに内緒でワーム退治のバイトをしてるなんて、田所さんは夢にも思っちゃいない。

 この人にバレるのはマズイ。
 背中に大きく『任侠』と筆文字がプリントされたシャツを田所さんがスーツの下に着ているのを目撃してしまった時は、さすがに恐かった。
 それカッコイイですね、なんて加賀美は誉めまくっていたが。

 仕方なく俺は、剣を救うべくバイクに飛び乗った。ちょうど夕暮れ時。頃合いもぴったり。

『きれいなパーフェクトハーモニーが奏でられそうだよ』

 それだけ言って、さっさと意識の奥に引っ込む俺。
 あとはよろしく、矢車さん。答えは聞いてない。

 俺と入れ替わり、矢車さんは「俺」の体を支配する。「久々だな」と言いながら、伸びをして。





 剣が指定した場所は、地元の小さな公園だった。前回とは別の場所だが、やたらと公園が好きな奴だ。

 メールが来てから小一時間は経ってるから、もしかしたらもう決着が付いてるかも、付いてたらいいなぁ、と淡い期待を胸に到着してみると。
 何を手こずっているのか。サソードは、白いカニのようなワームと戦闘の真っ最中。

 その少し離れたところで、子供たちがスナック菓子を食べながら、「がんばれ、ライダー!」「負けるな、ライダー!」と、口々に応援している。
 微笑ましさに、俺は心が和んだ。が、和んでる場合じゃない。

「きみたち、ほら、もう家に帰らないとお母さんに叱られるぞ。夕食の時間だろ」

 矢車さんは子供たちの背を押すようにして、戦闘から遠ざける。

「えー、もっと見てたいのに」
「今度お兄ちゃんが、別のライダーを見せてやるから」
「わー、本当?」
「ああ、あれよりもっとずっとカッコいいライダーだ。だから、今日はもう帰るんだぞ?」

 すさまじく緊張感ゼロの会話を、矢車さんは子供らと続けた。ひとり必死に戦っている剣には聞かせられない台詞だ。

 夕焼け空の下、またね、と手を振りながら家路に向かう子供たちに、笑顔で手を振り返す「俺」。
 そのノスタルジックな情景のすぐ後ろでは、サソードとワームの激しい戦闘が繰り広げられていた。

「カ・ゲーヤマ! 来たなら加勢してくれ!」

 どうも、長音符(ー)を入れる場所が、以前と違う気がする。名前を正確に呼ぶのは、人付き合いの最低限のマナーだってのに。

 子供たちがいなくなるのを見届けると、剣は変身を解除し、ヤイバーだけでワームと渡り合い始めた。
 さっきまでは、子供たちへのファンサービス。素顔に戻ったのは、もしや女性ファンへのファンサービスなのか。
 だが、惜しい。これは文章だけの話なので、お前のイケメンも、ビジュアルで描写されることはない。

「何遊んでる、剣。いっきに片を付けろ!」

 ザビーブレスを装着しつつ、矢車さんは呆れたように声をかける。
 それほど強そうなワームに思えないのだが。むしろ肩の辺りなんて、妙に美味しそうで。

 その時の俺の頭の中は、『か●将軍』の大きなカニの看板のイメージでいっぱいになっていた。
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