ザビー・アディクト

ザビー・アディクト(4)

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 血に染まった遺体は、ザビーブレスが保管されているZECT開発部で発見された。

 死んだのは、若い研究員の男。一昨日から無断欠勤していて、自宅や携帯に電話をしても連絡がつかなかったという。
 鋭利な刃物で体を数ヶ所刺され、それが致命傷になったらしい。

 表向きは研究中の事故として報告され、警察の介入は免れた。ZECTトップが警視総監というのは、こんな時、都合がいい。

 奇妙な事件だったが、さらに不思議だったのは、ケースに納められたザビーブレスに大量の血がこびりついていたことだ。
 血液鑑定から、その血は死んだ男のものだと明らかになり、ZECT内部は騒然とした。

 場所と状況から考えて、部外者が犯人にはなり得ない。
 けれど、ザビーブレスに付着していた血は、何を意味するのか。

 ざわついて落ち着きのないシャドウ隊員を、俺は一堂に集めた。
 まだ正式に隊長に任命されたわけではなかったが、今ある権限だけでも事足りる。

「噂に振り回されるな。毅然としていろ。これは殺人事件だ。犯人は必ず挙がる。だから、お前たちはいつも通り任務に当たればいい」

 ゆっくりと隊員一人一人の顔を見回して告げる。
 その中には、心配げな影山の姿もあった。

「でも、ザビーブレスが血だらけだった、って。僕たち、今度からそのザビーの下に就くんですよね。そんなの……」

 影山よりも年下の隊員、シャドウ最年少の日比野が声を上ずらせた。
 その才能を抜擢されたとはいえ、日比野はまだ10代。オカルト的な噂話に、不安を隠しきれない。

 ザビーの呪いは、自分たちにも及ぶのでは――。そんな日比野の不安は、たちまちシャドウ隊中に伝染した。

「そうだ! 俺たちも危ないかもしれないじゃないか!」
「矢車さん、ザビーになんかならないでください!」

 隊員たちが異様に興奮し出し、ほとんどパニックのように場が沸き立つ。

「待て、違う! これは呪いなんかじゃない」

 落ち着かせようと試みる俺の声は、次第に大きくなる皆の悲鳴にかき消された。

「イヤだ、呪いで死ぬなんて!」
「ザビーの資格者のせいだ、俺らがこんな目に遭うのは」

 ヒートアップしていく隊員たちの挙動。
 俺は集団心理の異常さを目の当たりにし、言葉が継げなくなった。この場から離れた方がいい、と直感が警鐘を鳴らす。

「矢車さん、逃げましょう!」

 ぐいと俺の腕を引く影山と、俺目掛けて何かが飛んできたのは、ほぼ同時で。
 咄嗟に避けた俺の横をすり抜け、ゼクトルーパーのメットがガツンと重い音をたてて背後の壁に当たった。

 それを合図に、空気が動いた。

 俺と影山は夢中で走り出す。
 まるで錯乱したかのように、メットを壁にぶつけ続ける隊員たち。マシンガンブレードを手にして、俺たちを追おうとする者まで出てくる始末。

 一体、何がどうなったのか。頭の中を整理する暇もない。
 狂気の集団と化したシャドウから、俺と影山はただ逃げることしかできなかった。
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