ザビー・アディクト

ザビー・アディクト(6)

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 シャドウ隊員たちの異変は、俺と影山、そして田所さんと岬さんのみが知るところとして、ZECTへの報告は見送ることにした。
 公表するには、不明な点が多過ぎる。

「おはよーっす、矢車さん」

 重い足取りでZECTの執務室に向かう俺に、気軽にかけられた声。余りにもいつも通りの光景に、俺は一瞬言葉を失った。

「あ、ああ。おはよう」

 それは、確かに、昨日俺にマシンガンブレードを向けた部下の一人だ。

「どうしたんすか?」
「……いや」

 まったく覚えていない様子で、部下は首をかしげる。

「おはようございます。……あれ、どうかしました?」

 あれほど怯えていたのが嘘のように、日比野も屈託なく挨拶をしてくる。

「矢車さん? 大丈夫ですか」

 青ざめて口元に手をやる俺を、彼らは不思議そうに見ていた。

「悪い。気にするな、なんでもないから」

 無理矢理笑顔を作って、俺は二人から離れた。
 頭が混乱する。あれはすべて、夢だったのだろうか。
 洗面所の水道の蛇口をひねり、俺は流れ出る水の下に思い切り頭を突っ込んだ。

「ふ……っ」

 髪からポタポタと落ちる水滴が、スーツに丸いシミを作っていく。気持ちをすっきりさせるには、これが一番いい。

「はい。拭かないと、服、濡れちゃいますよ」
「……影山」
「なんか、今日はみんな元通りですね」

 ふいに、横からタオルが差し出される。この部下もまた、いつもの笑顔を俺に向けていた。
 他の部下たちと異なり、影山のみは昨日の記憶を留めていることに、俺は安堵した。





 “ザビーに関わった者は、不幸に見舞われる”
 それを、最初に言い出したのは一体誰だろう。

「誰かが、ザビーブレスを持ち出してるのは間違いない。だが分からないのは、なぜそいつがザビーに変身できるのか、だ」

 俺は壁にもたれかかり、腕を組む。考える時の癖だ。

「資格者の日下部さんがザビーに殺られたってことは、他の奴がザビーになったってことですよね」

 俺のマネをして、影山も腕を組み「うーん」と唸る。

「田所さんは、犯人知ってるんじゃないですか?」
「それはないな。もしそうなら、あの時俺たちに、『注意しろ』ぐらいは言ってくれただろう」

 少なくともその程度には、田所さんは信用が置ける。

「じゃあ、どうします?」
「おびき出す」

 俺は率直に考えを伝えた。

「ザビーの次の資格者として狙われるのは、俺だろう。それを利用すればいい」
「囮になる……ってことですか」
「そうなるな」

 あっさり言い切る俺に、影山は唇をかんだ。何かを考えている顔で。

「なら、俺が囮になります。俺を、ザビーの資格者に立候補させてください」

 もちろん犯人をおびき出すまでですけど、と影山は付け加える。

「バカ言うな。危険過ぎる」
「だって、もし矢車さんがやられたら、誰が犯人捕まえるんですか」

 珍しくまじめな顔で、指摘された。それでも部下を身代わりにするなど、断じて認められない。

「俺がやられるわけ、ないだろう」
「『パーフェクトハーモニー』は、スタンドプレイ厳禁、でしたよね」

 どうあっても、影山は引き下がらない。

「犯人が襲ってきた時、俺じゃ矢車さんを助けられませんよ。でも……」

 『矢車さんなら、俺を助けてくれるでしょ?』
 影山の笑顔は、全幅の信頼を寄せて、そう語っていた。
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