ザビー・アディクト

ザビー・アディクト(7)

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 上司特権を発動させ、何度も説得を試みるも、影山は自分が囮になると、頑として言い張る。

「相手はザビーだ。お前を助けられないかもしれないぞ」

 脅しの意味も込めて、最悪の状況を想定する。けれど、影山は言うのだ。

「んー、そうですね。その時は自分でなんとかします」
「それこそ……」

 無理だ、と続けようとすると。

「戦うなんて、無謀なことはしません。俺は、猛ダッシュで逃げますから」

 逃げ足は速いんで心配しないでください、と影山は笑った。冗談なのか本気なのか、判断に困ってしまう。

 確かに影山の言うことも、一理ある。
 犯人がやってきたとき、俺が自由に動ける立ち位置にいたほうがいい。
 しかし問題は、万が一失敗した場合だ。影山が、日下部や殺された研究員のように串刺しにされる危険は、皆無とはいえない。

「信用するか、お前の逃げ足を」

 仕方なく、俺は溜息をつく。
 部下が俺を信頼してくれるのなら、信頼には信頼で応じるよりあるまい。





 ザビーの呪いの名のもとに起こった数々の事件は、ザビーに絡むZECT内の不祥事だ。

 最初に死んだザビーゼクターの開発者は、ザビーを持ち逃げしようとした、いう話も聞く。調べたところ、ZECT幹部をゆすっていた前科が明らかになった。

『ザビーの黄金色に、皆、取り込まれるんだ』

 資格者に選ばれた頃、好奇と嫉妬の眼差しを向けられた日下部が、そんな言葉をもらした。

『欲の皮が張った連中には、これが黄金に見えるのかもしれん』
『まさか。ザビーゼクターが、ヒヒイロノカネでできてることぐらい、ZECTの連中は誰だって知ってる』

 俺が呆れて言うと、日下部は困ったように眉を寄せた。

『……ああ、矢車。その通りだな』

 あの時、日下部は自分が狙われていると感じていたのだろうか。





 影山をザビーの資格者に仕立て上げるには、三島さんに事情を説明する必要があった。
 何者かがザビーを使った形跡は認めたものの、犯人を特定するに至らないZECT側。今回の作戦は、ZECTにとっても利になるはず。

 三島さんから、次のザビーの資格者は影山に決まった、と偽の通達をしてもらう。
 集中訓練という名目で、影山をZECTの仮眠室に寝泊りするようにさせ、網を張る。もちろん仮眠室には、隠しカメラとマイクを設置して。

「手振ってるぞ、影山のやつ」

 ZECT指令車の中でモニターを見ていた田所さんが、呆れ顔で俺を振り返った。
 夜間の監視には、一人では厳しく、人手がいる。自ら協力を申し出てくれた田所さんの心遣いが、ありがたかった。

「……あのバカ」

 こちらの声は、向こう側には届いていない。
「矢車さん、聞こえてる?」と、思いきりカメラ目線の影山に、俺は頭を抱えたくなる。
 時刻が二十三時半を回っても、まだZECT内施設のあちこちで明かりが灯っていた。

「犯人は来ると思うか?」
「ええ。今夜じゃないとしても」

 犯人はザビーに執着している。ザビーを手に入れたがっているように、俺には思われた。
 ならば、必ず現れる。邪魔者を消すために。

 昼間はシャドウの中で行動している為、敵が襲ってくる可能性は低い。
 問題は夜。俺と田所さんは、六時間交代で監視に当たることにしていた。

 影山の見張りを始めて、三夜目。
 深夜一時を少し過ぎた頃、モニターを見ていた田所さんが、車中で仮眠をとる俺の体を揺すった。

「起きろ、矢車。動いたぞ!」
「来たんですか?」

 浅い眠りから意識を呼び戻した俺は、モニターに駆け寄る。
 通路に設置した第一のモニターに映し出されたのは、紛れもなくザビーだ。犯人はゼクターを使い、既に変身を遂げている。

「田所さん、警報を!」
「分かった」

 田所さんに応援の要請を頼み、俺は指令車から飛び降りた。
 影山に知らせるべく、合図の携帯を鳴らしながら走る。

(逃げろ、影山……!)

 祈るような気持ちで、俺は懐から取り出したゼクトガンを握り締めた。
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