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報復のクロニクル

報復のクロニクル(1)

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“八月二十日
『赤い靴』を補うものとして、私は二匹の飛蝗バッタを作った”




 キィ、と軋んだ音を立て、外から重い扉が開けられると、中にいた人物は眩しそうに手を目の上にかざした。

「……眩しい。早く、入れ」

 雑多な機器の残骸の中にある簡易ベッドだけが、生活感をわずかに感じさせる、殺風景な空間。
 窓もなく、床は冷たいコンクリートで、部屋と言うよりむしろ倉庫に近い。

 一瞬差し込んだ外の光が、彼を照らす。
 ボロボロの身なりで床にうずくまるように座っていた彼の姿は、扉が閉められると同時に再び闇の中に隠れた。
 訪れた暗闇に、彼はほっと安堵の息をもらす。

「明かりもつけないのかね」

 扉の入口で立ち止まり、ZECT総帥・加賀美陸は、奥に潜む人物に呼びかけた。
 明るいところからいきなり暗がりに入ったため、視界が利かない。下手に歩くと、つまずいてしまいそうだった。

「つけなくても見えるんでね」

 うずくまったまま、彼は薄く笑う。

「運が良かったな。あと二歩歩いてたら、ワイヤーに首を切られてたぜ」

 物騒な物言いに、陸は眉を顰めた。
 少し慣れてきた目を凝らすと、一本の銀色の線が空間を切るように水平に張られている。

「こんなものを仕掛けてるのかい」
「油断できないからな。自分の身は、自分で守らないと」

 非難めいた陸の言葉に、ふんと鼻を鳴らす。
 仮にも、かつて彼が属していた組織のトップに対して、適切とは言い難い態度だが、陸のほうも、別段咎めることはしない。

「用心深いのもいいが、そろそろ時期が来そうだよ」

 陸の言葉に、彼はようやく腰を上げる。

「やっとか……」

 彼は、手元に置いていたホッパーゼクターを強く握り締めた。
 すべてを失った今、これが自分に与えられた唯一のものだ。

「何をすればいい? ZECTのワームを一掃するのか」
「いや、まだ時期尚早だ」

 事を急く彼の言葉に、陸は苦笑する。

「まずは、君の相棒を探そうじゃないか」
「……面倒な」

 チッと舌打ちすると、長いコートの裾をばさりと翻し、彼は戸口に向かった。そして、陸を押しのけ、外へ出る。

(眩しい……)

 目を細めて、彼はゆっくりと周囲を見回した。
 渋谷廃墟――エリアXから離れたこの場所は、ZECTからも一般人からも隔離された無法地帯だった。ここに身を潜めて、どのくらい経つだろう。

「相棒、か」

 ふと脳裏にかつての部下の姿が浮かび、彼はそれを振り払おうと、長めの前髪をかき上げた。
 その下から現われた虚ろな眼差しには、以前の柔和な面影は微塵もない。

 シャドウ隊長であり、ザビーであった頃とはまるで別人のように、矢車想は重い足取りで新たな一歩を踏み出した。



※『紅の箱舟』のその後・・・です。『紅の箱舟』を読んでからお読みくださったほうがよいです(^^ゞ
あの話が余りにも救いがなかったので、その救済も込めてリベンジです。
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