ダブル★アクション

新ダブル★アクション(13)

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vol.15 うちの矢車知りませんか?


 結局、何度聞いても、矢車さんはエリアXでの一件を話してくれなかった。
 その上、俺の体を離れて別行動をとることも多くなった。ひとりで何かを探っているのは間違いない。
 ともかく、矢車さんがそういうつもりなら、俺は俺のやり方で、矢車さんとZECTの秘密を暴いてやる。

「矢車さん、これ一緒に撮ろうよ!」

 隙を見て、矢車さんを強引にゲーセンのプリクラ機の中に連れ込む。
 正確には、矢車さんは俺の中にいるわけだから、俺ひとりで入ったことになるのだが。

 俺が必死に頼むと、矢車さんは「今回だけだぞ」と言いながら、姿を現してくれた。
 きっちりスーツを着こなして、砂の姿じゃなかったら、きっとものすごくモテたに違いない綺麗な顔立ち。
 宙に浮いてる矢車さんの脚が、なんだか心霊写真みたいに映りそうだけど、この際気にしない。

「はい、チーズ」

 照れくさそうに笑う矢車さんを、アングルを変えて何枚か激写。
 砂であることが分からないように修正をかけたら、イケメンアイドル写真みたいな出来上がりになった。
 これは、高値で売れるかもしれない。

「ありがと、矢車さん。記念になった」

 にこりと笑う俺の魂胆を、パーフェクトハーモニーの矢車さんは知る由もなかったろう。

 翌日、俺はプリクラ写真を手に、聞き込みを開始した。

「この人、知りませんか?」
「うーん、見たことある気もするねぇ。誰だっけ」

 やたら陽気な豆腐屋のオヤジは、何か知ってるような微妙な受け答えだ。
 おそらく、この男はシロ。

 この世界に矢車さんは存在しないというけれど、こうして地道に聞いて回れば、あるいは何か手がかりがつかめるのではないかと思った。
 あえてプリクラにしたのは、矢車さんに疑われないようにするためと、矢車さんの砂の体を誤魔化すため。決して、俺が貧乏で、デジカメもカメラ付き携帯も持っていなかったからではない。

「この人、知らないか?」

 ZECT内でも、誰彼となく聞いてみる。

「韓流スターみたいですね」
 という加賀美は、まあ普通の反応か。

「上の方に、霊の脚が見えるぞ」

 触れてほしくないところをわざわざ突付く、天道のイケズっぷりは相変わらず。
 結局、誰も矢車さんを知る者はなく、俺の計画も無駄だったのかと諦めた頃に、救いの神が現われた。

「これは……!?」

 なぜか、田所さんが狼狽してプリクラを見つめる。その手が小刻みに震えていたりするもんだから、俺は正直焦った。

「いつ、どこで、これを撮ったんだ!?」
「えっと、昨日、駅前にできたゲーセンで……」

 そんなに、田所さんはこのプリクラフレームが気に入ったんだろうか。

「色々面白いフレームありましたよ。キラキラのやつとか」
「そうじゃない! こいつは……」

 言いかけて、田所さんはハッと口をつぐんだ。

「田所さん?」
「……いや、何でもない」

 妙にうろたえ、明らかに様子がおかしい。

「余りに好みのフレームだったんでな。つい興奮してしまっただけだ」

 ハハハと、田所さんは誤魔化し笑いをする。
 何か隠しているのは明白なものの、フレームに関しては、ただの言い訳でもないような信憑性があるからコワイ。
 しかし、どうやら田所さんは、矢車さんに見覚えがあるらしいということがはっきりした。

「田所さん、この人のこと知ってるんですか?」
「……いや、知らん」

 田所さんはどうしても誤魔化したいらしく、頑として矢車さんを知らないと言い張る。

「この人、実は俺の遠い親戚なんです。名前は、矢車想」
『え!?』

 一瞬のうちに、俺の体は矢車さんに乗っ取られた。
 矢車さんが俺の体を離れてるのを確認して聞き込みをしてたのに、いつの間に戻ってきたのか。

「矢車……」

その名前にピクリと反応した田所さんは、心なしか青ざめている。

「俺の友人の、再従兄弟なんです。昔、ZECTにいたみたいで」

 友人の再従兄弟なんて、親戚どころか、明らかに他人。しかし、それさえも気付かないほど、田所さんはうろたえていた。
 そんな田所さんを楽しそうに眺める矢車さんは、紛れもなく策士だ。

「昨日偶然会って、いろいろ話してたんです。矢車さん、田所さんによろしく、って言ってましたよ」

 よくまあ、次々デタラメをスラスラ言えるもんだと感心する。天性の才能ってやつだろう。

『さすが、矢車さん! 腹黒さでは、誰もかなわないよね』
「黙ってろ」

 矢車さんは、俺の賛辞になぜかムッとした。せっかく心から誉めたのに。
 俺たちの些細な微笑ましいやり取りの間も、田所さんの方は顔面蒼白で。

「矢車が……まさか、生きて……」

 呻くように漏らした言葉に、俺はギョッとする。ちょっと、待って。どういう意味だ、それ。
 慌てる俺とは反対に、矢車さんは妙に冷めた様子で続けた。

「……やっぱり、矢車は殺されたんですね。ZECTに」
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