ダブル★アクション

新ダブル★アクション(14)

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vol.16 そして俺は途方に暮れる


『矢車は、ZECTに殺されたんですね』

 その言葉が、あれ以来頭からずっと離れない。

 田所さんは、何も答えなかった。
 ズーンという効果音が付いていそうな黒い縦線入りの鬱オーラを背負っていたため、聞けそうな雰囲気じゃなかったというのもあるが、ちょうどそこへ「田所さん、何してんですか?」などと気楽な調子で、加賀美が割って入ってきたので。

 はぁ、と俺は何度目かの溜息をついた。

『溜息ばかりだな。幸せが逃げて行くぞ』

 矢車さんが慰めてくれる。この優しさは、パーフェクトハーモニー。

「悩んでるんだよ。だって、ZECTが人殺しなんて……。俺、どうしたら」
『悩む必要はないだろ。もう既にこの世界で起こってしまったことなんだし。ZECTは俺の存在が邪魔だったから、消した。それだけだ』

 何でもないように言われ、俺のほうがむきになってしまう。

「矢車さんは何とも思わないの?」
『もともと、ここは俺の世界じゃないからな』

 なんとも、あっけらかんとした答え。けれど、言われてみれば、そうかもしれない。別世界の自分が殺されたとしても、実際の自分の世界でどうなるわけでもないんだから。

『だが、思った以上にZECTはヤバい。あまり深入りするな。お前も気を付けろよ』

 ああ、そうかと、その時気づく。
 俺を巻き込まないように、俺の身を案じて、矢車さんは今まで自分だけで行動してたのだ。

「よしっ!」

 俺はポンと膝を叩いて、勢いよく立ち上がった。
 ZECTの陰謀をつぶし、矢車さんの仇討ちをする。そして、あわよくば、それに乗じて出世街道を突き進む。
 南の島でバカンスを楽しんで、クルーザーやフェラーリを乗り回す俺の横には素敵な美女がいて。そんな最高の人生のシナリオが、今俺の手中にあった。

 俺は気合を入れるべく、例のごとく自販機でオ●Cを買ってグイと飲む。

『最初に言っておく。それは炭酸飲料だと知ってたか? 実は、医薬品じゃないんだ』
「ええっ!?」

 矢車さんは「最初に」というけれど、ここ数週間、俺がずっと飲み続けてたの知ってるくせに、なんで今さら。
 この余計な一言で、俺が今まで信じてきた栄養ドリンクの神話はガラガラと音を立てて崩壊した。

 どっと疲れを感じて、俺はすごすごと部屋に戻る。
 南の島もクルーザーもフェラーリも一瞬で遠のいた、悲しい出来事だった。



vol.17 白昼の探偵物語


 矢車さん殺人事件の真相は、結局迷宮入り。けど、いつか突き止めてやる。じっちゃんの名に賭けて。
 いや、言ってみただけ。俺のじっちゃんは誰か、なんて聞かないでくれるとありがたい。

 この世界にも、矢車さんの存在はあった。
 俺がZECTに入隊する前に、矢車さんは失踪。ZECTからは除隊となっていた。何があったのかは、謎のまま。

 そして、もうひとつ謎がある。風間と一緒にいた女、間宮麗奈だ。
 彼女はワームで、風間がそれを知りながら庇っている。麗奈を探ろうと言い出した矢車さんが、何を考えているのかは分からない。

「別に、怪しいとこはないんじゃない? 普通に生活してるみたいだし」

 ここ数日、歌のレッスンに通う麗奈の後を、俺はこっそり付け回してる。
 マスクをして黒いサングラスをかけた姿は、自分で言うのもなんだけど、変質者そのもの。

 こんなナリをしてるほうが、よっぽど怪しい。
 当然ながら、警官に職務質問されそうになったことも何度かあり、そのたびに、ZECTの隊員証を見せて事なきを得ていた。

「尾行するにしたって、こんな格好じゃ余計目立つよ」
『こっちの面は割れてるからな。変装の意味もある』

 せめて衣装の改善を求める俺の要求も、矢車さんは却下。
 これで、変装のつもりなのか。矢車さんのセンスは、時々不思議だ。なんせ、片袖ファッションにこだわりを持つ人だから。

 ワームといえば、実は剣の奴もワームだと判明したはずだが、その件は、すっかりフェードアウトしていた。
 男を追いかけるより、美女を追いかけるほうがいいというのは、まあ男の性だけど。

『くだらない想像をするな。あの女を見張ってるのは、あの女が接触を持ってる男が誰か、知るためだ』
「男……?」
『覚えてないのか』

 矢車さんに呆れるように言われ、俺は必死で記憶をたどるものの、最近物忘れが激しくて。この若さで、アルツハイマーかもしれない。
 男、男、と俺はぶつぶつと呟いてみた。

『彼女の前に男が現れてから異変が起きた、と風間が言ってただろう』

 連呼するなとばかりに、矢車さんは顔をしかめる。

「もしかして、これ浮気調査?」

 俺が尋ねても、矢車さんは何も答えてくれない。依頼人については守秘義務があるという、アレか。
 興信所とか探偵事務所でよくある浮気調査は、結構いい報酬がもらえると聞く。とすれば、雇い主は風間だろう。

 変質者でもストーカーでもなく、俺は探偵なんだと思うことにした。そのほうが、かっこいい。
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