報復のクロニクル

報復のクロニクル(4)

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“八月二十八日
運命の歯車は、かみ合わないまま それでも動き出す”




 うっかり二度寝をしてしまい、遅刻寸前に影山はZECT本部の守衛の前を駆け抜けた。

「おはようございます!」

 IDカードを示しながら、挨拶もそこそこに走って行こうとする。

「今日は機嫌がいいねぇ、影山さん。夕べ、彼女でも泊まってたの?」
「やめてくださいよ! 俺、彼女なんていませんて」

 冗談めかして言う守衛に、影山は思わずムキになる。
 急がないと遅刻だよ、と付け加えられ、影山は腕時計を見て足を速めた。分かってるなら、呼び止めないでほしいのだが。

 昨夜、矢車が訪れたことは、本当に現実だったのか。
 いつのまにか眠ってしまった影山には、判断がつかない。いつベッドに入ったのかも、定かではなかった。

「遅くなって、すみません!」

 三島が待つ執務室に駆け込んだ影山は、深々と目の前の男に頭を下げた。朝一で来るよう言われていた日に限って、遅れてしまうなんて。
 しかし、三島は影山に気を留めた様子もなく、愛用のサプリメントを飲んだ後、軽く体を動かして伸びをする。

「最近、少々運動不足だな」
「……はぁ」

 三島の言葉に、影山はあいまいな相槌をうつ。無表情な上司の意図を測りかねた。
 そんな事を言うために、呼び出したのではないだろうに。

「実は、或るルートから新しいライダーを手に入れた。ZECTのお歴々は、私がこれを手にしているのを知らない」
「え?」
「実験的に、私がそのライダーになろうと思う。そこでだ、シャドウ及びザビーは、しばらく私の指揮下に入ってもらう」

 話がまだ、よく見えない。

「或るルート……って、ZECTが知らないって、どういうことなんですか?」
「お前が知る必要はない」

 詰め寄る影山に、三島は短く返した。

「見ているがいい」

 三島は、バッタ型の風変わりなゼクターを影山の前に示す。そのゼクターを、影山はどこかで目にした気がした。

 カチャリと軽く音を響かせ、ゼクターが三島のベルトに収まる。
 装甲スーツが上司の体を覆う様を、影山は息を詰めて見守った。

(同じだ……!)

 昨夜、矢車が変身して見せたライダーとまったく同じ形状。違うのは、矢車のような緑色ではなく、灰色だという程度。

「パンチホッパーだ。マスクド・フォームもないらしい」

 ライダーシステムそのものを馬鹿にしているともとれる口ぶりで、三島は告げた。

 どうして、矢車と同じゼクターを三島が持っているのか。しかも、ZECTが預かり知らぬところで。
 様々な疑惑が、影山の中で大きく膨らんでいく。

「どうかしたか」
「あ、いえ!」

 唐突に問われ、影山は焦った。すぐさまかぶりを振って、己の馬鹿げた考えを意識の隅へ追いやる。
 昨夜の件は、夢にすぎないのだ。

「パンチホッパー、ですね。分かりました」

 ZECTで生きていくためには、三島に従順であり続けなければならない。
 それが、エリアXの事件以来、影山が身をもって知った、紛れもない現実だった。
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