ダブル★アクション

新ダブル★アクション(16)

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vol.19 い・け・な・いワームマジック


 風間と麗奈が向かった先は、風間の趣味らしいムーディーなバー。
 俺自身の財布の中身が不安ではあるものの、しばらくカップ麺でしのげば、給料日まではなんとかもつだろう。

 麗奈を優雅にエスコートする風間を目で追いながら、二人に気づかれないよう、俺は店の隅の目立たない場所に席を取った。

 あろうことか、風間の奴、ドンペリなんて頼んでいる。
 何を注文したらいいか、あまりこういう場所に来たことがない俺はよく分からない。

『これならいいんじゃないか。トマトジュースだ』
「ブラッディ・マリーってやつ?」

 最近野菜不足だし、ここは矢車さんの助言通り、トマトジュースでヘルシーにいこう。

 落ち着いた音楽と、心地良いソファと、おいしいトマトジュース。こういった雰囲気でくつろぐのも悪くない。
 時間が経つにつれ、なんだか頭がホワホワしてきた。

『チャンスだ。女が離れた』
「へ?」

 麗奈が化粧室に立ったらしい。矢車さんが俺に呼びかけるけれど、顔がほてって、足元がふらつく。

『めんどくさい。……変わるぞ』

 すぐさま、俺の体を乗っ取る矢車さん。もしかして俺を酔わせたのは、計画的犯行だったとか。
 矢車さんと入れ替わった「俺」は、席を立って麗奈の後を追った。
 風間の方は、座ったまま、こちらには気づいていないようだ。

 化粧室へ通じる薄暗い一角は、ちょうど死角になっているため、店のホールからは見えない。彼女が化粧室から出てくるところを、「俺」は待ち伏せする。

「あ、あなたは……」
「黙ってろ」

 こちらに気づいて一瞬眉を寄せた麗奈を、「俺」は有無を言わさず壁際に追い詰めて。自らの腕で囲むように、両手を壁に付いた。

 麗奈は怯えた目で「俺」を見る。
 先程挨拶した俺と、矢車さんに代わった時の「俺」は、明らかに雰囲気が違う。いきなりこんな事をされたら、普通は怖いだろう。

「あんたに、聞きたいことがあるんだ」

 低い声で囁くように言う「俺」は、どこかのチンピラみたいなノリで。ヤバそうな展開に俺はハラハラしていた。
 しかし、やさぐれた矢車さんは容赦ない。

「あんたをワームだと自覚させた男は、誰だ?」
「わ、私には何のことか……」
「誤魔化すつもり? なら、あんたの体に聞こうかな」

 こんなワイルドな台詞、間違ってもZECT隊員や小さいお子さんは聞かないで欲しい。

『頼むから穏便に済ましてよ』
「返答次第だな」

 俺は矢車さんに頼んでみるものの、すっかり悪人ヅラの矢車さんを止められそうにない。
 ほどよくアルコールが回ってきたところに暴れたら、悪酔いしてしまう。
 トマトジュースなんか飲むんじゃなかった、と俺は激しく後悔した。

「で、相手の男は誰?」

 なんだか、浮気相手を追及する旦那みたいになってきた矢車さん。

「名前は……知らないわ」
「どんな男だ?」

 これを修羅場というんだろうか。俺は不謹慎にもドキドキわくわくしながら状況を見守った。

「彼は……眼鏡をかけてて、無表情で、セクハラ上司みたいな……」
「ふーん、そう」

 麗奈の言葉に、「俺」は満足げな笑みを見せる。
 眼鏡に、セクハラ上司――どこかで覚えがあるような、ないような。

『心当たりあるの、矢車さん?』
「お前はないのか?」

 尋ねたら、反対に聞き返されてしまった。

「まあいい。答えてくれて、ありがとう。これはお礼だ」

 「俺」は壁から手を離すと、ポケットを探って綺麗なネックレスを取り出した。それを、麗奈の首にかけてやる。

「え?」

 いきなりの事に、彼女は思考が付いていかない。
 俺もビックリした。まさに、ラブストーリーは突然に。急展開に頭がパニくってしまい、おかげでいっきに酔いが醒めた。

『どういうつもりだよ!?』
「いいから見てろ。あのネックレスは、俺がエリアXで見つけたものだ」

小声で矢車さんが言う。

「ワーム化促進ネックレス。ZECTの一部で秘密裡に開発されたらしい」
『ワーム化、って……』

 俺はさらに衝撃を受けた。
 矢車さんの説明を解釈すれば、それはつまり。“これを付ければ、君もワームだ! 変身ネックレス!” なんてキャッチコピーで、バン●イから発売されたりする、アレ。

 あるいは、「ワーム化ネックレスー!」と独特の言い回しで、例のネズミ型ロボットがポケットから出しそうな、22世紀のひみつ道具、みたいなアレ。

『でも、どうやってネックレス盗んできたのさ。矢車さん、俺の中から出たら、砂の体なのに』

 砂の手で、物をつかめたのか。ドラ●えもんのマジックハンド並みに不思議だ。

「そんなことより、見てみろよ」

 うまくはぐらかされた気もするが、それより何より目の前の光景に驚いた。
 苦しげに身をよじる麗奈が、見る間にワームに変わっていくのだから。
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