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A Little Happy Day

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 俺は、幸せなんて望んじゃいない。 
 どうせ望んでも、俺のところには、やって来やしない。





 1月。新しい年の始まりの月。
 一年でこの月が、矢車は嫌いだった。

 以前はそんなことはなかった。
 かつて自分が組織の隊長を務めていた頃は、部下たちに得意の料理をふるまってやりながら、新しい年を祝った。
 おせち料理、七草がゆ、鏡開き。腕をふるう機会は頻繁にあった。部下たちとの楽しい交流も。

 あの頃とは何もかも違いすぎる。昔自分が持っていたものは、今は何も残っていない。
 ふとそんなことを思ってしまった自分を笑い、矢車は頭を振って余計な考えを追い払った。

 なんとなく、足は神社に向いていた。
 正月の間はあんなににぎわっていた境内も、ひと月過ぎれば閑散としている。
 祭りは、一時だけ。
 それが終われば、人々は誰も顧みなくなる。

「俺と同じだな……」

 疲れたような笑みを浮かべ、呟く。
 賽銭箱の前の石段に、矢車は腰をおろした。

「兄貴!」

 裏手から聞きなれた声がした。
 振り返ると、木々の間から影山がひょっこり顔を覗かせている。

「相棒か。何してんだ、こんなところで」
「それはこっちの台詞だよ。何、兄貴も賽銭のおこぼれもらいに来たの?」

 あっけらかんと答える影山に、矢車はため息をついた。
 自分と同じ地獄を歩いていながら、この弟分は妙なところで前向きだ。

「まあいいや。それより、手出して、兄貴」
「え?」

 突然の申し出にいぶかしむ矢車を気にも留めず、影山は矢車の右手を取ると、その掌に何かを握らせた。

「イノシシの、キーホルダー……」

 自分の手の中にあるものを認識し、げんなりと矢車はその言葉をしぼり出した。
 まったく相棒は、こういった類のものが好きらしい。
 いつだったかも、ふくろうのお守りを大事に持っていたことがあった。

「おめでとう、兄貴」

 無邪気な笑顔で影山が言う。

「もう1月も終わりだろう。今更……」

 新年も賽銭もない。
 俺たち地獄の住人が、何を祝うというんだ。
 矢車はそう言ってやろうとしたが、それを遮るように影山が先を続けた。

「今日、誕生日でしょ。兄貴の」

 思いがけない影山の言葉に声が詰まった。

「ハッピーニューイヤーは今更でも、ハッピーバースデーならいいよね」

 そんな風に笑顔を向ける影山から、矢車はふいと顔をそらせた。

「……行くぞ」

 右手の中にあるものを、大事にコートのポケットにしまい込んで。

 誰もが「おめでとう」を口にした1月。
 そんな世間の幸せのおこぼれを、矢車はもらった気がした。


 END
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