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楽園依存症候群

楽園依存症候群(5)

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 妙に、救急車のサイレンがうるさい。

 続いてパトカーが数台、自分たちの歩く細い道をすり抜けて行くのを見ながら、矢車は怪訝な顔をした。それらの行く先は、今しがた出てきたばかりの図書館ではないか。
 立ち止まって、背後を眺める矢車たちの横を、今度は一台の自転車が走っていく。

「あれ、どうしたんですか。こんなとこで?」

 二人に気づき、自転車に乗った制服の警察官が急ブレーキをかけた。加賀美だ。

「お前こそ、図書館で勉強か?」

 無関心を装い、矢車はカマをかけてみる。

「それどこじゃないですよ。今あそこで事件が……っと」

(……図星か)

 モゴモゴと言葉を濁す加賀美を見て確信した。

「俺たちは何も聞かなかったことにしてやる。さっさと行け」

 警察が一般人に軽々しく情報を漏らすことは、禁じられている。加賀美に聞くのは酷だろう。
 すみません、どうも、と謝罪か感謝か分からない挨拶をし、慌てふためいて加賀美が去って行った後、矢車は再び影山の背を押した。

「俺たちには関係ない。帰るぞ」
「きっと、あの子が……、お母さんを殺したんだ」

 真っ青な顔で、影山がぽつりと呟いた。

「バカ言うな。殺したのどうだの」

 矢車はわざと軽い調子で返してみるが、手に持った資料に記された文字が嫌でも目に入る。
 先ほど図書館でコピーした新聞記事の見出しは、『親殺し』。
 天道は、ノルウェーと同じ事件が起きるのではないか、と懸念していた。ワーム絡みなら、影山にも影響が及ぶ危険がある。
 あるいは、既に及んでいるのかもしれない。

「どうして、お前はあの子が殺ったなんて思うんだ」

 探るような視線で、矢車は傍らの相棒に問い掛ける。

「分かるだけだよ」
「どうして」
「兄貴には、分からない」

 何かに耐えているのか、辛そうな表情で影山は目を伏せた。





 最近は毎夜、訪れるようになった影山の悪夢。
 夢の中で、かつての上司であった三島は影山の不安を煽る。そして、言うのだ。

「裏切られる前に、見捨てられる前に、お前の手で永遠を掴め」
「どうやって……?」

 どんなに寂しくても、どんなに孤独でも、永遠に誰かを自分の側に留め置く方法など、ありはしない。
 いつまでも自分の側にいてくれる保証は、どこにもない。

 見捨てられ、再び一人きりになった自分を想像すると、体の血がすべて凍ったかのごとく冷たい絶望に身が震える。
 影山は、子供のようにうずくまり、己の肩をかき抱いた。

「これを使えばいい」

 そう言って、三島が差し出したのは、銀色に輝くナイフだった――。





 影山が矢車の前から消えたのは、図書館での事件があった翌日のこと。
 常宿にしているカプセルホテルにコートだけを残していなくなり、夕方、チェックインの時間になっても戻って来ない。

 影山の行きそうな場所を隈なく探しても、手がかりはなかった。
 矢車はホテルのフロントで目にした新聞の一面を思い起こし、苦し気に眉間に皺を寄せる。

 新聞には、見覚えのある図書館の外観写真が大きく載っていた。
『子供が母親をナイフで刺傷』という見出しとともに、影山が口にした通りの内容が報じられている。
 一点違うとすれば、それは殺人ではなく、殺人未遂。
 惨事に気づいた職員が、すぐさま救急車を呼んだおかげで、母親は命を取りとめた。

(どこへ行った、相棒)

 落ち着かない気持ちを持て余し、導かれるように矢車の足は『ビストロ・ラ・サル』を目指していた。
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