ダブル★アクション

新ダブル★アクション(23)

 ←新ダブル★アクション(22) →楽園依存症候群(6)
vol.27 いつでもいっしょ


 なぜ、三島さ……、ではなく、グリとグラワームが、ここにいるんだろう。拘置所にいるんじゃなかったのか。
 最近の警察は当てにならない、とブツブツ文句を言いかけた俺の耳に、矢車さんの穏やかな声が響いた。

『……大丈夫だ。手当てが早かったからな、命に別状はない』

 そこで、俺ははっと我に返る。確か、係長室でドアを壊され、腹を切られて。

『あれ?』

 自分の体を見回して、俺は首をひねる。どうも実体ではないようだ。意識体、というかそんな感じ。
 足元のおぼつかない何もない空間に、俺と矢車さんは空中浮遊している。矢車さんの体も、いつもの砂ではなく、なんだか半透明なシースルー。

『お前の体は、今病院』

 優しい声音で、矢車さんが言う。

 三島さんが変化したワームは、あの後カブトとガタックに倒されたという。ZECT内の警備をかいくぐっての凶行。
 報復したい気持ちも分からないではないが、俺を狙うのは、どう考えたって筋違いだろう。決めのライダーキックにも混ぜてもらえなかったのに。
 まさか、俺が一番弱そうに見えた、なんていう理由じゃないと思いたい。

 ワームが拘置所を脱走する際、警備員も何人かやられたらしい。またも、何の関係もない善良で平凡なモブキャラが巻き添えになってしまった。

『……影山、さっき話していたこと覚えてるか?』
『さっき?』

 唐突に矢車さんに問われる。

『今日の夕食なら、俺の第一希望は麻婆豆腐だけど』
『そうじゃない。俺が元の世界に戻る方法だ』

 静かな、でも誤魔化しを許さない、強い口調。

『俺が別世界に飛べるのは、宿主の意識がない時だ。たとえば、今のように』

 聞きたくない、知りたくない。けれど。

『……今なら、元の世界に帰れるってこと?』
『お前の意識が戻る前に、行かなきゃならない。だから、ここでお別れだ』

 お別れ――。無情な単語が、俺の心に重くのしかかる。

 俺の体は、どんどん薄く透けてきていて。そろそろ実体の方が、目覚めようとしてるのかもしれない。
 決心する時だと悟り、俺はギュッと拳を握る。

『……矢車さんの元の世界に “俺” は、いる?』
『ああ、俺の大事な部下だ』
『そっか』

 こぼれそうになる涙を止めて、頭上を仰いだ。矢車さんは戻らなきゃいけない。
 きっと、その世界の俺が、矢車さんの帰りを待っている。

『ありがとう、矢車さん。今まで、楽しかった』
『こちらこそ』

 なんとか笑顔を作る俺に、矢車さんも少しおどけた調子で返す。

 俺の世界では、矢車さんは二年前にこの世を去っている。本当なら、俺たちは互いに知らない者同士。
 出会えるはずのなかった俺たちが、出会うことができた。これ以上、望むことはない。

『これからも一緒だよね、俺たち』
『ああ』

 矢車さんがふわりと微笑んだ。どちらも、さよならは言わない。
 それが、俺が矢車さんと交わした最後の言葉だった。





「……つぅっ!」

 目覚めた俺は、起き上がろうとした途端、腹部に激痛を感じて呻いた。

「まだ寝てなさい。傷が開くわ」

 そんな俺を、岬さんが冷静にベッドに押さえつける。
 矢車さんの教えてくれた通り、俺の体は病院のベッドの上にあった。変わらない日常。

「俺……、どのくらい寝てました?」
「半日ってとこね。出血がひどかったから心配したわよ。だいたい、なんでザビーに変身しなかったの? 変身できなくても、誰か人を呼ぶくらいできたでしょうに」

 延々と続きそうな岬さんの小言を、俺はぼんやり聞いていた。

「……あ、ご、ごめんなさい。言い過ぎたかしら」
「え?」

 急に岬さんの態度が柔らかくなったので、どうしたのかと思ったら。何気なく自分の顔に手をやって、気づいた。

  ――涙。

(俺、泣いてる……?)

「ち、違います! これは、その……嬉し泣き、で」

 咄嗟にそう言ったものの、ちょっと苦しい言い訳だったかもしれない。でも、半分は本当。

「嬉しいんです、俺」

 出会えるはずのない人と出会えた奇跡。
 別れが悲しいんじゃなく、出会えたことが、この上もなく嬉しいから。

(元の世界に、ちゃんと戻れたかな……)

 また別のパラレルワールドに迷い込んでないといいけれど。
 今頃、俺と同じように、矢車さんは病院のベッドで目を覚ましているんだろうか。その傍で、向こうの「俺」が大喜びしている。そんな光景が、見えた気がした。

 どこにいても、どんなときも。
 俺の心の中に、矢車さんはいる。

 これからも、ずっと一緒に。


 END



※ようやく完結です。ギャグは書いてて楽しかった(^^)
ちょっと切なめの終わり方になっちゃいましたが、いかがだったでしょう。
長い間お付き合い頂き、ありがとうございました。
関連記事



【新ダブル★アクション(22)】へ  【楽園依存症候群(6)】へ

~ Comment ~

コメントありがとうございますv 

>きっぽう様

わー、きっぽうさん、お久しぶりです(^^)
ずっと読んでいてくださったんですね。こちらこそ、本当にありがとうございます。
『ダブルアクション』のラストは、もうひとつ別のハッピーエンドも考えてたのですが、書いてるうちに、こうなってしまいました(^^;
私も矢車さんと影山の幸せを願って、これからも頑張って書いていきますv

>磯野瞳様

初めましてv
書き込み、ありがとうございます。他のお話も読んでくださったようで、恐縮です(^^;
磯野さんのサイトも訪問させていただきました。
愛のあふれる素敵な小説とイラストに癒されました。イラスト・・・書ける方がうらやましいなぁ。
私もまたお伺いします(^^)

はじめまして 

最近、いまさら矢影が好きで好きで困っているお母さん(笑)です。
ダブルアクション、お疲れ様です!最後切ないー。でもそんな兄弟が大好きで、もうどれも理想的な地獄兄弟です!
夢のようです!!
兄弟のつぶやきも楽しくてめっちゃお気に入りです。
これからも地獄愛をよろしく・・お願いします!応援してます!

 

久々にコメント書かせていただきます。ダブルアクション、お疲れ様でした。ギャグ満載のお話、毎回楽しく読んでいました。更新されるのも楽しみで……。どのようにラストを迎えるのかすごく気になっていたのですが、せつなくも希望あるハッピーエンド(?)に感動しました。矢車さん、影山、二人の幸せを願ってます。
楽しいお話をありがとうございました。別のシリーズも、一話完結の話も毎回楽しく、ドキドキしながら読んでいます。これからも頑張ってくださいo(^o^)o
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【新ダブル★アクション(22)】へ
  • 【楽園依存症候群(6)】へ