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楽園依存症候群

楽園依存症候群(7)

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 タンクトップ姿の影山はふと体を見回し、薬を持ってくるのを忘れたことに気づいた。
 一日薬を飲まなければ、自身のワーム化が進むかもしれない。けれど、もうどうでもいい気もする。

(兄貴、心配してるかな……)

 何も言わずに出てきた影山を、矢車は探しているだろうか。

 夢の中で、三島が差し出したナイフを影山は受け取ってしまった。
 そのナイフは今、現実に自らの手の中にある。

「俺が、兄貴を殺すぐらいなら」

 銀色にきらめく冷たい刃先をもてあそびながら、影山はひとりごちる。
 脳裏に、白夜の世界に行こうとした、あの夜の港の情景が思い浮かんだ。

「あの時、死んでればよかったんだ」

 小さく呟き、暗闇の中で膝を抱えてうずくまった。





「意外と遅かったな。どこで寄り道してた」

 薄闇の中、ようやく現れた矢車を見咎め、天道は停めていたバイクから降りた。

 渋谷廃墟に入るゲートは、ここしかない。なぜかいるその男に眉を顰めつつ、矢車は無言で前を歩き去る。
 鉄製の門を開き、その先に足を踏み入れると、天道も続いてゲートを通り抜けた。

「ライダーベルトは持ってきたか」
「貴様には関係ない」

 天道の問いに、矢車はイエスでもノーでもない返事を返す。乾いた空気が、二人の間を流れた。

「来てくれとは言ってない」

 矢車の本心として、助力はありがたい。が、後から恩着せがましく言われるのは真っ平だった。

「おばあちゃんが言っていた。『一本の矢は折れても、二本の矢は折れない』と」
「おばあちゃんに言ってやれ。『場合によっては二本とも折れる』」
「一理あるな」

 飄々とした天道に、張り合うのも不毛だ、と矢車は溜息をついた。

 世界の終わりを思わせる光景が広がる渋谷廃墟。
 建物や設備は半壊、もしくは倒壊し、大きなコンクリートの塊があちこちに転がっている。
 隕石の落下は7年以上前にもかかわらず、この区域の復興は遅々として進まない。渋谷廃墟は、有刺鉄線で囲まれ、今なお人外の無法地帯のままだ。

「……ノルウェーのワームは、どうやって倒された?」

 コンクリートの欠片をブーツで踏み砕きながら、矢車は以前からくすぶっていた疑問を口にする。
 天道は極秘の研究機関の存在を掴んでいた。ならば、ノルウェーでのワーム戦闘についても調べ上げているだろう。

 ZECTはマスクド・ライダーシステムを有し、各国が独自に対ワームの技術開発を進めてきた。
 ワームの擬態がそこかしこに紛れ込んでいる世界情勢では、安易に情報を開示できない。各々が持つ技術について詳細は共有されなかった。
 ノルウェーにおいても、ワーム化抑制以前に、ワーム殲滅の直接的な手段が取られたに違いないが、それが何かは分からない。

「レミングを、知っているか」

 天道は少しの間を置いて語る。

「ノルウェーに生息するネズミだろう、集団自殺で有名な」

 訝しげな目を向け、矢車は話の先を促した。
 レミングは、固体数が増え過ぎると、種を存続させるため自ら海に身を投げる。そんな少々眉唾な逸話が一般に知られている。

「さすがに、お前だと話が早いな。加賀美なら、まずそこから説明してやらないといけない」

 口元を緩める天道に、矢車も同じことを思って苦笑する。
 影山相手では、やはり最初から話してやる必要があるだろうから。

「ノルウェーの最終兵器は、『レミングシステム』と呼ばれる」
「レミングシステム?」

 天道が発した言葉には、どこか不吉な響きがあった。

「ワームの自滅を誘発したのか……。だが、どうやって」
「音、だ」

 矢車に謎解きを挑むかのように、天道は一言だけ告げた。

 ホロシンク、ヘミシンク、バイノーラルビート――。
 脳に働きかける音響技術が、矢車の記憶に浮かび上がる。

 人間の意識は、特定の周波数の組合せによってコントロールできるという。
 川のせせらぎや雨音は、心を落ち着かせる。音の作用を増幅し応用すれば、精神状態の操作が可能。そう一部の研究者が主張するも、確立した技術ではない。

 まして意識を操るほど強力なものとなれば、もはや洗脳に近い。公に開発を許されるはずはなく、到底実用化に至らない。
 しかし、それはあくまで表では、という限定。

(ワームを操り自滅に追い込むことで、戦いを収束させた?)

 頭の中で散らばっていたパズルのピースを、矢車はひとつひとつ合わせていく。

 禁忌の技術がノルウェーで秘密裏に開発され、ワーム壊滅に使われたと仮定すれば。
 意識操作は、ワームのみならず、人間に及ぶとも考えられる。

「……親殺しも、その “音” のせいか」
「やはり、お前だと、話が早い」

 天道の言葉は、彼もまた同様の結論に辿り着いていることを示すものだった。



※矢車さんと天道のコンビは私的に珍しい・・・。最後は、いつもと同じような感じに落ち着きますので(^^;
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~ Comment ~

>磯野瞳様 

コメント、ありがとうございます(^^)

そ、そんな風に言っていただけるとは・・・もったいないお言葉です。
自分の書いたものは、実は自分では読み返せないんです。読み返すと、下手だなぁと恥ずかしくて・・・(--;
『白夜行』も読んでくださり、嬉しいですv
少しでも楽しんでいただけるよう、これからも精進致しますm(__)m

こんばんです。 

影たん!!兄貴が心配するからぁっ(´Д⊂グスン

すす、すみません。
お邪魔いたします磯野です。
もう文章は上手だし博識だしで、すっかり虜であります!!(>Д<)ゝ”

影たんの為なら天様ともコンビ組む兄貴が素敵です。
隊長に戻る兄貴も……すみませんここ数日読みあさってましたm(__)m
影たんに丁寧に説明してあげる兄貴を想像すると、
(*´∀`*)良いですなぁ…


あ、
ショッボイうち風呂にコメントありがとうございました。
影たんのお肉が好きなのですが書けなかった…です。
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