楽園依存症候群

楽園依存症候群(10)

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 影山の擬態を倒した後、他のワームは一体も現れなかった。
 侵入者を放置しているのは、罠か、あるいは構っている余裕がないかのどちらかだ。

「静かすぎる。ワームが集まっているはずなんだが」

 サルで加賀美から聞いたことを思い返し、天道は訝しんだ。

 渋谷廃墟で通信が始まるや、ワームが街から姿を消した。
 電波信号の発信源である渋谷廃墟に潜伏している可能性が高い、というのがZECT側の見解。

「ワームのパーティーでもあるのか。そりゃ楽しみだ」
「俺たちは招かれざる客だがな」

 軽口を叩いた後、天道は足を止め、通路の先を鋭く見つめる。
 矢車も同時に立ち止まると、コートのポケットに入れた影山の薬を指先で確認した。
 二人は息を殺し、頷き合う。

 開いたままのハッチの向こうには広間ほどの空間があり、幾つもの蠢く緑色の影が映っていた。





 渋谷隕石の落下地点に来てみれば、クレーターの底の地面にはぽっかりと空洞があった。
 間に合わなかった、と加賀美は唇をかむ。もう二人は、この奥に進んでしまったのだろう。

 加賀美はポケットから携帯を取り出すと、先程から連絡を取り合っている父親にリダイヤルした。
 あの話が本当なら、事態は最悪の方向に向かっている。

「あ、親父」

 二回のコールで出た父に、口早に告げる。

「天道たち、中に入ったみたいだ。俺も今から行く」
『よせ、新! もう時間がないんだぞ』

 携帯の向こう側から、怒鳴るような父の声。

「あと2時間弱……。まだ大丈夫だ」

 腕時計を確認しながら、穴の中を覗き込んだ。地下では、携帯の電波は届きそうにない。

「必ず戻るよ、天道たちと一緒に」

 それだけ言って、加賀美は携帯を切った。話している時間が惜しい。
 なんとしてでも、仲間たちと共に無事に戻ってくる。自分を奮い立たせ、加賀美は縦穴を降りて行った。





 正面には大きなメインパネルがあり、壁面に埋め込まれた計器類が、時折赤や緑の光を放っている。
 スペースシャトルのコクピットを思わせる場所に、無数のワームがひしめいていた。
 通路の陰に身を隠し、天道と矢車はそのおぞましい光景を眺める。

 目的の人物は、群れの中には見当たらない。
 もし影山が既にワーム体に変化していれば、この中で認識することはさすがに無理だ。
 ならば、向かうから出てきてもらうしかない。

「相棒、どこだ!」

 天道が止める間さえなく、矢車は群れの中に踊り出ていた。

「まったく、無茶しすぎだ」

 軽く舌打ちし、天道は再びゼクターを手に取りカブトへと変わった。
 生身の矢車を援護しつつ、天道はワームの一団を切り崩していく。掴みかかってくる緑色の腕を手刀でなぎ払い、背後を取ろうとするワームに蹴りを放つ。

 しかし倒しても倒しても、別のハッチからワームが次々現れる。あまりの数の多さに、天道は圧倒されていた。
 100、200、もしくはそれ以上。数十体ならカブトだけで抑えられるだろうが、数が違い過ぎる。

「くそ、キリがない」

 カブトと矢車の距離はあっという間に離されていく。
 ライダーベルトを持っていない矢車が、ワームとどこまで渡り合えるのか。
 歯噛みして、カブトは向かって来る敵を切り裂いた。

 尽きない戦闘に体力が削られる反面、高揚する戦いの意識。
 やがて天道は、全身の血が逆流するような感覚に襲われた。精神で制御できない体の高ぶり。その感覚は、以前にも覚えがある。

(まずい。これは――)

 天道の自我は、そこで途切れた。





「相棒、いい加減出てきたらどうだ!」

 どこにいるかも分からない影山に向けて、矢車は声を張り上げる。
 鍛えた筋力でワームを蹴りつけながら、相棒を呼びを求めた。

(やはり、使わずに済みそうにないな)

 肩で息をし、額の汗をコートの腕で拭う。溜息をこぼしてから、因縁のブレスを左手首に付けた。
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~ Comment ~

>磯野瞳様 

いや、もう田所さんゴメンナサイって感じで(^^;
というか、この話どう進んでいくのか我ながら不安です(苦笑)。
何おっしゃいます。磯野さんの影ちゃんの方が、断然カワイイではないですかv
「楽園」は大風呂敷広げちゃったので、どうしようかと悩んでおります(^^;

コメントありがとうございました!

 

めっちゃどきどきしながら読んでます!
通じ合っちゃってる兄貴と影たんがたまらないです!
子供たちがきょわいです、、

不協和音も楽しみにしてまーす!
田所さんほんといいですから!もうそんな人だった気がします!ZECTは張り紙べったべたに違いないです。
アンドロメダに爆笑w
可愛すぎる影たんをごちそうさまです!
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