スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←完全調和な不協和音(9) →楽園依存症候群(14)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



【完全調和な不協和音(9)】へ  【楽園依存症候群(14)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

楽園依存症候群

楽園依存症候群(13)

 ←完全調和な不協和音(9) →楽園依存症候群(14)
 さびしがりやの小さな男の子が、魔法使いに尋ねました。

「おとうさんとおかあさんは、ずっと、ぼくをあいしてくれる?」

 魔法使いは答えます。

「ずっと、永遠なんてありはしないよ。もし永遠を願うなら、時間を止めるしか、ないんだよ」





 あり得ない光景に、加賀美は目を疑った。

 ワームの集団をどうにかやり過ごし、衰弱した天道に肩を貸して追い掛けてきてみれば、矢車は床に伏し、影山が立ち尽くしている。
 床の血だまりと、影山の手の中の赤く染まったナイフから状況は見てとれるものの、どうしてそうなったか見当もつかない。
 その傍で、凄惨な有様を気にも留めず、子供たちが無邪気に遊んでいる。
 何もかもが尋常とは思えなかった。

 天道は加賀美の腕を外すと、ふらつく足取りで倒れている矢車の脈を診た。
 生きていることを確認し、加賀美を振り返る。

「加賀美、あのバカをなんとかしろ。俺は矢車を」
「天道! けど、お前だって」
「誰に言ってる。俺は、天の道を行く男だ」

 やせ我慢なのは一目瞭然。それでも残された時間は、あとわずかだ。

「お前らも行きたいなら、連れてってやるよ」

 天道たちのやり取りを目に映し、影山は屈託ない笑顔で誘う。
 いつもと変わらないその表情に、加賀美はむしろ戦慄を覚えた。

「影山さん、すみません!」

 一言謝罪し、加賀美は影山の鳩尾に拳を突き入れた。床に落ちたナイフを足で蹴飛ばし、倒れ込む影山をそのまま肩に担ぐ。
 天道は矢車の片腕を引き上げ、自らの肩に回した。薄く目を開ける矢車に、淡々と告げる。

「外に出るまでは、もつだろう、矢車」
「ふざけるな。……もっと、もつ」

 矢車の意識は、思ったよりしっかりしている。
 白いタンクトップは胸の辺りから赤く濡れているが、死に至る出血ではない。
 ZECTで訓練を積んだ矢車は、急所をかわす術を心得ている。刺されても、殺されるつもりは毛頭なかった。

「服、汚れるぞ」
「心配するな。クリーニング代は、後で請求してやる」

 矢車も天道も、立っているのがやっとであろう状態で、互いに弱みは見せない。
 似たところがある二人だ、と加賀美は思う。
 怪我人同士で肩を貸し合って、果たしてまともに歩けるか疑問とはいえ、加賀美は意識のない影山を背負っている。二人でなんとかしてもらうしかない。

「きみたちも早くここから逃げるんだ! 早く外へ!」

 異国の子供たちに、加賀美は何度も何度も出口を指差して見せた。
 たとえワームであろうと、年端もいかない子供を放っては行けない。

「逃げなきゃ、死んじまうぞ! いい子だから早く!」

 身振り手振りで必死に伝えるけれど、誰一人その場から動こうとしない。

『いいから、行って』

 加賀美の頭の中に声が響いた。声というより、直接脳に思考が入って来る。

『早く、行っちゃえ』
『あたしたちは、楽園へ行くの』

 それは、子供たちの拒絶。大人を排斥しようとする強い意思だった。
 残ることを選んだ子らに、もはや説得は無駄だと思い知る。

「急げ、加賀美」

 いつもより低音の天道の声音も、感情を押し殺しているようだ。

「あのクソ親父!」

 やり切れない思いの矛先をとりあえず父親に向け、加賀美は踵を返した。
 子供たちを置き去りにするしかない、自分の無力さを呪いながら。
関連記事



【完全調和な不協和音(9)】へ  【楽園依存症候群(14)】へ

~ Comment ~

コメントありがとうございますv 

>磯野瞳様

こちらにもコメントありがとうございます!
こちらでは、あくまでも優しい(?)兄貴で(笑)。
女子校リンチ・・・続きは「楽園」終わってからになっちゃいましたが(^^; いつも楽しい感想ありがとうございます。

>いた!様

わー、お久しぶりです(^^)
自然科学館・・・いいですねぇ。ウチの地元にも電気の科学館とかあるんですが、そういうの好きで結構よく行きますv あの電気の、面白いですよね。
しかし『愛の言霊』の公式の徳山さんは・・・カッコイイ!! でも相手が(自主規制)。
こちらこそ、書き込みありがとうございました!

 

お久しぶりです、いた!デス。ううっ切な~私も泣きそな気持ちを抱えて今日は自然科学館に行ってきました。まずLight Sculptures!愛の言霊公式のリンク頁で徳兄がやってたアレ。静電気に注意!って私は大丈夫でしたが、一緒に行ったやつがビリッと(笑)隕石展示で50センチ位の本物に触りまくり。対話型ロボットとの戯れ、対話中"おねいさんは外反母趾になりやすいヨ”ってオイ!最後にホログラムってすごい、リアルにそこにあるのに!触れないー!マーリンさんの本・別サイトのお陰で楽しい一日、アリガトです。

 

切ないれすよー(´Д⊂グスン
兄貴が、大好きです。
優しい目…たまらないです。あ、Sえろ兄貴も好きなくせに…

不協和音の女子校リンチで爆笑していたくせに!!
すみません、ロクなコメントできなくて(汗)
昨日読んで、何か泣きそうで何か言いたかったーです(´・ω・`)
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【完全調和な不協和音(9)】へ
  • 【楽園依存症候群(14)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。