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楽園依存症候群

楽園依存症候群(14)

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 三人は、無我夢中で通路を出口へ急いだ。
 一人は意識のない男を背負い、一人は極限まで疲弊し、一人は刺し傷を負って。
 あれ程集っていたワームたちはどこへ消えたのか、追って来ないどころか気配さえ感じない。

「ワームは、どうした」
「船内で、“レミングの時” を待ってるんだろ。きっともう、俺たちなんて眼中にない」

 尋ねる天道に、加賀美はそう答えた。

(船内……)

 矢車は、宇宙船の中のようだ、と言った天道の指摘を苦々しく思い返す。
 これまで見てきた限り、地下の内部構造は、十中八九宇宙船だ。

「大丈夫か」

 唐突な天道の問い掛けは、殊更息を荒げた矢車に向けられている。

「……問題ない」

 血の滲む右胸を、矢車はタンクトップの上から押さえた。
 一突きで、簡単に人は殺せない。確実に仕留めるには、ボディでなく首の頚動脈を狙う。
 ZECTにいた影山がそれを知らないはずはなく、あえて素人じみた手段を取った相棒に、矢車は苦笑した。

(あと30分か)

 加賀美は腕時計を確認し、もつれそうになる足を叱咤する。
 ようやく外へと続く縦穴のところまで戻り、三人は同時に息をついた。ここからが一苦労だ。

「加賀美、お前が先に行け」
「そうさせてもらう」

 影山を背負い直した加賀美は、鉄製の棒を掴み、一歩一歩慎重に足を進める。
 暗く足元のおぼつかない梯子を男ひとり背負って上っていくのは、相当骨が折れる。後に続く天道と矢車も、通常ならとても一人で歩ける状態ではなかった。

 地上まで残りわずかというところで、ぐらりと周囲が揺れた。
 足を踏み外しそうになりながらも、一層気合いを入れて上へと向かう。

「……あと少し」

 星空を見つめ、加賀美が呻くように呟き、手を伸ばした。





(あと10分……。まだか、新)

 珍しく焦りを満面に表し、加賀美陸は腕時計を見つめた。
 ゼクトルーパーの小隊を率い、隕石落下の跡地を取り囲むように待機させているが、間に合わなければ何にもならない。

 ぐらりと大地が揺れる感覚に、トルーパーたちがざわめいた。

「うろたえるな、もう少し下がって」

 ぎりぎりまで待って息子たちが戻らなければ、部下の安全のため退避命令を出さざるを得ない。
 苦渋の決断に顔を歪めた時、待ちわびた声がした。

「……親父、手を貸してくれ!」

 ライトに照らされた縦穴の入り口付近で、懸命に手が振られている。

「新!」

 陸は即座にトルーパーに指示を出し、息子たちを地上に引き上げさせた。

「早くここから離れるんだ!」

 タイムリミットが近い。
 地面の揺れはますます激しくなり、ゼクトルーパーに支えられた四人がクレーターから撤退した直後、大量の土砂を振り落としながら一帯の地面が持ち上がった。
 重力に反し、ぽっかりと浮き上がったのは、銀色に鈍く輝く楕円形の巨大な宇宙船だった。
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