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楽園依存症候群

楽園依存症候群(16)

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 真夜中、人の気配を感じて矢車は目を開けた。
 足音を忍ばせ病室へ入って来た黒い影へ、ベッドに入ったまま声を掛ける。

「……ちゃんと薬は飲んだのか、相棒?」

 その声音は、いつもより少しだけ優しい。

 レミングの夜、矢車は地下を脱出したと同時に気を失い、気が付けば陸の指示で強制入院となっていた。
 影山も同じ病棟で治療を受けていると、病院のスタッフから漏れ聞いた。

「自分のこと心配しろよ。俺は、兄貴にとどめ刺しに来たのかもしれないだろ」
「やりたきゃ、やればいい」

 上半身を起こし、ベッドサイドのライトを点けながら、矢車は何事もないように言う。
 矢車の静かな声に比例して、影山の苛立ちが募る。優しくされるより、怒ってくれた方が遥かにましだった。

「なんで、落ち着いていられるのさ! 死にたいのかよ!?」

 意に反した暴言が口をつく。
 矢車に恨まれて当然の事をしたと、自覚していた。どれだけ罵られようと、謝る決心をし、監視の目がない深夜に忍んで来たのに。
 正直な気持ちを伝えることができない己の情けなさに、影山は唇を噛みしめた。
 そんな相棒を見て、矢車はわずかに首を傾げ、苦笑する。

「死にたいわけじゃないが。お前に殺されるなら、お互いさまだろう」
「え?」
「俺は二度と、お前を殺したくない」

 懺悔を思わせる口振りに、影山は目を瞬かせた。
 白夜の国へ行くため、埠頭へ向かった夜の話だろう。だがあれは影山自身が望んだのであり、矢車は求めに応じただけだ。

(お互いさま、か)

 もしかしたら、矢車もずっと負い目に感じていたのかもしれない。
 そう考えると、強張っていた影山の気持ちがゆっくりほどけていく。

「……じゃあ、今回のでチャラ」
「ああ」

 まだ目を合わせることはできず、影山はそっぽを向く。
 矢車がくすりと笑う気配を感じ、ますます顔を向けられなくなった。

 ZECT時代からこれまで、二人の関係はいつもお互いさまだった。
 裏切り、裏切られ。殺し、殺され。その時々で状況は変わっても、共にあるのは変わらない。

「お前も寝ろ。朝にはまだ早い」

 影山の様子が落ち着いたと分かり、矢車は再び体を横たえ目を閉じる。
 仮にも殺されかけた相手に、無防備な寝顔をさらすのは、信用されている証なのか。
 嬉しい反面、影山に悪戯心が湧いた。

「ふーん。俺に、殺されてもいいってこと」
「できるものならな」

 わざとらしく凄みを利かせる影山に、矢車は寝ながら答える。
 先程のような切迫した雰囲気はないものの、二人は依然物騒な会話を続けた。

「油断して、寝首かかれても知らないよ」
「そこまで抜けてない」
「俺だって、本気になったら強いんだからね」
「そうか。初めて知った」

 矢車はぱちりと目を開け、口角を上げる。

「お前に、俺は殺せない」

 額を指で弾かれ、自信に満ちた顔で断言されれば、もう反論できない。
 ちぇっ、と影山は不貞腐れた。

(もう、間違えない)

 矢車を殺し、永遠を手にしたいと願った気持ちは真実だったと、影山には分かっている。
 永遠と刹那。どちらをも求める矛盾する思いは、きっとずっと変わらない。
 それでも、今この瞬間、この刹那を決して手放したくないと思った。
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~ Comment ~

>コメントありがとうございます 

>春巻様

深いお言葉をありがとうございます。
そ~ですね。ダメな子ほど可愛いというか・・・矢車さんは、そんな風に影山を見てるんじゃないかあぁ(希望)。で、影山が兄貴のことをどう見てるかも矢車さんは知った上で、掌で転がしてるという(笑)。
犬っころ! 萌える言葉~!!

>磯野瞳様

ど~も兄貴が素直になってくれません(--;
影ちゃんのことは大事なくせに、どーしてそう外すかな、と自分で怒りながら書いてました(苦笑)。
やさぐれ包容力・・・いつもながら磯野さんのネーミングセンスは素敵v
ありがとうございました!

 

兄貴、カッコイイです(´Д⊂グスン
男や!!
めっちゃ兄貴や!!
何ですかこの包容力は。やさぐれ包容力!最高です。胸に飛び込んでしまいそうです。
二人の、とても近いんだけど素直に越えられない距離がいい、いいですっ下手なコメントすみませんっ。

パソ様お大事に(・∀・)ノ

はああ・・・(ため息) 

うん、やっぱり影山は矢車の掌の上で踊り続けるんでしょうね。そんな愛らしい影山に萌えて萌えてしょうがありません。
なんつか、「ああ、この人にはかなわないな。」と心から認める瞬間の甘美な感覚っつーか、腹部を晒して撫でてくれとおねだりする犬っころになった感じっつーか。
年甲斐もなく恥ずかしいけど、そんな気持ちを思い出しました。エピローグでさらに心の敏感な部分を鷲掴みされる予感に打ち震えながら・・・もう寝ます。
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