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フレイアは笑わない

フレイアは笑わない(3)

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 フレイアは、矢車たちにラボの建物内を順番に案内してくれた。
 六階建ての研究棟はもとより、医療施設と職員たちの生活の場を兼用している医療棟は、ガイドがなければ、あまりの広さに迷っていたかもしれない。
 矢車たちが滞在するドミトリーやカフェテリアも、医療棟内にあった。

 カフェテリアでは、数人のスタッフがくつろいでおり、コーヒーの香りが漂う。
 食事の時間帯は、何列にも並んだ長いテーブルがほぼ満席になり、そこそこ賑わうらしい。

「ここのスモークサーモンが美味しいのよ」
「それ、幾ら?」
「40クローネ」

 影山が尋ねると、フレイアは少し苦笑して答える。
 ふーん、と頷いてから、影山は矢車の耳元にこっそり口を寄せた。

「ね、兄貴。40クローネって何円?」
「800円少し」
「高っ!」

 目をむく影山に、矢車は笑った。
 物価の高いオスロでも、今回の滞在費用はすべてZECT持ちだ。

「ディナーは、羊肉を煮込んだフォーリコールもあるし。外で食べるよりは、安く上がると思うけど」
「ドミトリーのキッチンは使えるか?」
「ええ。自炊もご自由に」

 矢車の質問に、料理をするのだろうか、とフレイアは意外そうな眼差しを向ける。もちろん口には出さないけれど。

 医療施設を回りながら、フレイアは自分がワーム化抑制治療に携わるドクターであると告げた。
 明日から影山は、彼女の治療を受けることになる。

(この女、裏がありそうだ)

 施設の説明をするフレイアの横顔を眺め、矢車は口を引き結んだ。
 医療チームの一員としてドミトリーで暮らす、ボーヒネン博士の娘。悪事を働くような人間には見えないが、直観的に何かが引っかかる。

 ラボの関係者への挨拶、今後の生活のオリエンテーションなど面倒事を済ませた後、矢車と影山はドミトリーの一室に落ち着いた。
 あてがわれた二人部屋は、キッチン・リビング・バスルーム完備で、寮というよりホテルのスイートルームに近い。

 ラボでの矢車の仕事は、ライダーシステムのデモンストレーション。影山については、ワーム化抑制治療を受けるのみ。
 一ヶ月間、ZECTとラボの親善交流という名目で、二人はゲストとして滞在する。

 厄介なのは、そういった表向きの仕事ではなく、加賀美陸から押し付けられた研究施設の内部調査だ。
 ひと月のうちに、先の事件に関わった人物を絞り出さねばならない。

「兄貴、街行こうよ、街!」

 現地に着いたばかりだというのに、影山が街を回りたいとうるさくせがむ。
 今日ぐらいゆっくりしたいと突っぱねても、ねーねー、と子供のようにねだってくる。
 根負けした矢車は、仕方なくオスロ観光をするはめになった。





 様々な店やレストランが軒を連ねる、カールヨハンス・ガーテ通り。

「兄貴、これも!」

 訪れたスーパーマーケットで、影山はあれもこれもと買い物かごに放り込んでいく。
 今かごに入れたのは、キャラメルのような色の、甘い風味があるヤギのチーズだ。

「まだ買う気か」

 矢車はげんなりと呟いた。もう一週間分くらいの食料は買い込んだ気がする。

「だって、久しぶりに兄貴が手料理作ってくれるんでしょ」
「誰が、作ると言った。俺は湯が沸かせるか知りたかっただけだ」
「え?」

 期待に満ちた影山の顔から目を逸らし、矢車は素っ気なく答える。
 フレイアにキッチンのことを聞いていたので、てっきり矢車は料理を作ってくれるのだろうと、影山は踏んでいた。
 そう言えば、日本から持ってきたわずかな手荷物の中にカップ麺が入っていたけど、でもまさか。

 笑えない想像を頭から払うように首を振り、影山は買い物を続けた。
 観光客で賑わう通りに異質な悲鳴が上がったのは、二人が会計を済ませた直後だった。



※今回のサブタイトルは、「旅行好き必見! 地獄兄弟のオスロ観光」ということで(違)。
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