想が瞬を駆け抜けて

想が瞬を駆け抜けて(1)

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1.始まり

 矢車さんが――いや、兄貴がどうして俺を選んだのかは分からない
 あの頃の俺は、兄貴に憧れていた、ただの部下のひとりだった





 マスクド・ライダーシステムの話は、機密事項であるにも関わらず、既にZECT内部に広まっていた。
 対ワーム戦のZECTの切り札。最初のライダーとなる『カブト』の資格者はもう決定済みだという。
 今、ZECT内部で話題になっているのは誰が次のライダー『ザビー』の資格者になるか、だった。

 精鋭部隊シャドウのメンバーがその有力候補に上げられていることは影山も知っていた。
 ザビーとして選ばれた者が、シャドウの次期隊長になるということも。

 自分もシャドウの一員ではあるが、とてもリーダーなんてガラじゃない。

 シャドウの中でも群を抜いて優秀な人物が二人いる。
 日下部と矢車。
 おそらく二人のうちのどちらかが選ばれるのだろうと、影山は思っていた。

 競争意識が高く、仲間を蹴落としても上に上がろうとするシャドウの中で、マイペースな影山はある意味特殊な存在だった。当然のように孤立し、いいように利用されることが多かった。

 そんな状況を救ってくれたのが、小隊長の矢車だ。


「ほら、あっためて食べろよ」

 給料日前で、あまりに質素な影山の食生活をみかねたのか。矢車はタッパに麻婆豆腐を入れて持ってきてくれた。
 意外にも矢車が料理を趣味とすることを知ったのは、その時だ。

「あ、ありがとうございます!」

 それまであまり話したこともなかった上司に差し入れまでされ、影山は驚いた。

「そんなに緊張するな。お前らしくしてろ」

 固まってしまった部下に、矢車は人好きのする笑みを向ける。

 ワームに殺されてしまった弟によく似てるのだと、矢車は影山に話したことがある。
 影山にとっても矢車は尊敬する先輩であり、兄のような存在だった。
 矢車と親しくなったことで、他の隊員たちも影山に一目置くようになっていた。

 ふたりの関係が、そんな風に少しだけ変化した時。
 ザビーの資格者が日下部に決まったと、ZECT上層部から公式に報じられた。



2.ザビー

 ザビーの資格者として選ばれた日下部は、矢車に負けず劣らずの好人物だった。
 戦闘能力においても判断力においても、矢車と拮抗している。
 どちらが選ばれても不思議ではなかったが、影山は資格者が矢車でなかったことが不満だった。

(俺たちのリーダーなら、矢車さんのほうがよかったのに……)

 決して日下部が嫌いなわけではない。
 だが今、日下部には不穏な噂も流れていた。彼がZECT上層部に不審を抱き、内部事情を調べている、と。

「矢車さん!」

 訓練が終わって自室に戻ろうとしていた矢車に、影山は周りに人がいないことを確かめてから声をかけた。
 どうしても聞きたいことがあったのだ。

「影山か、どうした?」

 矢車は変わらない穏やかな笑みを見せる。

 ザビーをめぐる日下部と矢車の対決を、周囲は興味本位ではやし立てていた。結果として勝負に負けた矢車を、裏では馬鹿にする者もいる。
 そんな事など気にも留めていないような上司に、影山は思い切って尋ねてみた。

「矢車さんはザビーに選ばれなかったこと、悔しくないんですか!?」

 無意識のうちに手に力が入り、拳を握り締めていた。
 そんな影山の様子に矢車は少しばかり戸惑う。
 シャドウ隊員にしては珍しく、気持ちをまっすぐにぶつけてくる部下だ。

「俺は、日下部でよかったと思っている」

 矢車はひと言ひと言かみしめるようにして続けた。

「……むしろ、ザビーに選ばれなくてほっとしてるといったほうが正しいな」
「えっ!?」

 矢車の意外な言葉に影山は驚いた。

「ど、どうしてですか?」

 必死の面持ちで尋ねる影山に、矢車は小さく息をつく。
 これでは、誤魔化しはできそうにない。

「影山。お前、ザビーがどんなライダーか知ってるか?」
「どんな……って、ZECTの二番目のライダーですよね」
「それだけじゃない。ザビーは、刺客なんだ」
「シカク?」

 とっさにその言葉が、影山には理解できなかった。
 苦笑して矢車は言い直した。

「たとえば、ZECTを裏切った者や従わない者を、粛清するためのライダーということだ」
「そんな、だって、誰がZECTを裏切るっていうんですか? わざわざそんな目的でザビーを作る意味なんてないじゃないですか」

 ライダーはワームに対抗するためのシステムであり、自分たちは、ワームを殲滅するためにZECTに集っているのだ。
 そう考えて、ふと影山は日下部の噂のことを思い出した。

 日下部の動きはZECTも知っているはずだ。
 それなのに、なぜよりによって日下部がザビーなのだろう。

「まぁ、ザビーに関わりたくないというのが俺の本音だ」

 そう言って矢車は肩をすくめた。

「嫌な予感がする。日下部に何もないといいんだが……」

 それは矢車の心からの言葉だった。
 ライバルではあっても、日下部は矢車にとって気の合う友人だ。

 ザビーの黒い噂について、矢車は影山にすべてを話さなかった。
 誰が言い出したのか知らないが、『ザビーの資格者は魔に魅入られる』などという話は信憑性に欠ける。

 ――迷信まがいだ。

 理性でそう結論づけても、矢車はなんとなく気持ちがざわつくのを抑えることができなかった。


※勝手に捏造した二次創作です。
できるだけ本編に外れないようにするつもりですが、妄想の産物(笑)です。
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