完全調和な不協和音

完全調和な不協和音(12)

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vol.12 ロ単調の真相


 停職も減給も免れたものの、俺はどんよりとした気分で三島さんの部屋を後にした。
 正式にザビーの資格者になったわけではなく、日下部がザビーになれば俺は無罪放免ということになるのだが、いずれにしても気が重い。

 沈んだ気持ちの俺の前に、また脳天気な輩が二人。俺が出てくるのを待ち構えていたらしい。

「おめでとう、晴れてカブトの資格者だな!」
「主役ですよ、主役! 今年は矢車さんの時代ですね!」

 田所さんと影山に詰め寄られ、俺はびっくりした。どうも話がかみ合わない。

「ちょっと待ってください。俺は、カブトは断りましたよ」

 とりあえずそう告げると、今度は田所さんたちが目を丸くする。

「何? なら、もしや1年間の給料50%減額を承諾したのか?」
「……それも違います」

 田所さんの言葉に、俺はうっすらと事の成り行きが読めてきた。

「すると、まさかザビーに……」
「どうして、その三択問題を知ってるんですか?」

 反対に俺が聞くと、ぎくりとなる田所さん。その横で誤魔化すようにニコリとする影山。こいつもグルか。

「三択も難しいな。篠沢教授並みの正解率の低さだ」

 ハハハ、と乾いた笑いを漏らす田所さんだが、そのギャグもかなり干からびている。
 「はらたいらさんに全部」だの「 “三択の女王” 竹下さん」だの「倍率ドン!」だの、全盛期の『クイズダービー』を知らないと無意味な喩えだ。

 それはともかく、今回の件は初めから仕組まれていたことを俺は知った。
 すべては、俺をマスクド・ライダーの資格者に仕立て上げるために。

「俺を、ハメたんですね」
「いや、俺はハ●撮りなんて!」

 焦りのあまり、きっと田所さんは自分が何を口走っているか分かっていない。
 いい加減、裏ビデオから離れてほしいんだが。

「三島さんからの命令ですか? 俺にライダーの件を承諾させろ、と」
「いや、まあ……俺たちはお前がカブトになればいいな、と。なぁ、影山!」
「そうですよ、主役じゃないですか!」

 話を振られた影山は、そう言って目を輝かせる。
 主役になりたいのは、俺でなく、この部下自身なのかもしれない。

「カブトに興味はありません。それより、あのトルーパーたちもヤラセだったわけですか」

 問い詰めながら、俺は頭の中を整理した。
 影山を襲った俺の部下たち。考えてみれば、俺のファンクラブの会員が俺に歯向かうというのも妙だった。大方、田所さんにそそのかされたに違いない。

「ああ、あいつらはお前の躍進のためだと言ったら、身を犠牲にして協力してくれた」

 感慨深げに、田所さんは目頭を押さえる。
 予想通りの返答をもらい、俺は愕然として壁に手をついた。なんてバカげた顛末だろう。

「だ、大丈夫ですか、矢車さん? 顔、青いですよ」

 影山が心配げに覗き込んでくる。そんな部下に、怒っていいやら笑っていいやら。
 影山も田所さんも、俺をカブトの資格者にしようと一芝居打った――と理解すべきで。俺の為を思ってしてくれたことなんだろう、多分。

 だが、おかげで事態はとんでもない方向に動き出したことを、この時はまだ誰も知る由はなかった。
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