完全調和な不協和音

完全調和な不協和音(13)

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vol.13 変ト長調の軋み


 ZECTの陰謀か策略か、思い出したくもない経緯で、俺はザビーの資格者候補に祭り上げられた。

「ZECTを探るには、好都合じゃないか」

 もうひとりの候補である日下部は笑って、俺の背を叩く。気持ちが沈みがちな俺と違い、豪気なものだ。
 日下部は、マスクド・ライダーシステムの開発者の血縁だというが、その割にZECTに批判的で懐疑的だった。
 そのため、三島さんなどは日下部をよく思っていない。

「邪魔な俺たちを潰そうとしてるのかもしれないだろ。気を付けた方がいい」
「お前もな、矢車」

 俺が不安を口にすると、日下部は真面目な顔で頷く。
 長話はマズイ、と踵を返した日下部が、ふと思い出したように振り向いた。

「そうだ。お前の隊に入った新人……」
「影山のことか?」
「ああ、そいつ、三島さんのお気に入りらしいぞ」
「……え?」

 日下部の言葉を聞いた瞬間、俺の頭の中は様々な思考が駆け巡った。
 三島さんが影山を気に入ってるとは、一体どういう意味なのか。いろいろな解釈ができて、収拾がつかない。

 詳しく聞く前に、こちらにやって来る田所さんの姿を認め、日下部はそれ以上何も言わずに歩き去ってしまう。
 なんでこう、間が悪い時にいつも現れるんだろうこの人は、と俺は八つ当たりしたい気分全開だった。

「……お、すまん。お邪魔だったか」

 立ち去る日下部の後ろ姿を見てそんな風に言う田所さんに、俺はどれ程肯定の意を示したかったことか。
 それでもぐっと堪えるあたり、俺は自分で自分をほめてやりたい。

「俺に、何か?」

 引きつりそうになる笑顔を必死に保って尋ねた。

「ああ。マスクドライダー計画のことだが……。ちょっとトラブルがあって、しばらく延期になった」

 それを伝えようと思ってな、と田所さんが言う。
 今はそんな事どうでもいいと思いつつ、俺は適当に話を合わせた。

「ザビーの件なら、今始まったことじゃないでしょうに」
「いや、今回はゼクターがどうも……」

 田所さんの言い方は、はっきりしない。

「俺は、ザビーの資格者候補ですよ?」

 誰かのせいで、とは続けない。言わずともそれくらいの皮肉は分かるだろう。 いや、分かってくれ頼むから。
 しかし、田所さんは見事にそこをスルーした。

「カブトゼクターは失踪。ザビーゼクターも男漁りに出掛けて戻らない。ガタックゼクターは、ハンスト中だ」
「……ハンスト?」
「ZECTの調整を受けようとしない。このままでは、エネルギー切れだ」

(何の冗談だ、これは……)

 まるで、荒んだ家族の現状を聞いているような気分になってきた。
 ライダーの資格者は、人ではなく、ゼクターが決める。それが、今回のマスクド・ライダー計画。
 失踪も、男漁りも、ハンストも、ゼクターならあり得てしまうところが怖い。

「ゼクターの自意識、強過ぎるんじゃないですか……?」

 影山が三島さんのお稚児さんだとか、ゼクターが家庭崩壊してるだとか、そんな話ばかり聞かされて。
 俺はもう、何が何だか分からなかった。
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