完全調和な不協和音

完全調和な不協和音(14)

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vol.14 へ短調の慰め


 どうも、最近の俺の運勢は、下降の一途を辿っているらしい。
 今朝からワームを取り逃がし、隊を率いてようやくワームを捕獲したのが昼過ぎ。

 三島さんに嫌味を言われたことはともかく、田所さんに「気にするな」と慰められたことが、俺のプライドを修復不可能なまでにズタズタにした。
 これは、天中殺か大殺界か。

 元気のない俺を見かねて、お稚児・影山まで俺を励まそうとする。

「今日のあれは、仕方なかったと思いますよ。ワームが俺たちトルーパーに擬態してたから……だから、矢車さん討てなかったんでしょ」

 熱い眼差しでそう言われても返答に困る。そんなに俺を、「いい人」にしたいのだろうか。

 そもそもワームを逃がしてしまったのは、戦闘に不慣れな “どこか” の新入り隊員が、やたらとマシンガンブレードを撃ちまくったあげく、跳弾が危険で、その隙を突かれたためであって。
 確かに、“どこか” の新入り隊員が指摘したように、ワームはトルーパーに擬態していたが、俺にとってそれは障害にはならない。

「三島さん、あれで優しいとこもあるんですけどね」

 痛烈に俺を皮肉った三島さんに対しフォローを入れるように、影山が言う。

「たとえば?」
「え?」
「たとえば、どんな所が優しい?」

 そこで俺に問い返されるとは思っていなかったのだろう。影山は戸惑いながら答えた。

「よく、お菓子くれます。『ひよこまんじゅう』とか『萩の月』とか」

 どうやら俺の部下は菓子で釣られているらしい。仙台銘菓を使うあたり、三島さんも芸が細かい。

「影山、お前は俺のファンというのは、嘘だろ。お前は、三島さんの……」

 三島さんのスパイか、と俺は聞きたかった。けれど、あからさまに口にするのは躊躇われる。
 意外そうな目を向ける影山は、俺が何かを疑っているということは感じ取ったようで。

「嘘なんかじゃ……! 三島さんから矢車さんの隊に入れって言われた時は、ほんとに俺、嬉しかったんです」

 俺の誤解を解こうと、必死に弁明する。

 なんにせよ、裏で糸を引いているのは三島さんだということははっきりした。俺をつぶす企みか、あるいは他の目的があるのかもしれない。

(動き出したようだぞ、日下部)

 ここにはいない同志に、心の中で呼びかける。

「三島さんのお菓子もおいしかったけど、俺は……矢車さんの作ってくれた麻婆豆腐が一番好きです!」
「……それは、どうも」

 食べ物の話をいまだ引きずっている影山の背後に、萩の月やら月餅やらが飛び交う幻影が見えた気がした。

 俺の頭の中では、影山と三島さんの関係について、すっかりおかしな構図が出来上がっていた。
 普段の俺なら笑い飛ばしていたはずの思考なのに、田所さんに感化されてきたに違いない。
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