ハロウィン・カーニバル

ハロウィン・カーニバル(1)

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 クリスマスほどではないとはいえ、近頃は日本でも定着してきたハロウィンの行事。
 ショッピングモールを歩けば、至る所におばけカボチャ、ジャック・オ・ランタンが飾られている。

「……あー、パンプキンパイ食べたい」
「高い。カボチャあんぱんにしとけ」

 レストランやケーキ屋の前でいちいち立ち止まる影山を、矢車は溜息を吐きつつ待った。

「ねえ、今夜はハロウィンだしさ。仮装しようよ、仮装!」
「くだらない」

 影山の浮かれ気分に水を差すように、矢車はしらけた調子で突っぱねる。
 ちぇっ、と小さく呟いて、影山はハロウィンショップを後にした。魔女の姿をしたマネキンが、「またおいで」と手を振る。

 いつもは誘っても「うん」と言わない矢車が、珍しくショッピングモールに行くと言い出したので、喜んで来てみれば。
 やはり、というか、お祭り気分を味わうつもりは毛頭ないらしい。

「どこ行くの、兄貴?」
「買いたいものがある」

 矢車が向かったのは、モール内にある露店のひとつだった。
 この時期限定の出店だろうと思われるハロウィン関係の品々が、狭い置き場に無造作に広げられている。
 ボロ人形や、骸骨、赤黒い染みのこびりついた短剣等、パーティー用としては、リアル過ぎる代物に思われた。

「それ、何? キャンドル?」

 矢車が調達したものを、影山は興味津々で覗き込む。

「……かがり火だ」

 陰鬱そうに答える矢車に、影山は首をひねった。
 確かに矢車はイベント事に積極的に乗るタイプではないが、今日の無愛想さはいつもの上を行く気がする。





 10月31日のその夜は、やけに賑わいでいた。
 闇が降りてからも、二人のいる土手の上の道に、仮装をした親子連れやカップルが頻繁に行き交う。

「なんか今日は、周り騒がしいね」
「迷惑な話だ」

 カボチャあんぱんを頬張りながら、影山はちらりと背後を振り返る。

 矢車は篝かごに薪を入れ、火をおこしていた。鉄製のかごにくべた薪から、炎が煌々と周囲を照らす。常ならば異様な光景も、ハロウィンの夜であれば、すべてが不問で済む。

 それにしても、矢車はなぜ、こんなものを焚くのだろう。

 かがり火が灯ると、ますます周囲はざわざわと騒がしくなってきた。
 道行く人々が自分たちを見ているのかと、影山は振り向いてみるが、特に足を止めている者はいない。

「これ、なんなの?」

 不意に怖くなって、影山は尋ねた。

「かがり火だと言ったろ」
「それは分かったけど、何のためにか、ってことだよ」

 周囲のざわめきも、心のざわめきとともに大きくなる。何か安心させてくれる言葉を、矢車に言って欲しかった。「バカか、お前は」と、いつものように軽く受け流して欲しかった。

「悪霊から、身を守るためのものだ」

 ふと眼が合うと、矢車は微笑んでくれる。
 けれど。思いの外、真剣なその表情は、影山の不安を吹き飛ばすものではなかった。



※ハロウィンストーリーです。
甘いお話とどちらにしようか迷ったんですが、ハロウィンのダークサイドを狙ってみようかなと(笑)。
甘いお菓子と仮装のハッピーハロウィンは、別館で(多分)・・・(^^;
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~ Comment ~

>えんが様 

コメントありがとうございました。
いつの間にか結構たくさん書いてることに、我ながら驚いてます(^^;
煩悩ってスゴイ・・・(笑)。
えんがさんのブログへもお邪魔させていただきました。熱い展開に血がたぎります!
やっぱりライダーはいいなぁ・・・。

初投稿となります! 

初投稿となります!えんがといいます!
いや、本当に矢車さんと影山さん好きなんですね(笑)
自分も二次小説を書いていますが、ここの圧倒的なエピソードの量に驚いています。
読んでいきたい気もするんですが・・・どこから手をつけたらいいのか・・・(>_<)
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