ハロウィン・カーニバル

ハロウィン・カーニバル(3)

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 矢車の手に握られていたものは、刃渡りが長く大きい洋包丁。それを自分に振り下ろそうとしているのだと気付き、影山は慌てて避けた。

「あ、兄貴!? 何……を」
「大人しくしてろ、すぐ済むから」

 冷たい瞳で、矢車はそう宣告する。

 今までどんな時でも、矢車を怖いと思ったことなど一度もなかった。裏切りや駆け引きが、色々あったとしても。自分と矢車の間には、見えない絆があり、どこかで繋がっていると信じられたから。
 でも、今は、違う。

「来い、相棒」

 ぐいと腕を引かれた影山は、自由になる方の手で矢車の手首を打つと、包丁を叩き落した。地に落ちた刃物を、影山は素早く拾う。

「俺を、殺す? どうして……」

 震える声で、影山は聞いた。油断すると、思わず泣きそうになってしまう。

「俺が、お前に危害を加えるわけ、ないだろう?」

 矢車の言葉は限りなく優しい。だが、その瞳には狂気の炎が燃え、口元は歪んだ笑みの形をしていた。

「今日の兄貴、変だ。こんなの……」
「何言ってる。いつもと同じだ」

 矢車の手が差し出される。凶器をよこせ、と。

「これで、何するの……?」
「決まってるだろ」

 その時、矢車の周囲に先程からザワザワとうるさかった物たちが集結したように、影山は感じた。

「お前を、救ってやるんだよ」

 ニヤリと笑ったその口元から覗くのは、大きな2本の犬歯。背には蝙蝠を思わせる黒い翼。それは、美しくも恐ろしい吸血鬼そのものだ。

(嘘だろ……)

 これが、兄貴の冗談で、ただのハロウィンの仮装であってくれたなら。
 そんな影山のはかない望みは、次の瞬間あっけなく吹き飛んだ。

「手間をかけさせるな」
「つっ!」

 矢車の鋭く長い爪が一閃する。
 むきだしの右腕に走った痛みに、影山は顔をしかめた。肘から下に、一筋の赤い線が滲み出す。包丁を手放さなかったのは、上出来だろう。

(これは、悪霊だ。兄貴のはず、ない!)

「消えろ、お前なんか!」
「どうした相棒」
「うるさい、お前に相棒なんて呼ばれたくないっ!」

 自分を相棒と呼べるのは、「兄貴」だけだ。

「……俺の兄貴を返せ!」

 無我夢中で、影山は叫ぶ。
 気が付くと、影山の両手は、吸血鬼の腹に刃物を深々と刺し入れていた。
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~ Comment ~

>えんが様 

ちょっとやり過ぎたかなぁ、と思うような展開になってしまいました(^^;
ろくにプロット考えないで、ノリだけで書いてるもんだから(苦笑)。
リンクの件、ありがとうございました。
よろしければ、こちらもぜひ張らせていただきます(^^)

怖いです・・・ 

元はあの矢車さんだということを忘れさせられるように怖かったです。
ワーム化したわけでもなさそうですし、何故?気になります(笑)

あと、リンク張らせていただいてもよろしいでしょうか?
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