スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←ハロウィン・カーニバル(6) →フレイアは笑わない(8)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



【ハロウィン・カーニバル(6)】へ  【フレイアは笑わない(8)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

フレイアは笑わない

フレイアは笑わない(7)

 ←ハロウィン・カーニバル(6) →フレイアは笑わない(8)
 パソコンのキーボードを叩く音が、静まり返った室内に響く。
 背後のベッドでは、その音に目を覚ますことなく、影山が寝息を立てている。

 体は睡眠を欲しているのに、ベッドに横になっても矢車はやはり寝付けなかった。
 時間潰しがてらZECTへの報告をまとめ、メールを送信したところで、音声通話の『着信』を知らせるメッセージが表示された。

「……何だ。今そっちに報告を送った」

 インカムを付け、ウェブカメラをオンにする。ディスプレイに、驚く加賀美の顔が映し出された。

『矢車さん、こんな時間に起きてるんですか? 今そっち、深夜ですよね』
「眠れないんでな。で、用件は?」

 寝ている相棒を起こさないよう、小声で話す。
 素っ気ない矢車の態度をものともせず、加賀美は「そちらの生活はどうですか」「変わりないですか」と一通りの質問を投げてくる。
 矢車は適当に答えてから、にべもなく言った。

「特に用がないなら、もう切る」
『あ、待って! 伝えたいことがあったんですよ。ノルウェーから発信された電波信号の件です。詳細はメールしときましたから』
「なら、初めからメールだけにしてくれ」

 溜息交じりに告げ、矢車は今度こそ通信を切った。
 加賀美が二人を気に掛けてくれているのだと分かっていても、わざわざ真夜中に無駄話はしたくない。

 届いたばかりのメールを開くと、添付ファイルにはアレシボ・メッセージが記されていた。
 ノルウェーに潜むワームから、外宇宙へ向けた通信。しかし、絵画のような図形のメッセージは、素人から見れば暗号だ。
 例によって、加賀美陸による解読が、最後に一言添えられている。

『ラグナロクはオーディンが導く』――。

「加賀美の親父が好きそうな謎掛けだな」

 うんざりと呟いて、矢車はファイルを閉じた。

 北欧神話で、主神オーディンはラグナロク(世界の終末の日)に滅びるとされる。
 オーディンがラグナロクを引き起こすなら、神話とは異なる別の何かを示しているのかもしれない。





 施設内に朝の活気が戻る頃、目覚まし時計に起こされた影山は、ソファにもたれかかる矢車を寝ぼけまなこで見つめた。
 どうやら、昨夜もあまり眠れなかったらしい。

「……やっぱり病院行こう、兄貴」
「ラボの治療に不満か」
「俺じゃなくて。それ不眠症だろ。インソムニアってやつ」

 覚えたばかりの言葉を披露したがる子供のように、影山は人差し指を立て、その難しい語を発音した。

「白夜に慣れてない人が、よくなるって聞いた」
「そんなヤワじゃない。そのうち馴染む」

 目元を手で覆い、矢車は顔を上向ける。
 環境が変わった程度で眠れなくなるなど、これまで一度もなかった。よりによって、思い願った白夜の国で不眠症とは、ひどいオチだ。

「ちょっと待ってて」

 そう言い残し、手早く着替えを済ませた影山が部屋を出て行く。

「兄貴、ドア開けて!」

 10分もしないうちに、外で叫ぶ影山の声に、矢車はやれやれという面持ちで立ち上がった。
 ドアを開けた途端、「はい」とコーヒーカップを差し出され、戸惑ってしまう。

「エスプレッソ。カフェテリアで作ってもらったんだ。ここの人、なかなかのバリスタなんだって」

 自分のカップに口を付け、影山は得意げな笑顔を見せる。
 いつものインスタントとは違う、濃厚な風味。ふくよかな香りは、リラックス効果があるという。

「うまいな」

 矢車は感謝の言葉の代わりに、影山に柔らかな笑みを返した。
関連記事



【ハロウィン・カーニバル(6)】へ  【フレイアは笑わない(8)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【ハロウィン・カーニバル(6)】へ
  • 【フレイアは笑わない(8)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。