鬼殺し

鬼殺し(3)

 ←心臓すごいコトになってんぜ? →鬼殺し(4)
 あの時の俺は、どうかしていた。

 疑惑ばかり膨れ上がって、変異した自分の右手も意識できず。
 それから、『お前』が、俺の意識を占領するようにどんどん大きくなっていった。





 視界の全てが赤いフィルターを通して見え、形は醜く歪んでいる。
 今までこんなにも歪な世界で生きてきたのだろうかと、影山は吐き気さえ覚えた。

「俺に近寄るな! それ以上近付いたら、殺す」
「何言ってる、相棒」

 信じられる唯一の存在だった矢車も、例外ではなかった。粟立つ瘤の塊のようなものが、「相棒」と呼んでくる。
 矢車の声ではなく、テープを引き伸ばしたような音。影山は耳障りな声に耳を塞いだ。

(ワームになっちゃったんだ、兄貴は)

 もはや他の考えが入り込む余地はなかった。
 異常な程に一つの妄念に取りつかれ、冷静に現実を捉えることができない。

(そんな姿で生きていくくらいなら)

 矢車を、自分の手で苦しみから解放してやろう。
 影山の心は、得体のしれない強迫観念に支配されていた。
 その思いに突き動かされ、影山は手にした折りたたみナイフをパチンと開く。

「相棒!?」

 突然ナイフを振りかざす影山に、矢車は目を見張った。

 頻繁に発熱を繰り返す影山の体の異変に、矢車も気付いていた。ZECTが配っているネックレスが原因だと、天道の警告を受けて確信した。影山の異形の手が、その証だ。
 けれど、完全にワーム化していないのに、こうも容易く精神まで乗っ取られるとは信じ難い。

「つ……っ」

 閃いたナイフの切っ先が腕を裂き、顔をしかめる。
 影山の動きは、いつもより格段に速かった。ワーム化によって、身体能力が上がっているのだろう。

 ナイフを弾き飛ばそうとした矢車の蹴りは素早くかわされ、空を切る。その足首を捕らえられ、矢車の体はぐるりと反転した。
 普通の人間には及びもつかない力で、影山は矢車を地に叩きつけた。

「無理だよ。今の俺に、兄貴は勝てない」

 矢車が呻く様を、影山は無表情でじっと見下ろしている。

「一息に殺した方が、苦しまないかな」
「お前……、本当に影山か?」

 影山の雰囲気が、先程までと違う。
 呆然とする矢車をねじ伏せると、影山は矢車が立ち上がれないよう、上に圧し掛かった。

「そうだよ。閉じ込められていた俺自身。表に出られたのは、ワームになったおかげかもね」

 言いながら、倒れた矢車にナイフを突き入れようとする。
 すんでのところで避けた矢車に、影山は唇を尖らせた。

「やだな、兄貴。悪あがきしないでよ」
「なぜ……、俺を殺そうとする」
「決まってるじゃない」

 矢車を鼻で笑い、影山は言い放った。

「兄貴のことが、憎いからだよ」
関連記事



【心臓すごいコトになってんぜ?】へ  【鬼殺し(4)】へ

~ Comment ~

>春巻様 

コメントありがとうございました(^^)
こうして本編をなぞるような話を書いてると、必死に「カブト」を見てた頃が思い出されます。
あの時、見てて思ったことを、ちょこちょこっと話に混ぜて膨らませていけたらいいなぁと思います。
兄貴=ワーム説も、ありましたしね。2ちゃ●とかで・・・(^^;

おおっ、ゼクター購入されたのですか!
私はギリギリまで迷ったものの、結局買わずじまいでした(--;
田所ネイティブは漢でした!
どちらかというとザビーの方が、ゼクターの装着とかカッコよくて好きなんですけど、思い入れがあるのは、やっぱりホッパーゼクターっすv

そうそう、それそれ! 

一点の染みがみるみる広がるごとく、影山の中に芽生えた疑念は彼自身の弱さを養分に、驚くべき速さで侵食してゆく・・・地獄兄貴の説明不足もあいまって、残念な方向に転がりだしましたね。やはり鉄拳だけでは伝わらないんですよ。心を通わせることの難しさについて、改めて考えさせられました。
「カブト」という作品の魅力のひとつに、次々と投げかけられる謎がありましたが、それを説いてゆく楽しさと平行して、誰がワームか判らないという恐怖が疑心暗鬼を生み、痛くもない腹をお互い探り合うような気持ちが続いたのも、個人的に今も心を捉えて話さない要因だったと思っています。
ドケチな私が、ホッパーゼクターは発売日に、ザビーゼクターは田所ネイティブを見たその日に買いに走りました(てっきり田所ザビー誕生の布石かと思って)。こうした衝動的な消費行動に出ることは、今後の人生であるかどうか。
さあ、次の展開が楽しみですね!ここではまだまだ本編が続いているのですから。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【心臓すごいコトになってんぜ?】へ
  • 【鬼殺し(4)】へ