鬼殺し

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 巻き戻した時間を、再び進めよう。
 たとえ、同じ間違いを繰り返すとしても。





 影山の告白に、矢車はぴくりと眉を動かした。
 その様子を興味深く観察しつつ、影山は続ける。

「俺を弟にしたのは、復讐だろ。それとも、地獄への道連れが欲しかった?」

 矢車は答えず、ただ強く拳を握り締めた。

「いつだって、俺を簡単に切り捨てるつもりだったんだ、兄貴は」

 手加減のない非難で影山が煽ってみても、思った程に矢車から反応が返って来ない。
 張り合いがないとばかりに、影山は肩を竦めた。

(もう少し、遊んでやろうかな)

 影山はほくそ笑む。どうせ、勝敗の見えているゲームだ。
 途端に、矢車に向けられていた殺気が消え、影山は矢車に折り重なるように倒れ込んだ。

 慌てて体を起こそうとした矢車は、脇腹の激痛に身をよじる。手で触れ、感覚を確かめて息を吐いた。肋骨を傷めたようだが、折れてはいまい。

「……ひどい熱だ」

 自分の痛みには構わず、矢車は目を閉じ苦しげに呼吸する影山の額に手を当てた。
 発熱は、風邪というより身体のワーム化のせいだろう。

「兄……貴」

 影山はうっすらと目を開けて、無理に笑顔を作ろうとする。

「なんか俺、変な夢見てたみたい……」
「しゃべらなくていい」

 毛布で包んでやりながら、矢車は影山の右手も覆い隠す。

「安心しろ。俺は、お前を見捨てたりしない」
「兄貴……?」

 影山は、自身の体と心が一時的にワームに乗っ取られたことを覚えていない。
 それでも、ワーム化した影山が吐き出した言葉は、心の奥に隠していた真実に違いなかった。

「俺たちは、ずっと一緒だ」

 見捨てない、と矢車は誓いを込めて再度呟く。
 裏切られることを恐れる相棒に、逆の言葉を伝えてやりたかった。

 どうして、今日の矢車はそんなに優しいのだろう、と影山はぼんやりと思う。
 ZECTにいた頃はともかく、矢車が優しい態度を取るなんて今までなかったのに。

 すると、毛布の下の影山の右手がまたずきずきと痛み出した。

『だまされるなよ』

 冷たい声が、頭の中に直接響き渡る。猜疑心と劣等感に凝り固まった、怪物の声が。

『いいかげん認めろよ』
『何を、だよ』

 いつの間にか、影山は自分の中のワームと対話を始めていた。

『俺は誰からも必要とされないってことをだよ』

 他人事のように指摘し、ワームは笑った。

『兄貴が優しいのは、もうお別れだからさ。俺は、お払い箱』
『違う。そんな』
『兄貴は初めから俺を裏切ってたろ。ZECTにいた頃のこと、思い出せよ』
『でも……』

 ワームの言葉を否定しようとするものの、影山はどんどん失意の中に溺れていく。
 矢車の笑みがぎこちないのは、偽りの仮面のせい。影山に向ける珍しい優しさは、裏切りを悟らせないため。

『ほら、見なよ。矢車はワームだ』

 扇動されるまま、影山の意識と視界は再び赤く歪んでいった。
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~ Comment ~

>ピカピカ様 

コメントありがとうございました(^^)
さっそく同盟参加させていただきました。

いや、もうボンノーだけで突っ走っているのでお恥ずかしい限りですが。
地獄兄弟好きの方がまだまだいらっしゃるんだなぁと思うと、嬉しいです(^^)
地獄兄弟loveで、お互いがんばりましょ~v

初めましてマーリンさん(^^) 

どうも!初めまして、マーリンさん(^^)
この頃猛烈にカブト=地獄兄弟にはまりだしたピカピカです。
地獄兄弟と検索してみてこんなに素敵なサイト様を見つけて飛んで参りました!
矢車&影山の漫画も小説も素晴らしいです!!!
矢車兄貴が特に格好よくて…!(少し余談)
もしよかったら私の作成した同盟に遊びに来てください(^ω^)ペコ
その時はお茶とお菓子を準備して待っております(待て

でわでわ宜しくお願いします~っ。

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