トライアングルハーフ

トライアングルハーフ(2)

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 無理に距離を縮めようとすれば、警戒心を強めるだけだ。俺は、向こうから近づいてくるのを辛抱強く待った。

「心配するな。俺は、味方だ」
「……味方……?」
「そう」

 どうやら、言葉は分かるらしい。

「俺は、矢車想。お前は? 名前はあるのか?」
「……名前……」

 そいつは何かを思い出そうとするように、首をひねった。そして、

「……シュン」

 と、小さな声で告げる。

「出て来いよ、シュン。そんなところにいたら、誰かに見つかるぞ」
「行くとこ、ない……」
 
 シュンはポツリと呟く。
 仲間からはぐれたのか、それとも自分から逃げてきたのか。

「なら、俺のマンションへ行こう。そこなら安全だ」

 できるだけ柔らかく微笑んで見せると、シュンは無言で俺の手を取った。





 影山瞬。ZECTには、その名で登録をした。
 経歴はもちろん適当だが、それくらいの詐称はどうとでもなる。ZECT入隊の手回しも、俺にとっては手馴れたものだった。

 俺の目の届くところに置いておく方がいいだろうと、俺は瞬をZECTに入れた。
 能力的には、何の問題もない。瞬は、人知を超える力を持つ “彼ら” の種族だ。

 問題は、瞬本人の口から嘘がばれないか、ということ。
 今の外見は二十歳ぐらいに見えるが、精神的に幼すぎるところがある。

「いいか、お前はZECTという組織に入るんだ。これから社会の中で、生きていく。いい?」
「うん、分かった」

 瞬は、俺の言うことをきちんと理解する。
 驚くほど覚えも早く、共に暮らしながら、少し教えただけで、ごく普通の人間のように生活に順応した。

「矢車さん、聞きたかったんだけどさ……」
「うん?」
「俺の名字……なんで “影山” って付けたの」

 瞬が無邪気な瞳を向けた。
 隊長職にある俺は、ZECTでは隊員を名字で呼ぶ。もちろん、瞬にもそうしている。家に戻れば、別だが。

「……ああ、お前を見てたら思い出したんだ。昔の記憶の中の……黒い影のような山を」
「影の……山?」

 不思議そうに問い返す瞬。俺はその頭をくしゃっと撫でた。

「お前は知らなくていい。……それより、今日の訓練はどうだった?」

 ZECTの新入隊員として加わった瞬は、日々厳しい訓練を受けていた。ゆくゆくは、実地戦闘に赴くために。

「もうクタクタ。俺、こういうの向いてないと思う」

 瞬は大袈裟に肩を落として見せた。
 いつの間に、そんなリアクションまでできるようになったのか、と俺は目を細める。たいした成長ぶりだ。

「自分の身は自分で守れるようになれ。そのための訓練だ」

 この先、平和な世界など望めない。火種は至るところでくすぶり、一般人といえど、いつ巻き込まれるか分からない危うい情勢。
 そんな中、頼れるのは自分の力しかない。

「俺がずっとお前を守ってやれればいいが……」

 苦々しく思いながら笑う。
 俺自身の身も、明日にはどうなるか知れないのだから。
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~ Comment ~

>春巻様 

コメントありがとうございましたv
いろんなパロがちょこちょこ入ってますが、シリアスで行くぞー、と気合を入れつつ(笑)。
修羅は書きたいんです~。特に策士との絡みで・・・。でもあんまり書くと影山の立場が・・・ということになりそうなので、どこまで書いていいものか(^^;

本格SFktkr! 

いやー、ワクワクしますよ!「ET」大好きなもんで。あの冷血そうな策士の、血の通った部分を見られるとは幸せです。あと、修羅のオンナな部分とか見られたらなんて・・・
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