スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←トライアングルハーフ(2) →トライアングルハーフ(4)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



【トライアングルハーフ(2)】へ  【トライアングルハーフ(4)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

トライアングルハーフ

トライアングルハーフ(3)

 ←トライアングルハーフ(2) →トライアングルハーフ(4)
「矢車さん、お疲れ様です!」

 ZECTの執務室を出たところで、ガタックの資格者、加賀美新ににこやかに声を掛けられた。
 加賀美は、俺の横にいる瞬に目を留める。

「あれ、そいつ、新入りですか?」
「ああ。訓練生の影山だ」

 加賀美なら、瞬と歳も近い。仲良くなれるだろうと紹介しようとしたのだが、瞬はさっと俺の後ろに隠れてしまった。

「……嫌われちゃってるのかな、俺」

 握手のために差し出した手を引っ込めて、加賀美はぽりぽりと頬を掻く。

「いや、悪いな。人見知りするんだ」

 俺は背後にチラと目をやった。
 大和さんや他の隊員たちにはそうでもなかったのだが、瞬はどうやら不貞腐れているらしい。
 きちんと挨拶しろ、と目で訴えると、瞬はおずおずと手を出した。

「……よろしく」
「よろしくな、俺は加賀美新」

 物怖じせず、裏表のない好青年。それが、たいていの人間が加賀美に持つ印象だろう。陰謀にまみれたZECTにおいては、不似合いなほど正直な男だ。

「一体どうしたんだ? 加賀美は、信用できると思うが」

 加賀美が行ってしまったのを見届けて、俺は瞬に尋ねてみた。

「……だって、矢車さん、あいつの事気に入ってる」
「え?」

 瞬の言葉に、思わず目を丸くする。
 親が別の子をかわいがると、子供が拗ねるように。俺の心を読んで、瞬はあんな態度を取ったというのか。

「俺の事は別にして。お前自身には、加賀美はどう見える?」
「澄んだ青空……。どこまでも、青くて広い」

 たどたどしく伝えようとする瞬に、なるほど、と俺は思った。
 瞬は人の性質や感情を、直感として感じ取るのかもしれない。

「なら、俺は……お前にはどう見えてる?」

 少しばかり勇気のいる質問だった。お世辞にも良い人間とは言い難い、この俺には。

「矢車さんは、透明だ」

 予想もしなかった瞬の答えに、声が詰まった。
 俺が黙ったままなので、瞬は不思議そうに首をかしげる。

「きれいな氷みたいに透き通ってる。だけど、黒いものが下からだんだん広がってきてる」
「黒いもの……」
「うん。なんだか分からないけど、きっと良くないもの」

 指摘されるまでもなく、俺自身が自覚している。それは、俺がこれから成そうとしている野望。
 ZECTは、じきに分裂する。その時が、俺にとって好機となる。

「そこまで見えるなら、どうして、まだ俺の傍にいるんだ」

 自分の選んだ道を引き返す気はないが、他人まで巻き込むつもりはない。
 瞬が俺から離れるというのなら、止めようとは思わなかった。もう、瞬は一人でも大丈夫だろうから。

「離れないよ、俺は」

 俺の考えを察したらしく、瞬はまっすぐに俺の目を見て言った。

「どんなに黒く覆われても、表面だけだよ。だって、本当の矢車さんは……」

 ――限りなく、透明。

 けれど瞬が続けようとした言葉は、俺を呼ぶ大和さんの声にかき消された。
 ミーティングが始まる時間だ。

 瞬に先に帰るよう言い渡し、俺は任務に戻る。
 これから来るべき、戦の場へ。
関連記事



【トライアングルハーフ(2)】へ  【トライアングルハーフ(4)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【トライアングルハーフ(2)】へ
  • 【トライアングルハーフ(4)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。