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完全調和な不協和音

完全調和な不協和音(23)

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vol.25 嬰ヘ長調の和音


 二人がひとしきり満足したらしいことを見届けて、俺は先程聞きそびれた質問を再開しようとした。
 他の人間が近づかないこのZECTの建物裏で、ヤンキー座りで煙草をふかす田所さんの姿は、何と表現したらいいか。

「ふぅ、いい汗かいたな」

 おもむろに尻ポケットから缶ビールを取り出した時には、さすがに俺もギョッとした。
 まるで、四次元ポケットだ。いや、それもあるが、真面目なこの人がこんなことをするとは。

「田所さん、まだ勤務中ですよ」
「ん? ああ、中身はビールじゃない。水筒代わりにお茶を入れてあるんだ」

 田所さんは白々しい言い訳をする。
 たちの悪い冗談だ。ペットボトルにお茶を入れて持ち歩くのはよくあるが、どこの世界に缶ビールを再利用する人間がいる。

 いぶかしげに眺める俺に田所さんは、

「疑うなら、飲んでみるか?」

 と、缶を差し出してくる。

「遠慮します」

 俺は即答した。飲んだら最後、俺も飲酒の同罪になってしまう。

「あ、じゃあ、俺飲んでみていいですか?」

 俺が止めるより早く、影山は田所さんの手から缶ビールを受け取っていた。

「やめろ。飲むんじゃない、影山!」
「え?」

 イノセントな影山には、なぜ俺が拒むのか分かっていないのだろう。

「あ、そうか。このまま飲んだら、田所さんと間接キスですね」

 論点がズレているものの、飲まずにいてくれれば理由はどうでもいい。

「大丈夫、拭けばいいですよ! 矢車さん、ハンカチ貸してください」

 にこりと笑って、影山は俺にハンカチを要求する。

「なんで、俺が……」
「だって俺、持ってないし。矢車さんは、毎日アイロンかけてハンカチ持って来てるんですよね」
「……どうして、それをお前が知ってるんだ」

 おかしい。話が妙な方向に進んでいる。

「ファンクラブの会報に書いてありましたもん。みんな知ってますよ! ね、田所さん」

 影山はそう言って、諸悪の元凶を作った人物を振り返った。

「そ、そ、そうだったな」

 先程までの清清しい汗と違い、今度は冷や汗をかきながら、田所さんがしどろもどろ返事をする。
 俺は複雑な気持ちで溜息をついた。俺のプライベートは、思った通り監視されている。

 それが本当に、ファンクラブの為だけの田所さんの独断ならまだいいが、もしZECTの上からの指示だったとしたら。
 これからはもっと注意を払わなければ、俺も日下部と同じ破滅の道を辿るかもしれない。

 それはそれとして、結局ハンカチを影山に貸してやる俺も、相当甘い。
 ゴシゴシと念入りに、缶の口元を拭く影山。ピエール・カルダンのハンカチだが、もうあれはボツにしよう。

 拭き終えた影山が、缶ビールの味見をして、

「あ、ほんと。お茶ですね」

 と、言ったものだから。

「バカな!」

 思わずそれを引ったくり、俺も飲んでみた。
 間違いなく、それは確かに玄米茶。

「だから、言っただろう」

 キラリと白い歯を光らせる田所さんは、やはり田所さんだった。

「うわっ、矢車さん、俺と間接キスですよ!」

 ひっくり返った声で叫ぶ影山も、やはりいつもの影山で。そんな二人を見ながら、俺も知らずに笑っていた。
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~ Comment ~

>p様 

はい、田所さん増量リクに応えられましたでしょうか(^^)
この人がいると、ギャグがやりやすくて♪

ビールはペットボトルないんですよね~。あったとしても使い回したら悲惨ですね、きっと(^^;
コメントありがとうございましたv

 

おおっ!田所さん増量ありがとうございます!
結構シリアスな話だったはずなのにこの3人だとコントになってしまう。

ビール缶入り玄米茶は香りが混じりそうですね(笑)
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