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トライアングルハーフ

トライアングルハーフ(6)

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 三島さんの指示を受け、俺はある人物のもとを訪れた。
 ZECT直属でありながら、切り札もしくは暗殺者としての位置にあるため、彼の存在は公にはされていない。

「……今日は、おひとりですか」

 白い帽子を取って慇懃に挨拶した後、その男は俺に聞いてきた。
 黄金のライダー・黒崎は、屈強なガタイには不似合いなほど優雅な動きをする。

「ええ、嫌われたようで」

 黒崎が、誰の事を言っているかは分かっていた。以前、瞬に会わせたことがあったから。
 それゆえ、続く言葉の意味合いも理解した。

「完璧にこだわる貴方が、中途半端な彼に入れ込むとは、どうした風の吹き回しでしょうね」
「中途半端?」

 黒崎が瞬の素性をどこまで知っているかは、あくまで俺の憶測の域を出ない。
 下手なことは口にできないが、なまじっか正義という信念を持っていない分、黒崎は扱いやすい相手ではある。

「瞬は、パーフェクトですよ」
「というと?」

 俺は薄く笑って答える。知られても問題ないだろう、この男には。

「……瞬は、人間とワームの、完璧な融合です」





 黒崎への用事を済ませ、マンションに戻ってみると、俺よりだいぶ早くに帰ったはずの瞬の姿が見当たらない。

「……ったく、暗くなってから出歩くなと言ってあるのに」

 着替えもしないまま、俺は再び外へ出てドアに鍵をかけた。たとえ入れ違いになったとしても、瞬は鍵を持っている。
 闇が落ち、夜が来れば、異形のものたちが姿を現す時分だ。

「……瞬!」

 初めて瞬と出会った渋谷廃墟。思った通り、その場所で、瞬は同じように膝を抱えてうずくまっていた。

「いつまで拗ねてる気? ここにいたら、誰かに見つかるぞ」
「……いいよ、別に。俺は俺の使命を果たすんだから」

 俺が声を掛けると、瞬は顔を上げて酷薄な笑みを浮かべる。
 昼間の様子とはガラリと豹変し、凶暴な顔を見せる瞬。最近、瞬は夜になると、時折こうなる。

 人間社会の中でいろいろなことを学習し、成長した所以かもしれない。
 いつまでも、幼いままではいられない。皆が、そして俺たち人間という種族全体も。

「お前の使命を、俺は邪魔する気はない。だが、時期を読め。今暴走しても、ZECTに殺されるだけだ」
「じゃ、矢車さん、あんたが俺を殺すんだね」
「……命令があれば、な」

 思っていることと違う答えを、俺は瞬に返した。
 ビクリと瞬の体が跳ねたように見えたのは、気のせいだろうか。

「なら、こうするしかないだろ!」

 言葉と同時に、瞬は俺に向けて腕を振り下ろした。数センチの差でかわす俺の耳の側で、風がうなる。
 銃など使わなくても、半分ワーム化した瞬の体は、固い殻に覆われ、体そのものが武器だ。

(やるようになったもんだ)

 こんな時だというのに、瞬の成長ぶりに改めて驚き、喜んでいる自分がいる。
 変化した今の瞬に、腕力でかなうわけはない。かといって、銃を取り出すつもりはなかった。

 防戦一方の俺だったが、足元に転がる瓦礫でバランスを崩してしまい。その隙を見逃さず、瞬は俺の体を地に押さえつけた。

「つっ……」

 俺の上に馬乗りになり、首に指を巻きつけてくる。
 ごつごつと背に当たるコンクリート片と変わらないほど、瞬の指は固く冷たい。しかし、その手は、いっこうに握力を強めてこなかった。

「……どうした? 殺すんじゃないのか」

 そう切り出したのは、俺のほう。

「うるさいなっ」

 一瞬力を込めたものの、俺が苦しげに表情を歪めると、すぐに手を緩める。

 まだ、瞬は甘い。
 人間社会の退廃を、ZECTの歪みを、この世界の不条理を栄養にして、心は育っているはずなのに。瞬の中にあるワームの血は、俺を手にかけたがっているはずなのに。

「ごめん……。ちょっと、ふざけすぎた」

 呟いて、俺の上から離れた瞬は、人間の姿に戻っていた。ワーム化を引き起こした感情の起伏が収まったのだろう。
 ふう、と息をついて、俺も体を起こす。

「さ、帰るぞ。腹も空いたろ」

 スーツの汚れを手で払いながら、いつも通りの会話を始める。何事もなかったかのように。
 こうして、俺たちは、いつ崩れてもおかしくない、砂上の日常に戻っていく。

「俺、麻婆豆腐食べたい」
「今からじゃ無理だな。せいぜいチャーハンか」
「えー、もっと腹にたまるものがいい」
「贅沢言うな。誰のせいだ」

 他愛ないことを話して、家路につく。
 この平穏がたとえ偽りであっても、互いにとって大切な時間であることに変わりはなかった。



※よもや黒崎さんが出てくるとは・・・自分でもビックリ(笑)。
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