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悪魔は夜歩く

悪魔は夜歩く(1)

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影山の夜 第1夜


「今度の獲物は、こいつだ。しっかり見ておけ」

 冷たく光る眼鏡の奥の瞳が、「今度失敗したら、コンクリートを抱いて東京湾に沈むことになるぞ」、とヤ●ザもどきの脅しをかける。

「見ては、いますけど」

 毎回毎回、標的を間違えては、この上司を苛付かせている俺は、突きつけられた写真に仕方なく目を落とした。
 何度見ても、人間の顔は皆同じに思えて区別できない。

「ハイビジョンカメラで撮影した近影だ。肌のキメまで分かる」
「……はあ」

 自慢気にそう言われても困る。別に俺、化粧品のセールスするわけじゃないし。
 いい加減、俺がこの仕事に向いていないことぐらい分かるだろうに、どうして凝りもせず俺に振ってくるのだろう。

 不要の者と邪魔者は、抹消する――。
 それが、俺たちヴァンパイア一族のやり方であり、人間を狩る魔物の掟。

 食糧である人間を襲うのは、俺たちにとって必然だ。人間が、豚や牛を食べるのと何ら変わらない。なのに、人間はヴァンパイアを悪と決めつけ、対抗する組織を結成した。
 俺の目下の役目は、その組織の人間を狩ること。

 ハンターは俺だけじゃなく、他の優秀なヴァンパイアたちは、すでに何人もの獲物を狩っている。俺はといえば、いまだゼロ。
 今度の仕事も、失敗を大いに予感しながら、俺はポケットに写真を突っ込んだ。

「じゃ、行ってきま……」
「待て、カゲヤマ」

 窓から出て行こうとした俺の足首を、上司がぐいと引っつかむ。
 片足を掴まれてバランスを崩した俺は、そのまま壁にぶつかりそうになったが、なんとか持ち直した。ギャグマンガなら、顔面激突してたな、確実に。

「急に引っ張らないでくださいっ。危ないじゃないですか、ミシマさん!」
「ターゲットの名前も聞かずに行く気か」

 俺が抗議の声を上げても、ミシマさんは聞いちゃいない。

 言われてみれば、名前を聞いてなかったかな、と俺は首をひねる。顔と名前を一致させるのが、これまた難しい。

「カゲヤマ、今度失敗したら……」
「東京湾でしょ? 分かってます」

 初めからやる気ゼロ状態の俺を見抜いているように、ミシマさんはペンを渡してくる。
 面倒くさそうにもう一度写真を取り出して、俺はその裏にターゲットの名前をメモった。

 本当は、東京湾に沈んだところで、どうでもいい。どうせ、ヴァンパイアはそんなことぐらいじゃ死なないし、死ねない。
 同じ種族のミシマさんは、もちろん承知の上で言ってる。まったく、性格悪いったら。

 報告を忘れるな、と釘を刺す上司の言葉に適当に返事を返し、俺は今度こそ窓から飛び立つ。黒く、大きな翼をバサリと広げて。

「いい月夜だな」

 今しがた出てきたヴァンパイアの城が、月に映える。
「こんな夜は、とびきりのいい男と愛を語り合いたい」という女の台詞が、何かの映画であったっけ。
 月夜が楽しいのは、ヴァンパイアだけじゃなく、人間も同じなのかもしれない。

 すぐ近くにあるような、けど実際は遠くにある、明るく丸い月。
 その月明かりで、俺は写真に映った人物をじっくりと見てみる。

「この人間の特徴は、えーっと……、目がふたつで鼻がひとつで」

 ミシマさんいわく、一般的には「美しい」と形容される容姿で、俗に言う「イケメン」というやつだとか。
 もっとも俺には、人間の感覚はあまり理解できない。

「二十代の男だ、って言ってたっけ。名前は……」

 性別ぐらいは見分けられる、多分。

『矢車想』――獲物の名前を忘れないよう繰り返し唱えながら、俺は夜の街を狩りに行った。
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