悪魔は夜歩く

悪魔は夜歩く(5)

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影山の夜 第5夜


「どう、瞬ちゃん。探し人は見つかった?」
「……全然」

 矢車を探すうち、なぜかすっかり常連になってしまったオカマバーで、ミルクを片手に俺は首を横に振る。

 店のママは、筋肉隆々の男らしいいかつい見かけと違い、繊細で親切で。矢車探しを手伝ってくれたり、夜の街をうろつく俺を気に掛け、何くれとなく面倒を見てくれた。

「瞬ちゃん、カワイイんだから。変な男に引っかからないよう、もっと勉強しなきゃダメよ」

 と、ママから渡された女性週刊誌。
 どこをどう勉強するのか分からないけど、雑誌に載ってた俺の今月の運勢は◎だったから、じきになんとかなるってことかもしれない。

 もう何度も見てボロボロになった写真を取り出し、俺は息をついた。
 この広い街から、たった一人の人間を見つけ出せ、というのが、そもそも無茶だと思う。簡単に探せるなら、警察も興信所もいらない。

 組織の幹部からターゲットの詳細データを渡され、数々の秘密兵器を駆使して任務遂行する。
 そんなハードボイルドな仕事に憧れてたのに。しょせん、現実なんてこんなもの。

「切ない溜息だねぇ。その写真の人と、どういう関係なんだい?」

 酔っぱらって絡んできたのは、この店の常連客のハゲ親父だ。

「結婚してくれるって言ったのに、裏切られ捨てられた私は、妊娠2ヶ月でした」

 週刊誌で読んだ記事の見出しを、俺はいつものように、そのまま拝借。
 こう言えば、それ以上は誰も詮索してこないので、嘘も方便というやつだ。

 俺がヴァンパイアだと知られたら、人間たちに火あぶりにされるぞ、とミシマさんにさんざん脅された。
 でも、「それはそれで美味かもしれん」なんて言いながら、俺に向けるミシマさんの視線の方がよっぽど怖い。

 ライフエナジー以外にも、人間の食べ物はヴァンパイアにとって普通に栄養になる。ちなみに俺は、カレーライスとハンバーグが大好物。

「瞬ちゃん、強くなったワねぇ」
「そりゃ、俺だって学習能力あるもん」

 目を白黒させて退散していくハゲ親父を眺めながら、褒められた俺はちょっといい気分だった。

「ねぇ、瞬ちゃん。お客さんが言ってたんだけど……。その人、もしかしてZECTの人じゃないカシラ」
「え、矢車の事?」

 ミルクをコクンと飲んだ後、写真をママの目の前で指差して見せる。

「そう。美形の隊員さんだから、目立つのよネ。この前の事件のことで、調査に来たみたいよ」
「この前の事件て?」
「カーネ●人形襲撃事件」

 ママの返答に、俺は思わずミルクを吹き出しそうになってしまった。

「ありがと、じゃあ、俺行くよっ」

 代金をテーブルに置いて、店の外に飛び出す。必要経費として、ミシマさんから幾らか現金は支給されているものの、切り詰めないとそろそろやばい。

 またいらっしゃい、というママの言葉を背に受けて、人通りがないことを確かめると、俺は自らの翼を広げた。



※ひっぱるなぁ・・・。次回こそは、2人を会わせられますように(^^;
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