悪魔は夜歩く

悪魔は夜歩く(10)

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矢車の夜 第15夜


 周囲および上層部の協力を取りつけ、俺は影山瞬をZECTに入隊させた。当面は、訓練生の扱いとして。
 しかし、影山の配属先が田所班に決まったことで、俺の気はとてつもなく重たくなっていた。

「影山といいます。これから、よろしくお願いします!」

 俺のどんよりした気持ちとは正反対に、影山は明るく田所さんに挨拶をする。
 他の人間なら、素知らぬ振りを通し、あえて関わらないようにするだろうが、この人は普通ではなかった。

「そうか! お前が、例のヴァンパイアか」
「えっ?」

 端的すぎる第一声に影山も驚いたのか、あたふたと俺と田所さんの顔を交互に見る。

「いや、心配するな。お前の正体は、俺たちしか知らないから。なぁ、ジロー?」
「……ええ」

 その名で呼ばないで欲しいと頼んでおいたのに、やはり人の話を聞いてない。

「実はな、俺も魔物なんだ。フランケンという」
「あ、どうりで。人間にしては、ヘンだと思いました」

 田所さんの調子のいいでたらめを、影山は鵜呑みにする。

「そ、そうだろう」

 “変人” の烙印を押された田所さんの微妙な反応がおかしくて、俺は笑いをこらえるのに必死だった。
 そこへ、折りしも次の犠牲者が通り掛かった。

「よぉ、ヒロシ!」
「誰が、ヒロシですか」

 田所さんに呼び止められた加賀美が、不思議そうな顔で近寄ってくる。

「こいつはヒロシ、もとい加賀美新だ。俺たちと違って人間だが、良き理解者であり友人でもある」

 有無を言わせず、加賀美の背をバンバンと叩き、影山に紹介する。
 影山の件は、ZECT全体に協力を仰いでいるので、この誠実な部下はなんとか状況を理解してくれた。

「ZECTに二人も魔物がいたなんて、心強いです!」
「そうともさ!」

 田所さんと影山は、なにやら意気投合して盛り上がっている。
 二人から少し距離を置き、俺は加賀美を呼び寄せると、そっと耳打ちした。

「すまないな。こんな茶番に付き合わせて」
「いえ、そんな。矢車さんが謝ることじゃ」

 ふいに本名を口にされ、人差し指を口の前に立てて見せた。影山に聞かれると困る。

「えーと、今はジローさんでしたっけ」
「……その名も呼ばないでくれ、できれば」

 俺と加賀美はひそひそとそんなやり取りを交わす。

「で、“矢車想” のことは、影山さんにはどう言ってあるんですか?」
「ああ、それは」

 言いかけた俺の耳に、田所さんの声が飛び込んできた。

「驚くなよ、影山! 実は、矢車もまた魔族なのだ。しかも、ただの魔物ではない。遥か遠方にある魔物の国の王子だ!」

 田所さんのこのふざけた発言は、影山はもとより、加賀美をも大いに驚かせている。
 打ち合わせと違い、脚色過多だ。

 矢車を人外として仕立て上げれば、ヴァンパイアが狙う理由はなくなる。「矢車は魔物」とだけ伝えればいい話を、田所さんが「王子」という余計なオプションを付けたため、ますますうさんくさい説明になった。
 影山以外の誰がこんな戯言を信じるだろう。
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~ Comment ~

>熊猫GK様 

そうそう、そのジローさんです!
ああ・・・よかった。分かってくださる方がいて・・・(^^;
某欽ちゃんとの漫才や「カック●キン」もそうですけど、私はあの人が演じたドラマがものすごく印象深くて。
死にたいのに死ねない。だから、わざと人に自分を殺してもらうようもっていく、という男の役がいまだに忘れられません。
あれ、何でジローさんの話を熱く語ってるのかしら(笑)。

デ●ーズも、私の実体験だったりします(^^;
人生色々(笑)。
コメントありがとうございました!
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