赤い白夜

赤い白夜(1)

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 大切な人のために死ぬことは、勇気と覚悟がいるけれど
 大切な人のために生きることは、時にそれ以上の覚悟が必要で
 きっと、それ以上に、尊いことだと思う





(ちくしょ……。早く、ここから出なきゃ)

 広大なフログネル公園を、影山は息を切らせて走った。
 夏も近くなり、次第に短くなってきたノルウェーの夜。

(早くしないと、兄貴が)

 気持ちが焦れば焦るほど、迷路の奥深くに入り込んでしまう。
 滲んできた額の汗をグイと片袖のコートで拭うと、影山は出口を求めて目を眇めた。

 薄墨を流したような公園の中は、どこまで走っても果てがない。
 もともと広い敷地ではあるが、周囲の景色がまったく変わらないのはおかしい。結界が張られた公園内は、他の者が入ることはもちろん、内から外へ出ることも困難だ。

「馬鹿だな。出られないって、分かってるだろ?」

 聞き慣れた声がすぐ傍の木立から聞こえ、影山は息を飲む。

「……兄、貴」
「今からでも遅くないぜ、相棒?」

 影山に手を差し伸べ、その人物は人当たりのよい笑顔を見せた。





 ノルウェーの対ワーム研究機関『ボーヒネン・ラボ』が、矢車と影山にコンタクトを取ってきたのは、一週間前。
 オスロの観光名所フログネル公園に妙な噂があるという報せを持って、ラボのスタッフが矢車たちのアパートメントを訪れた。

「なんで、俺たちにそんな話を聞かせるんだ、エミール」

 研究所で顔馴染みだった男に、矢車は渋い顔をして見せる。

「それって、警察の仕事じゃない?」

 と影山の方も素っ気ない。

 矢車たちと歳の近いエミールは、二人がラボを離れてからも親交があり、今回はラボの代表として、二人に協力を頼みにやってきた。
 すんなり了承してくれまいと予想はしていたので、エミールも簡単には引き下がらない。

 ひと月前、フログネル公園で地元の人間が五人、一時的に行方不明になった。翌日には全員家に戻ったため、事件性はないと警察は判断したが、彼らの家族は揃って、戻って来たのは別人だと主張している。

「姿は同じでもどこか違う、と家族らは言ってます」

 どことなく加賀美を思い起こさせる若いノルウェー人は、熱心に語った。

「……ワームの擬態だ、と言いたいのか」
「そうじゃないと言い切れますか」

 エミールに反対に問い返され、矢車はますます苦い顔をする。
 確かに、生き残りのワームが悪あがきをしている可能性はなきにしもあらず。

「協力するとして、まさか、タダってわけじゃないよね」
「それはもちろん」

 エミールと報酬金額の話を進める影山を呆れ交じりに眺め、矢車は仕方なさそうに溜息をついた。



※キリ番64000を踏まれたO様のリクで、『兄貴に擬態したワームが影山を襲う』です。
中編くらいになるかと。リクエスト、ありがとうございました(^^)
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~ Comment ~

>熊猫GK様 

こちらこそ、コメントありがとうございますv

書き続けられるのは、読んでくださる方のおかげです。
なんか次々新しい話始めて、自分の首を絞めてる気もしますが(苦笑)、書くのが楽しいのでそれはそれでヨシ。

映画は、私も実はYouTubeで見ただけだったりします(^^;
やっぱり影山いないのがネックですね。策士の出番も少ないし・・・。
あのZECTの制服、カッコイイので影山にも着せたかったなぁという思いが、某別館に表れてます(^^;
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