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想が瞬を駆け抜けて

想が瞬を駆け抜けて(4)

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7.兆し

 カブト抹殺を果たせず、挙句に大勢の部下たちを損失してしまったゆえに、矢車はシャドウ隊長の任を解かれ、謹慎処分を言い渡された。
 胸にあったザビーの紋章は跡形もなく消えている。
 ザビーの資格者として完全に見限られた、ということだろう。

 ザビーゼクターは新しい資格者として、加賀美を選んだ。
 己の道を外れた、と指摘したカブトの言葉を矢車は反芻する。

(俺が罰を受けるのは、当然の報いだ)

 だが、このままでは加賀美もまたザビーの魔に取り込まれるのではないか、と矢車は危惧していた。
 謹慎中の身でありながら三島のもとに向かったのは、そのことを確かめたかったからだ。

「……では、加賀美が犠牲になっても構わない、ということですか?」

 人が使っている部屋だとは思えないくらいの、殺風景なオフィス。
 窓際に立ち、いつもの “食事” であるサプリを口にする三島に、矢車はやや挑むような眼を向けた。
 そんな矢車に三島は振り向くこともなく、告げる。

「それは彼次第だろう。『ザビー』に耐えられるかどうかは、資格者の精神の力量によるからな」

 暗に自分への皮肉が込められているのを感じ、矢車は唇をかんだ。
 ザビーに負けたのは、明らかに自分の心の弱さだ。

「男を取り込み、その男を駄目にして、最後には見捨てる、か。……まるで女だな。ザビーゼクターは」

 ふ、と三島が口の端で笑った。

 あの時以来、影山は矢車と話す機会がなかった。
 ZECT本部へ戻る際にも、矢車は影山と目を合わそうとしなかった。むしろ、意識的に避けている。
 裏切られた、という思いが、追い払っても追い払っても影山の心に重くのしかかる。
 せめて矢車の口から真実が聞ければ、あるいは謝罪の言葉がひとつでもあれば、こんな暗い気持ちなど吹き飛んでしまうのに。

 ここ一週間、矢車は謹慎処分を受け、姿を見せない。
 復帰しても、もう矢車はシャドウ隊長ではなく、以前と同じ小隊長として籍を置くことになる。
 現在シャドウの隊長に納まっているのは、見習いの加賀美だ。

(ちくしょう! なんで、あんなやつが)

 後輩である加賀美が自分の上司となったことに、影山は苛付きを感じた。
 加賀美では、矢車のような洗練された隊の統率など望めそうにない。

(矢車さんがザビーにならなきゃ、こんなことにはならなかったのに)

 負の感情がすべて矢車に向かっていく。
 上司としてよりも、実の兄のような親しみを影山は矢車に抱いていた。
 だが矢車にとって、自分は見捨てることも厭わない存在だったのだろうか。

『お前を見てると、俺の弟を思い出すよ』

 よくそう言って、矢車は影山の頭をぽんぽんと叩いたものだ。
 その矢車の笑顔が、自分たちを見捨てたあの時とフラッシュバックする。どんどん自分の中の疑惑と憎悪が膨らんでいくようだった。

(ちくしょう!!)

 やりきれない感情に、影山は思い切り壁を拳で叩いた。
 わずかに血がにじんだが、痛みは感じない。心の方が、なにより悲鳴をあげていたから。



8.誘い

 加賀美がカブト抹殺を拒んだことで、ザビーはまたも資格者を失った。
 次の資格者が見つかるまで、ザビーは保留状態。そしてシャドウは、隊長不在のため、解散を余儀なくされた。
 ほんの一ヶ月余りの間に、影山を取り巻く状況は大きく変わってしまった。

 結局、矢車がシャドウに復帰することはなかった。
 謹慎中にシャドウそのものが解散となり、ZECTに所属しているはずではあったが、影山と顔を合わせずじまいだ。

 矢車が去り、加賀美が去り。影山はシャドウという自分の居場所を失ってしまった。
 なぜ上に立つ者は、下につく者の事を考えてくれないのだろう。

(みんな、自分勝手だ)

 田所率いるチームに配属されても、影山の気持ちは晴れない。
 むしろ加賀美がいる田所班に回されるなど、屈辱以外の何者でもなかった。
 注意されてもわざとネクタイをしなかったり、と影山の行動は次第にすさんでいった。

 そんな中でZECTの幹部、三島から呼び出しが掛かった時、影山はてっきり解雇を言い渡されるのだと思った。
 三島の名前と顔は知っていたが、対面で話すのは初めてだった。

 きっちりスーツを着こなした若き幹部の姿に、影山はネクタイぐらい締めてくればよかった、と後悔する。
 だが三島はそんなことなど気にも留めず、本題を切り出した。

「ザビーになる気はないか?」
「……え?」

 とっさに影山は何を言われたのか、理解できなかった。
 沈黙の後、おそるおそる聞き返す。

「俺が……ザビーに、ですか?」
「そうだ。もちろん、シャドウ隊長も兼ねてもらうことになるが」

 にべもなく三島が告げる。
 シャドウ復活を示唆されて、影山の心臓は跳ねた。だが、なぜ自分が、という疑問も湧いてくる。
 矢車が目をかけてくれるまで、どちらかというと影山はシャドウでは目立たない存在だった。出世欲もそれほど持ち合わせてはいない。

「君の戦闘能力も調べさせてもらったが、及第点だ」
「ありがとう、ございます」

 いまだ不安げに返事をする。

「それに、君が上に立てば、誰も君を見捨てたりはできないだろう?」

 その言葉は、ジョーカーだった。
 弾かれたように顔を上げる影山に、三島はすべてを見抜いていると言いたげな笑みを浮かべる。

(誰も、俺を見捨てない……)

 もともと、そういうトラウマもあったのかもしれない。
 しかし矢車の件以来、影山は見捨てられるということに特に臆病になっていた。

(自分が上に立つ立場になれば)

 影山は心を決めた。

(もう俺は、置いていかれることは、ないんだ)
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