悪魔は夜歩く [16] |
| 悪魔は夜歩く 第16話 今日一日、影山は随分人間らしくふるまっていた。 もちろんZECT側は、こいつがヴァンパイアだと認識しているが、影山はその事を知らない。 ライフエナジーだけでなく、人間と同じ食べ物でも腹は満たされるようなので、俺は影山に夕飯を作ってやることにした。 空腹のあまり、人でも襲ったら適わないから。 普段はどうやら例のバーに通っているらしく、またとんでもない噂を広めているんじゃないかと思うと、俺は気が滅入ってきた。 いやそれはともかく、サブだかJUNEだか知らないが、バーのママは俺が矢車だと感付いたようだった。 影山に余計な事を吹き込まれたら、まずい。 バーにも手を回しておかなければと考えつつ、キッチンで豆腐をさいの目切りにしていた時。 影山の間の抜けた驚き声と、大きな鳥のような羽音が耳に入った。 部屋とキッチンの仕切りの扉は閉められていたが、わずかに隙間が開いているし、そもそも1Kのレ●パレスのマンションでは、どんなに声を落としても丸聞こえだ。 こっそりと、俺は扉の隙間から部屋の様子をうかがった。 念のため、ZECTガンを手に持って。 「・・・ミシマさん、どうしてここが」 呆然とする影山。 そして、窓から土足で侵入してきたのは、眼鏡の奥の眼光が鋭く光る、ネクタイにスーツ姿の男。 『嫌われる上司ベスト5』に、よくランキングされるタイプかもしれない。 その背に、黒い翼さえなければ。 「報告もしない、連絡も取れないとは。しかもまた、ターゲットを討ち損ねたようだが」 「あの・・・、ミシマさん。とりあえず、靴脱いでください」 おずおずと、だがはっきりと影山は告げた。 その判断は、正しい。 寮の部屋を汚したり破損したりした場合、修繕費を支払わなければならない、と俺は影山に口をすっぱくして言っておいたので。 「それに、矢車は人間じゃなかったんです。怪物ランドの王子だったんですよっ」 一向に靴を脱ぐ気配のないミシマというヴァンパイアに、影山は必死に説明する。 上司に取り繕おうと影山が発した言葉を聞いて、俺はげんなりと頭を抱えた。 単純な影山はともかく、誰がそんな『怪物くん』パロディを信じるというのか。 「・・・何を言っているのか分からん。人間どもに、うまくたぶらかされたな」 「え?」 「私がターゲットの選択を誤ると思うか。矢車は、間違いなく人間だぞ。お前の目を誤魔化すために、嘘の予防線を張ったのだろう」 ミシマの解析に、俺は思わず頷いてしまう。 魔物ながら、頭の切れる奴だ。 人間であっても、影山と同レベルの男もいるというのに。誰とは言わないが。 「タイムプレイ・リミットは過ぎた。今度失敗したら次はない、と言っておいたな?」 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。俺、今人間としてZECTに入ってて。辞める時は、1ヶ月前に言わないといけないことになってるし」 入隊規約は確かにその通りでも、この場では言い逃れにしか聞こえない。 虚しい詭弁に、俺は影山の命運を悟って、ひそかに哀れんだ。 しかし。 「・・・ZECTか」 ミシマは影山に伸ばそうとした手を止めて、何かを考えていた。 「よかろう、少し泳がせてやる。期待してるぞ、カゲヤマ」 「・・・は?」 まったく話が読めない影山がぽかんとしている間に、ミシマは来た時同様、翼を広げて空へと羽ばたいた。 ミシマの姿が闇に消えるのを見届けて、俺はふぅと息をつく。 銃を握った手に、じっとりと汗が滲んでいた。 用心しなければ。 最大の敵は、おそらくあの男だ。 「羽根フェチに売れるかなぁ、これ」 少なくとも、部屋の中に落ちた黒い羽根を拾ってそう呟く影山では、絶対にない、と俺は確信した。 →NEXT |
この記事に対するコメント |
この記事に対するコメントの投稿 |
この記事に対するトラックバック |
| トラックバックURL
→http://wantlo.blog88.fc2.com/tb.php/395-76eca2ef この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) |
1000番単位や71111等を踏まれた方は、お知らせいただけると嬉しいです(^^)
⇒キリ番の方々
リクエストがあれば、書かせていただきます(BLの場合は、その旨お書き添えください。別館でアップします)。
コメント欄か、下のメールフォームにてお気軽にどうぞ。
※別館はコチラです。閲覧にはご注意を。
since 2007.1.7
