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悪魔は夜歩く

悪魔は夜歩く(13)

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影山の夜 第18夜


 ミシマさんがいなくなってしばらくして、キッチンから「できたぞ」という兄貴の声がした。
 どうやら兄貴は、ミシマさんの来訪に気付かなかったらしい。

 美味しそうな麻婆豆腐と中華風野菜炒め。
 食欲に支配されそうになりながらも、ミシマさんに言われた台詞が俺の頭の中をぐるぐる回っていた。

「どうした、腹減ってるんじゃなかったのか」

 料理を皿に盛る手がふいに止まった俺を、兄貴が覗き込む。その瞳は、優しくて綺麗だ。

 人間、いや人間じゃないけど、空腹の状況ではなんかもうどうでもよくなってくるし、隠しておくのも面倒くさい気がして、俺はさっきの出来事を洗いざらい兄貴に話した。

「矢車は人間だ、ってミシマさんは断言してた。冷淡無情、完全無欠、超力招来のミシマさんが、標的の選別を間違うはずない、って……」
「最後の四字熟語は、違うと思うが」

 腕組みしながら、俺の話を聞いていた兄貴がぽつりと言う。そして、ふっと笑い、反対に尋ねられた。

「お前は、どちらを信じる。俺、それともミシマ?」

 てっきり反論してくれるだろうと思っていたのに。兄貴は言い訳ひとつしないで、俺に判断を委ねようとする。

「お前が自分で決めればいい。仲間のもとに戻るか、人間の中で暮らすか」
「……ズルイよ、兄貴」

 混乱する俺には、どちらが正しいかなんて分からない。ミシマさんより、兄貴を信じたいけれど。

「とにかく、腹ごしらえが先だ」

 兄貴は、湯気の立つ温かい麻婆豆腐を器に取り、俺の手に渡してくれた。
 レオパ●スの部屋に付属の小さなテーブルで、兄貴と向かい合って、遅い夕食をとる。

「こんな美味しいもの、食べたことないよ」

 兄貴が作ってくれた料理を口に運び、俺は素直に感想を伝えた。
 甘かったり苦かったり酸っぱかったりする麻婆豆腐は食べたことあるものの、ちゃんと辛いのは初めて。兄貴は、料理の天才かもしれない。

「そうか」

 嬉しそうに笑う兄貴を見ているうちに、俺の中のモヤモヤした気持ちは次第に晴れていった。



矢車の夜 第19夜


 いくら多々抜けている影山でも、ミシマの話を受け、俺に対して疑念を持ったらしい。
 当然だろう。むしろ、これで不信を抱かないようなら、このヴァンパイアの将来を不安に思う。

 とりあえず俺は、先程から考えておいた言い訳で取り繕った。

「もともと、魔物は人間に害をなす存在だからな。人間と共存する俺も矢車も、裏切り者だ」

 淡々と告げながら、野菜炒めからにんじんだけを選り分けて皿の脇へ寄せる影山に、「好き嫌いするな」と注意する。

「じゃあ、田所さんも?」

 せん切りにしたオレンジ色の野菜を、影山は嫌そうに口に運ぶ。
 どうでもいい人の名前を出され、俺は眉間に皺を寄せた。そういえば、田所さんもフランケンということになっている。

「ともかく、人間の側にいる矢車は、ヴァンパイアにすれば邪魔なんだろう。だから、ミシマはお前を使って矢車を始末させたいんじゃないか」
「あー、なるほど」

 影山は納得できたとばかりに、表情を明るくする。本当に、俺のことを信じているようだ。
 心が痛まなくもないが、相手はヴァンパイア。俺は己を戒め、人当たりの良い笑顔を作り続ける。

 後片付けまできっちり済ませてから、遅刻するなよ、と影山に念を押して、俺はマンションを出た。
 時間にすれば、二時間程度。路上脇に停めた車に乗り込もうとした時、大きな羽音が聞こえ、頭上を振り仰ぐ。

「……お前は」

 黒い翼を広げ、その男は眼鏡の奥から冷たい視線で俺を見下ろしていた。
 少し前に、影山の部屋を訪れたヴァンパイアだ。

「ミシマ、か」
「うまくカゲヤマを丸め込んだようだな、策士矢車」

 ミシマは地上に降りてこようとはせず、宙に羽ばたきながら話し掛けてくる。
 俺が矢車だと知っているような口ぶりだが、羽音がうるさくてよく聞こえない。

 おまけに羽ばたきで、瞬間風速40メートルはありそうな突風が起こり、ゴミ置き場のゴミが辺りに散らばった。
 決められた収集日以外に、ゴミを出すからこんな事になるんだ。

「俺が誰か分かっていて、なぜ殺さない?」

 風に煽られながら、俺は声を張り上げた。

「それは、カゲヤマの仕事だ。私は見物させてもらう」
「あいつは、人間の中で暮らすと言ってる。俺が、二度と人間を襲わせない」
「それはどうかな。お前は、魔物の本能を知るまい」

 意味ありげな台詞を残して、ミシマはさらに高く舞い上がる。耳障りな哄笑が、夜の空にこだました。

「待て!」

 呼び止めようとしても、既に姿は闇に溶け込んでいた。俺は上空を見上げ、舌打ちする。
 せめて、この散らかったゴミを片付けさせたかった。まったく、なんてはた迷惑な奴だろう。
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~ Comment ~

>熊猫GK様 

キリリクありがとうございました(^^)
ちゃんと届いてますよ~。
とっても美味しいシチュエーションなんですが、前回ムリヤリ(笑)別館行きにさせていただきましたので、今回は本館で挑戦します。
ヒ、ヒネクくれてますね、我ながら(--;
別館を期待してくださっていたら、本当にスミマセンm(__)m
甘いのを目指して、がんばりますです!
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