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ナーサリー・ライム

ナーサリー・ライム(1)

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 親しまれた童話や童謡が、とても残酷で恐ろしい事実を物語っているのは、珍しいことじゃない。
 裏にあるその意味を知ったとき、子供たちは、何を思うのだろう。





 白夜のノルウェーは、昼の時間が長い。

 ワームの事件も落ち着き、日常生活に戻った頃、チャイルドシッターのバイトをやりたいと言い出したのは影山だった。
 普通に仕事に出るよりは、そちらの方が向いているだろうと、矢車もOKを出した。

(こいつ自身も、子供っぽいところがあるし)

 そう思っても、言えばムキになって怒ることが目に見えているので、口には出さない。

 初めのうちこそ楽しそうにバイトに励んでいたが、最近は悩み事があるのか、影山は時折沈んだ顔をする。
 発端は、他愛もない会話。

「知ってた、兄貴? ロンドン橋の歌のこと」
「ロンドン橋?」

 夕食のパンを千切る手を止めて、影山がひどく沈鬱な面持ちで訴えてきた。

「あれってさ、ひどくない?」
「負けて悔しかったのか。たかが、子供の遊びだろ」

 手製のサウザンアイランド・ドレッシングを振りかけた後、矢車はサラダを取り分ける。

『ロンドン橋』は、向き合った二人が互いの両手をつなぎ、両手の輪の中につかまった者が今度は橋になる、という遊びだ。
 おおかた影山のバイト中、子供たちが何人か集まったときに、それで遊んだのだろう。

「俺が言ってるのは、歌詞のことだってば。“ロンドン橋落ちた” ってやつ。ちょっと残酷じゃん、あれ」

 ふくれる影山を見ながら、頭の中で詩を思い出し、矢車は「ああ」と答えた。

「人柱のことか」

 突付かれたサラダが、サクッと新鮮な音を立てた。

『London Bridge is falling down, My fair lady』

 世界中でポピュラーな、マザーグース。
 この詩は、橋を架ける時、人柱として犠牲になった女性を詠ったものだとも言われている。

「……女の人は、生きたまま橋の下にくくり付けられたのかな」
「お前、一体いくつだ」

 うつむいてしまった相棒に呆れたように、矢車は溜息をついた。

 確かに、人柱の話は子供にはショッキングかもしれない。
 けれど、その逸話が本当であれ、とうの昔に起こった過ちを今更どうにもできはしない。

「バカ言ってないで、早く飯食っちまえ。明日も早いんだからな」
「……うん」

 無理に笑顔を作ると、影山はスプーンを握り直す。

「何考えてる」

 相棒の不自然な様子が、矢車にそう尋ねさせていた。
 なんだかんだと言いつつ、矢車はいつも影山の話を聞いてくれる。それを嬉しく思いながら、影山はぽつりぽつりと語り出した。

「夢、見るんだ。たいてい同じ夢。下に川があって、橋の上に女の人がいる」

 言葉にすると、現実になってしまうような気がして、これまで話さずにいた。しかし一人で胸に秘めておくには限界がある。
 途切れ途切れに話す影山を、矢車は急かすことなく待った。

「橋の上で、女の人は殺されて、川に落ちる。橋の上には」

 だんだんと小さくなる影山の声。子供をあやすように、矢車は影山の頭を自分の胸に寄せ、その背中を叩いてやる。

 影山がこんな風に怯えることは、以前もあった。
 体は治っても、心に刻まれた傷は、簡単には癒えない。

「殺したのが、ワームになった俺、だなんて。あり得ない、よね……」

 矢車の黒いコートの腕をぎゅっと掴んで、影山は呟いた。



※キリ番61111の熊猫GK様のリクで、「ワームになってしまう夢を見てパニクる相棒に優しく寄り添う兄貴」です。ありがとうございましたv
ちなみに、同タイトルのエロゲーとは無関係です(笑)。
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~ Comment ~

>熊猫GK様 

優しい兄貴って、私も憧れです。
けど、私が書く兄貴って優しい言葉言ってくれないなぁ・・・。テレがあるのかしら(^^;
期待はずれになってしまったら、申し訳ないですっ。
いただいたコメントを励みにがんばりまっす。
ありがとうございましたv
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