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ナーサリー・ライム

ナーサリー・ライム(7)

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 ノルウェーでは、ワームに起因する事件の多くが公にならない。

 矢車たちが捕獲したワームをラボへ運んだ数日後、アンカーブリッジの事件は通り魔の犯行としてメディアに報じられた。警察とラボの間で、何らかの密約が交わされたのだろう。
 さらに事件とは別に、アンカーブリッジで100年以上前の人骨が発見されたという記事が伝えられた。

「100年前の白骨遺体、か」

 夕食を終えた矢車は、新聞を開いたまま片方の腕で頬杖を突く。
 女性と思われる人骨が橋脚に引っかかるようにして、川面に浮き出ていたらしい。

 図書館で読んだ記録が、矢車の脳裏に浮かんだ。
 遺骨は、一世紀前、橋の建造時に人身御供となった女のものだったのかもしれない。

「ずっと、夢で聞こえた声が気になってたんだ」
「ワームになって、他の人間も殺せ、ってやつか」

 横から覗き込んできた影山に気付き、矢車は新聞を畳んだ。

 自ら人柱に志願する者などいない。生きている者への妬みや恨み、生きられなかった無念。歪んだ残留思念が、ワームを呼び寄せ、さらなる生贄を川に捧げさせたとしたら、薄気味の悪い話だ。

「被害者が加害者に変わるとはな」

 眉を顰め、新聞をラックに投げ入れる。

「……うん。でも多分、“彼女” は自分を見つけて欲しかったんだよ」

 影山は呟いて、多過ぎるほどの砂糖とミルクをコーヒーカップに入れかき混ぜた。

 夢の中で、『ロンドン橋』を歌う女の声はただ哀しみに満ちていた。
 他人を巻き添えにしたところで、自分自身の救いにはならない。骨を見つけ、供養してもらうことが、女の本当の望みだったような気がする。

「周りを恨んだって、どうにもならないんだからさ」
「ああ」

 噛みしめ告げる影山を、矢車は目を細めて見た。

 過去の傷も激しい後悔も、生きている限り、自分の中から完全に消え去ることはない。時に思い出して、苦しむ。
 それでも、すべては自分の心次第だ。どこかで折り合いをつけるしかない。

「じゃ、オヤスミ、兄貴。俺、もう寝るよ」

 カップを空にし、影山は眠そうな顔で立ち上がった。
 まだ若干時間は早いが、瞼の重さが限界を訴えている。

「よく眠れるように、マザーグースでもうたってやろうか」
「他のがいい」

 矢車のからかいに、影山は無邪気に笑って返した。
 めったに披露してくれない兄貴の歌声は、優しく澄んでいる。極上の子守歌が聞けるなら、子供扱いも悪くない。
 おそらくじっくり聞き入る前に、耳に心地よい響きが眠りを誘うだろうけれど。

 やれやれと椅子を引く矢車を急かし、影山は少しばかり楽しい気分で寝室のドアを開けた。


 END
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~ Comment ~

>熊猫GK様 

当初考えていた展開と違う方に行ってしまい、自分でも「あれ?」となった話だったのですが、温かいコメントをありがとうございます。
兄貴と弟はせっかく2人でいるんだから、2人でいろんなことに立ち向かって生きてって欲しいです。
理想の夫婦、もとい相棒として(^^;

影山は絶対、唄うたってもらってますよ。
で、兄貴に甘えてるに違いない(笑)。
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